読売新聞福岡県北九州市の離島・馬島の活動
公益財団どうぶつ基金提供
公益財団どうぶつ基金提供
福岡県北九州市の馬島は、小倉から連絡船で20分、人口40人、猫80匹の小さな島です。糞尿やさかりの鳴き声の苦情解決のために地元ボランティアは最初、北九州市行政に無料で地域猫の不妊手術を要請しましが、市の対応は「ノー」。
理由は「島の猫はエサを与えている人がいて飼い主不明と言い切れない。よって地域猫とはいえない」というものでした。そこでどうぶつ基金の獣医療チームが2日にわたって79頭の不妊手術を行いました。以下は島からの事後報告です。
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2014年12月13〜14日に福岡県北九州市の離島・馬島で猫79頭の一斉TNRを終え、TNRは猫好きよりもむしろ猫が嫌いな人にこそメリットがあるのではないかと思うようになりました。
それから半年後には、猫たちのおしっこで目も開けられないほど臭かった渡船所待合室のにおいがだいぶ減り、島民の方から「ありがとう」と感謝の言葉をいただくこともあります。
また、手術後発情ストレスがなくなった猫たちは、プロレスごっこのようなじゃれ合いはしますが、流血するような激しいけんかはしなくなりました。島民の方によると「春先に気味の悪い鳴き声がしなくなった」そうで、以前は生傷が絶えなかったオスの成猫の顔に少しずつカサブタができて、会うたびに顔つきが穏やかになっているのはとてもうれしいことです。
現在は、有志で必要量の餌を支援しながら、毎月1〜2回ほど島へ通って猫たちの健康チェックや掃除などを行っています。「ぶっつけ本番」のTNRの現場では大変なこともたくさんありましたが、道路の真ん中で仰向けに寝転び「開き」になって、安心しきって昼寝する島猫たちを見ていると、報われる気がします。これからも馬島が「さくらねこ」にとって平和であるように、できる限りのことを続けていきたいと思います。(竹下雅美 大切な猫たちプロジェクト in 馬島 代表)
徳之島ごと、さくらねこTNRプロジェクトって?
イラスト=公益財団どうぶつ基金提供
イラスト=公益財団どうぶつ基金提供
鹿児島県奄美群島の世界自然遺産登録への取り組みとして、徳之島3町からの申請を受け、行政と協働し、猫の捕食によるアマミノクロウサギ絶滅の保護措置のために、徳之島に生息する全ての猫(推定3000頭)に、さくらねこ無料不妊手術を行う一大プロジェクトが発足しました。
アマミノクロウサギは、いまや地球上で奄美大島にわずか4000匹、徳之島にはたった200匹だけしかいなくなってしまい環境省も絶滅を危惧する生きた化石と呼ばれる珍獣です。
さくらねこでアマミノクロウサギも救おう!
猫の避妊・去勢の様子(公益財団どうぶつ基金提供)
猫の避妊・去勢の様子(公益財団どうぶつ基金提供)
そんな中、島にすむ猫がアマミノクロウサギを食べていることがわかりました。
もともと島には人も猫もいませんでしたが、島に移り住んだ人たちが猫も連れて来ました。不妊手術をせずに放し飼いをして増えてしまった飼い猫は、やがてノラ猫になって森に入り、クロウサギを食べるようになってしまったのです。
わかっているクロウサギの死因の約90%は交通事故で犬や猫に食べられたことによる死亡は10%ほどですが、いずれにしてもこのままでは私たち人間のせいで地球上からアマミノクロウサギがいなくなってしまいます。「1000万年続いたアマミノクロウサギを私たちの世代が滅ぼしてしまった」なんて、申し訳ないではすまされません。かといって少なくなったクロウサギの命を守るために増えすぎた猫を殺すなんて残酷なことは心やさしい島の人たちにはとてもできません。そこで、徳之島では、みんなで、アマミノクロウサギとさくらねこ、どちらも殺さずに一緒に暮らせるしくみを作っていくことになりました。島ではすでにその効果が確認できるほどの状況になってきました。
平成26年度に合計2回のTNR事業で約1178匹の猫の避妊・去勢を行いました。
世界自然遺産登録という国家プロジェクトは猫問題によって立ちふさがれ、何の問題解決もされない、ただアマミノクロウサギ絶滅を待つ空白の10年が過ぎようとしていました。そんな中、どうぶつ基金と徳之島の3町は協働してすでに島の半数の猫の不妊手術を終えました。以下は伊仙町環境課長の美延さんの中間報告です。
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ここは、鹿児島から南に約480キロの小さな島。しかし約1000万年前からの先住動物「アマミノクロウサギ」や「トクノシマトゲネズミ」など、世界でここにしか生息していない動物や昆虫・植物など、多くの絶滅危惧動植物が島民と共生しています。
