◆法改正 ペット飼育に重い責任
センターで保護された後、新たな飼い主が見つかった犬=浜松市西区の県動物管理指導センターで
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静岡県内で飼えなくなった犬と猫を引き取る県動物管理指導センター(浜松市)で、新たな飼い主が見つからずに殺処分される犬猫の数が大幅に減っている。昨年九月の法改正で安易な飼育放棄による犬猫の引き取りを拒否できるようになったためで全国的傾向。それでも年間の殺処分は県内で三千三百匹に上り、センターは「最後まで責任を持って飼ってほしい」と呼び掛けている。
「思った以上に世話が大変」「不妊手術をせずに子猫がたくさん生まれた」「引っ越しで飼えなくなった」。飼い主がセンターや保健所に犬猫を持ち込む理由はさまざま。近年のペットブームで「かわいい」と安易に飼い始めて、世話ができなくなるケースもあるという。
センターは以前、明らかに飼い主のわがままと思えるケースでも、責任持って飼うよう説得はできても、最終的には引き取りを拒むことはできなかった。昨年九月の改正動物愛護管理法の施行で、安易な飼育放棄の場合、自治体は飼い主からの引き取り要請を拒否できるようになった。その結果、飼い主が自力で飼い続けるようになったり、新たな飼い主を見つけるケースが増えているという。
県内で二〇一三年度、殺処分された犬猫は三千三百五十二匹。一二年度の四千九百六匹と比べて大幅に減った。センターの村松芳貴所長は「殺処分が減ったのは、引き取り件数が減ったため。さらに殺処分される命を少なくするため、ペットが死ぬまで飼い続け、それが無理なら新たな飼い主を探すことが大切。飼い主への啓発活動を続けたい」と話す。
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一方で法改正後、小型犬が山中などに大量に捨てられるケースが全国で相次いで発生。多くがトイプードルなどの人気犬で、年老いて繁殖に使えなくなり、引き取りを拒まれた業者が捨てた疑いが指摘されている。
村松所長は、ペットを家族同様に大切にする人がいる半面、ペットを物のように扱う風潮もみられると懸念。「犬や猫もかけがえのない命。社会全体で大切にし、共存していかなければいけない」と訴えている。
◆処分数、全国で減少傾向
全国の自治体で殺処分される犬猫の数は、減少傾向にある。自治体がそれぞれペットの引き取りを有料化し、新たな飼い主を探す取り組みも進めてきたためだ。昨年九月の改正動物愛護管理法の施行後、さらに殺処分数は減っている。
環境省動物愛護管理室によると、全国で殺処分された犬猫の数は、一九七四年度は百二十二万一千匹にも上ったが二〇一三年度は十二万八千匹。四十年間で十分の一に減っている。
犬猫の引き取りの有料化は数年前から、自治体が独自に進めている。静岡県は〇九年十月から、犬猫の引き取り手数料として一匹につき二千円(生後九十日以内は四百円)を徴収している。このほかボランティア団体とも協力して新たな飼い主を探したり、動物と触れ合う出前授業で命の大切さを伝えたりして、殺処分を減らす取り組みを強化している。
(宿谷紀子)
<改正動物愛護管理法> 2013年9月に施行された。安易な飼育放棄を防ぐため、飼い主や繁殖業者が犬猫を最後まで世話する「終生飼養(しよう)」の責任を明記。自治体は、病気やしつけの失敗などを理由にした犬猫の引き取りを拒否できるようになった。ペットの殺傷に対する罰則も強化され懲役は1年以下から2年以下に、罰金は100万円以下から200万円以下に引き上げられた。
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