中日新聞
【被災地に残されたペットや家畜を撮影した宍戸大裕監督=都内で】
東日本大震災の被災地に残されたペットや家畜を救おうとする人々を追ったドキュメンタリー映画「犬と猫と人間と2 動物たちの大震災」が来月、公開される。劇場公開作品を初めて撮った宍戸大裕監督(31)に思いを聞いた。(砂本紅年)
−撮影のきっかけは。
震災後、東京から宮城県名取市の実家に戻り、地元で被災者の映像を撮ろうと思った。ペットブームの影に迫った映画「犬と猫と人間と」を撮った飯田基晴さんから「石巻市の動物保護団体の代表と連絡がつかない。訪ねてみて」と頼まれた。そこで、残されたペットの対応に奔走する人たちを知った。
−原発事故もあった。
震災から一カ月後、原発の二十キロ圏内に残されたペットの元に通い、餌をやっている名取市の主婦岡田久子さんに同行した。鎖につながれたまま餓死していた犬にショックを受けた。
−立ち入り禁止となってからも、岡田さんらは通った。
立ち入り禁止の区域を設けるのは当然だが、ペットを救うことを理由には立ち入り許可を得ることはできず、怒りを覚えた。救える命があり、救いたいと思っている人がいるのに…。さまざまな団体、個人が今もボランティアで活動している。
−ペットが残された理由は。
「すぐに帰れると思い、置いてきた」「避難先で飼えない」などが多い。映画にも出てくる福島県浪江町の女性の場合、犬を置いたまま避難。十日後に戻ると、水も餌もなくなり、犬がうなっていた。不安だっただろう。残された飼い犬は、待ち続けて死んでしまうか、逃げ惑うか−。
−震災後の喪失感を埋めようと、ペットを購入する人が増えたという話もあった。
ペットを飼って笑顔が戻ったという家族もあったが、その後捨てられたペットも出てきている。仮設住宅では飼えたが、移住先のアパートはペット禁止で、結果的に手放さざるを得ないという人も今後増えるだろう。一方、ペットを震災で失った人の心のケアはほとんどされていない。いろんな飼い主に話を聞いたが、家族を亡くした人に気兼ねして、避難所では泣けなかったという人や、捜しているペットのことを聞けないという人は多い。
−家畜である牛にもカメラを向けた。
当初は撮るつもりはなかったが、飢え渇いた牛たちを見た時の衝撃がすごかった。仲間だろう牛の死体の隣で、生き残っている牛がふん尿につかって、猛烈な腐臭の中で自分の死を待っている。人を見ると「餌をくれ」とでも言うように大きな瞳を向け、泣いているようだった。
−殺される運命の家畜の保護活動は共感を得にくかった。
取り残され、消えてしまいそうな命があれば、「救いたい、餌や水をあげたい」と思うのは自然なこと。今も、岡田さんらは被ばくした約三百五十頭の牛の世話をしている。被災地の動物たちの命は、まだ救えるんです。
<上映予定> 東京・渋谷のユーロスペースで6月1日から公開。その後、栃木、神奈川両県の他、名古屋市でも予定されている。詳しくは東風=電03(5919)1542=または映画の公式HPで。
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<ししど・だいすけ> 一九八二年、仙台市生まれ。早稲田大在学中に映像サークルに参加、映像制作を学ぶ。学生時代の作品に、高尾山(東京)の環境問題を扱った『高尾山二十四年目の記憶』。福祉関係のNPO勤務を経て、現在は映像制作者として活動。
posted by しっぽ@にゅうす at 11:23
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