ペット医療を巡るトラブルが相次いでいる。「家族の一員」として手厚い対応を求める
飼い主が目立つようになり、国民生活センター(東京)によると、
美容なども含めた相談は2011年度、561件で、02年度(243件)の2・3倍に増えた。
獣医師は臨床研修を義務付けられておらず、
農林水産省は診療技術向上のための制度作りを検討している。
同センターに寄せられた相談には「骨折の手術後に心肺停止になった」、
「入院中に突然死したが、何の説明もない」など、
動物病院側の医療ミスの疑いを指摘するケースが目立つ。
大阪府内の動物病院。忙しい日は30件の診察をこなす。
「家族」として徹底した検査を望む人も多く、入院中でも「そばにいたい」と、
病院近くに止めた車中で夜を過ごすケースもあったという。
「ペットへの思い入れの強さには本当に驚かされる。
対応できない治療を求められた場合、トラブルを避けるため、
ほかの病院を紹介することにしている」と院長は言う。
ペットフード協会(東京)の昨年の調査によると、
家庭で飼われている犬と猫は全国で計約2128万匹。
内閣府のペットに関する世論調査(10年)では、「生活に潤いや安らぎが生まれる」との
回答が最多の61・4%で、前回調査(03年)より7ポイント上昇。
逆に「防犯や留守番に役立つ」は25・7%で、5ポイント近く減った。
少子高齢化や独居世帯の増加などを背景に、ペットの役割に変化が起きている。
高度な医療へのニーズが高まっているが、獣医師の技量にばらつきがあるのが現状だ。
現在の獣医師法は1949年、主に家畜などを想定し制定された。
免許取得後の臨床研修は努力目標に過ぎず、2年以上の研修を義務づける医師法とは大きく異なる。
ペットブームの高まりを受け、農水省は10年、
実践的な研修の導入などを柱にした基本方針をまとめ、技術習得ができる体制の整備を目指している。
ペットの医療過誤訴訟に詳しい渋谷寛弁護士(東京弁護士会)の話
「病状や治療方針をきちんと説明しないため、トラブルになるケースが増えた。
倫理面も含めた臨床研修を義務化するなど、獣医師の指導・監督制度を充実させるべきだ」
◆獣医師 獣医師法に基づく国家資格で、農林水産大臣が免許を交付する。
ペットなど小動物診療に従事する医師は増え続け、約3万5400人のうち
約1万3300人で37%(2010年)を占める。