ホッキョクグマの飼育・繁殖で知られる札幌市の円山動物園は30日、飼育していたマサイキリンの雌「ナナコ」が死んだと発表した。11歳で人間の約30歳に相当するという。
この日朝、屋内施設で横たわり死んでいるのを飼育員が発見した。同園によると、29日午後9時には変わった様子はなく、餌も普段通り食べていたという。マサイキリンの平均寿命は20〜30歳で、ナナコは半分以下ほどの年齢で死んだことになる。
同園は30日の閉園後、ナナコを北海道大獣医学部に移し、解剖。死因は胃の内容物が肺の気管支に入る誤嚥(ごえん)による窒息死と推定されるという。ナナコは2004年8月に熊本市動植物園で生まれ、09年10月に円山動物園に来た。夏休み最後の日曜日に起きた人気動物の死に、広報担当者は「大変ショックを受けています」と話した。
円山動物園では今年に入り、飼育動物が死ぬケースが相次いでいる。5月には、絶滅危惧種のコツメカワウソの赤ちゃんが展示室のプールで溺れ、7月下旬にはやはり絶滅危惧種のマレーグマの雌が雄に襲われた。今月23日には、新展示施設へ輸送中のグラントシマウマの雄「飛馬(ひゅうま)」が死んでいる。
マレーグマの雌は、雄との同居訓練中に争いが発生。2匹は取っ組み合い、雌が左足を引きずりながら苦しそうな息遣いを見せる様子が動画サイトにアップされた。この争いで受けた傷がもとで死んだ可能性が浮上。この問題では、札幌市が動物愛護法に基づき同園に改善勧告。同園は「獣医師を1人増員」「飼育業務マニュアルの見直し」など改善案を28日に提出したばかりだった。
またコツメカワウソが溺れた件は、来園者が気付いて飼育員に知らせた。ネット上には同園の管理体制に疑問を投げかける書き込みも多数ある。
動物評論家の本間敏弘氏は「市営の動物園では予算もあり、対応に限界が来ている可能性もある。近くにある人気の旭山動物園(旭川市)と比べられる、という焦りがあったのかもしれない」と指摘した。