生活環境や医療の改善によってペットの寿命が延びる一方、飼い主が高齢や病気のため、世話することができなくなるケースが増えている。こうした中、飼い主に代わり、老いた犬猫を最期まで介護するサービスに取り組む施設に問い合わせが相次いでいる。
昨年9月に施行された改正動物愛護管理法では、飼い主が最期まで世話をする責任が明記され、自治体は受け取りを拒否できるようになった。介護施設の運営者は「行き場をなくしたペットを受け入れる場所が必要」と、厳しい表情で話す。
介護用の低反発マットを敷いた3畳ほどの個室に、人間なら70〜85歳程度に当たる犬3匹が暮らす。いずれも飼い主が病気になり、面倒がみられなくなった。
3匹を預かる新潟県阿賀野市のペットホテル「わんわんぱーく」では、3月から老犬の終身介護を始めた。運営する柿本晃亜さん(39)は「高齢になると認知症で一晩中ほえたり、自力での排泄(はいせつ)が難しくなったりする」と説明、スタッフ7人が日に3回の体温計測や手作りの餌で体調を管理している。費用は入居費一律5万円のほか、月4万〜8万円かかる。
日本獣医学会などの統計では、昭和55年に2.6歳だった飼い犬の平均寿命が平成21年には15.1歳に。飼育数は約1100万匹で、うち半数以上が高齢期とされる7歳以上という。
長崎市のペットホテル「老犬ホーム アリスの家」には高齢の5匹が生活する。寝たきりになった中大型犬用のバリアフリーの個室5室は常に満杯だ。17年頃、高齢になった飼い主から犬を預かったのをきっかけに、これまで20匹ほどを介護し、みとってきた。
「最期まで飼い主と一緒に過ごすことが理想だが、人も犬も高齢化すれば事情が変わる」とセンター長の海士元弘さん(52)は力説する。
環境省によると、ペットホテルなどによるサービスのほか、昨年4月1日時点で10都道県、計20施設が犬猫の介護専門施設として登録されている。担当者は「同様の施設の需要はさらに高まる」と予測している。