SPA!で度々、その惨状を報じてきた多頭飼育崩壊。
それは、ペットを一か所で何頭も飼育していた飼い主が、
ずさんな飼い方をしたために異常繁殖を繰り返し、
飼育不可能な状況に陥ることだ。
多くの場合、その現場では糞尿が垂れ流しにされ、
エサも満足に与えられないペットたちは、病気や共食い、
さらに餓死をして、目も当てられないような惨状が広がることになる。
‘12年5月に本誌が報じたケースでは、東京都町田市の一軒家で、
なんと105匹もの猫が飼育崩壊の憂き目に遭っていた。
幸い、多数の民間ボランティア団体の努力もあり、
その町田の猫たちは全頭が保護されることになった。
しかし、そのケースに関わった保護団体「たんぽぽの里」
(里親希望の方は代表番号042-707-4648まで)の
石丸雅代氏から、’12年末に信じられない連絡が記者に届いた。
「あの町田の猫たちを保護した個人ボランティアの方が、
今度は“二次崩壊”を起こしてしまったのです」
つまり、保護をしすぎたために、今度はボランティアの保護施設内で
多頭飼育崩壊が起こってしまったというのだ。石丸氏が続ける。
「静岡県で長年熱心に保護活動をしてきた個人ボランティアの方に、
人を介して町田の猫を20頭保護してもらいました。
その後、何度か連絡はとっていたのですが、12月に入って突然、
『これ以上の飼育が難しい』と言われ……。聞くと、
その方は町田の猫以外にも、東京都や岐阜県で同じように
多頭飼育崩壊をしたケースから、
合わせて数十頭もの犬猫を預かっていたんです。
もちろん、そのボランティアの人も、『なんとか助けなければ』
という一心で行ったようですが・・・。
現実問題、飼育不可能な状況になってしまったと」
石丸氏ら複数のボランティアは急遽、静岡県内の現場に行くことにした。
向かった先では地獄としか言いようのない光景が広がっていたという。
「そこは古民家風の2階建て一軒家でした。
建物内は糞尿や引っ掻き傷だらけ。
臭いも息ができないほどスゴイ状態でした。
餌もほとんど与えられてなかったのでしょう。
ある部屋では猫の無残な干からびた死体が放置されていました。
今は、現地のボランティアの方などが懸命に
掃除やエサやりをしてくれたので改善してはいますが、
残された20数頭の犬猫たちは今もその現場に置いておくしかありません。
保護できる預け先が見つからないからです」
安易に他の場所に預けては、その先でまた次の崩壊が起きるかもしれない・・・。
多頭飼育崩壊の“レスキュー”が難しい理由の一つだ。
ただ、この静岡県のケースの場合、
複数の崩壊現場から犬猫を預かっていたというが、
なぜこんなにも崩壊が起きてしまうのか?
「一番の理由は繁殖制限をしていないことです。
飼い主が気付いたときにはネズミ算式に増えすぎて、
手に負えなくなってしまう。また、高齢化が進んでいるので、
独居老人の方などが寂しさから猫を拾ってくるパターンも多いですね。
飼い主が病気になったり、経済上の問題が起こると、
それがトリガーとなって一気に悲惨なことになってしまうんです。
’12年5月に町田の猫105匹をレスキューした後も、
都内で15頭の猫のケースが起こりました。
そこの場合、飼い主の独居老人が入院し、
猫だけがマンションの一室に取り残されていたのです。
悪臭や騒音がひどくなり、近隣住人からの通報でようやく発覚しました。
今回の静岡県のように二次崩壊を起こすケースは珍しいですが、
多頭飼育崩壊は全国どこでも毎日のように起きているし、
その数は年々、増え続けています」
地獄から救われた先で、また地獄をみた犬猫たち。
真の救いの手が差し伸べられることはあるのだろうか・・・。
<取材・文/秋山純一郎 画像提供/たんぽぽの里>