捨てられた犬や迷い犬を一時保護している千葉県浦安市。動物愛護センターで殺処分することなく、市内の動物愛護団体の協力を得て市の犬舎で飼育したり、里親を探すなど「行政による殺処分ゼロ」の施策を2005年から続けてきたが、市は2日で、この取り組みを支えてきた団体との協力関係を解消する方針を決めた。「信頼関係がなくなった」というのが理由だが、殺処分ゼロの取り組みに影響しないか、懸念の声もある。【山縣章子】
市の取り組みをサポートしてきたのは、動物愛護団体「NPO法人UC動物を守る会」(阿部良一代表)。00年、保護された犬が殺処分されないようボランティアで犬の世話を始めた。だが、市庁舎の中庭で多い時には12頭を保護していたことから、臭いや鳴き声が一部で問題になった。
そのため、市は05年、市有地の倉庫(34平方メートル)を一時的に保護する「犬舎」に転用。市は光熱費などを負担し、守る会が世話や散歩などを担当する「覚書」を交わした。会費などを原資に、狂犬病の予防接種や病気の治療もしてきた。餌はドッグフードだけで月平均300キロ必要なため、市が08年途中から一部を補助していた。
だが、例年10頭以上の新規の迷い犬があり、飼い主や里親を探しても、犬舎での保護数はなかなか減らず、保護期間も長期化。現在、目の見えなくなった秋田犬や病気の雑種など22頭がいる。
市と会によると、昨年以降、犬の世話のボランティアの養成や保護数、里親探しなどを巡って両者が対立。市幹部は「犬舎の管理運営に負担感を訴えていたので、いろいろ提案した。具体的な話し合いに応じてもらえず、信頼関係が損なわれたため、協力して運営していくのは難しいと判断した。会のこれまでの協力には感謝している」と明かす。
これに対し、阿部代表は「365日無休で会員たちが(世話などに)取り組んできた。犬のためにならないことには応じられない。退去しろと一方的に言われても犬を置いていけない。今までの取り組みはなんだったのか」と嘆く。
市は8日までに会の備品を撤去するよう求めている。犬舎管理は別の団体に委託する方向で準備しており、「殺処分ゼロの取り組みは続ける方針だ」(幹部)という。だが、これまでの市負担は年間平均120万円程度で、委託によって新たな公費負担が生じる可能性もある。市議の一部には「厳しい財政の下、さらなる委託費が支出できるのか」と疑問視する声もある。
動物愛護行政に詳しい関係者は「市が施設を提供し、民間団体が管理する浦安のやり方は先進的だったし、可能性を感じていた。残念でならない」と影響を懸念している。