近年、開発が進み、先住の動物や植物の生息域が狭くなってきました。この人間による生活域の拡大に伴い、ノラ猫や野犬の被害が深刻になってきました。世界自然遺産の候補地となっている奄美・琉球地域の中の「徳之島」という小さな島の大きな脅威として、その存在が大きくなってきました。そのような中で猫の脅威に対応する術すべについて、約3年前から関係機関において議論を尽くしてきましたが、これという有効な策がないまま、終始議論だけの問答に嫌気がさしてきたところに、どうぶつ基金という団体の情報を得ました。
早速連絡をとり、趣旨を理解していただくとともにその緊急性に共感していただき、対応していただきました。これまでに多くの処置数を上げることができ、すでにその効果が確認できるほどの状況になってきました。
奄美・琉球の世界自然遺産登録に向け、更なる脅威の回避に努めるとともに、子や孫にこの豊かな自然を引き継ぎ、猫も犬も人間も住みよい世界自然遺産の島でありたいと思っています。(伊仙町環境課 美延治郷)
南国の美しい海に浮かぶ公園、ここでは心無い人たちに捨てられ繁殖した多くのノラ猫が生きていました。猫たちの健康状態はとても悪く、虐待されてケガをした猫、捨てられた釣り針を食べてしまった猫もいます。飢えと発情で狂暴になった猫、糞尿と生ごみの臭いが漂う芝生。本来、市民の憩いの場であるはずの公園は退廃していました。市には苦情が寄せられます。中には「ノラ猫なんか全部殺してしまえ」という過激な意見も寄せられ市も対応に苦慮していました。
どうぶつ基金ではこの問題を解決するため島に獣医師団を派遣。182頭の猫を捕獲し、不妊手術とワクチン、ノミダニの駆除などを行い元の場所に戻すさくらねこTNRを行いました。南国の公園に平和が戻るまで長い時間はかかりませんでした。
公益財団どうぶつ基金提供
公益財団どうぶつ基金提供
不妊手術を終え、さくらねこになった猫たちは性格もずいぶん穏やかになり、糞尿の臭いも激減しました。市民ボランティアが猫の世話と公園の掃除を始めました。市は公園に猫の専用トイレを作ってくれました。清潔になった公園には、さくらねこと触れ合いたい子供や家族連れが戻ってきました。
今、平和が戻った公園では、さくらねこは人と共生し穏やかに暮らしています。
世界文化遺産国宝姫路城での活動
姫路城に移動車を持ち込んでの活動(公益財団どうぶつ基金提供)
姫路城に移動車を持ち込んでの活動(公益財団どうぶつ基金提供)
移動手術車を持ち込んで約100頭の手術を姫路城で行いました。姫路城の無料不妊手術には文科副大臣や環境副大臣ほか国会議員が多数参加しました。
さくらねこTNRを東京中のノラ猫に行えば、殺処分ゼロは実現できます。では東京中のノラ猫をさくらねこにするための手術代はいったいいくらかかるのでしょうか?
東京のノラ猫っていったい何頭いるのでしょうか?
実は東京都が数年に一度まじめに調査しているんです。
1998年に行われた調査で飼い主のいない猫の数は、約11万頭と推計されました。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/aigo/cat/fcat00/fcat02.html(出典:東京都福祉保健局HP)
これが2年前の調査ではノラ猫は約6万頭 屋外で暮らす飼い猫は約2万頭と推計されています。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/aigo/horeishiryou/siryou.files/23tyousa_gaiyou.pdf(出典:東京都における犬および猫の飼育実態調査の概要)
ここでノラ猫の数が半減していることがわかります。
どうぶつ基金が全国で行っている不妊手術の費用は1頭当たり約3000円です。
東京のノラ猫6万頭すべてに無料で不妊手術をして手術代はわずか1億8000万円です。
2億足らずの予算で、世界でも類を見ない、殺処分ゼロの大都市東京が誕生します。
その上、殺処分ゼロを達成したら、建設費だけで20億ほどかかる管理センターは不必要になります。
「2020殺処分ゼロ」に向けて
どうぶつ基金では25年にわたって殺処分ゼロを実現するために、地道に活動を続けてきました。そしてここ数年、毎年2万〜3万頭単位で猫の殺処分は減り続け、ついに10万頭の大台を割りました。5年後の2020年東京オリンピックまでに「日本の行政による犬や猫の殺処分」をゼロにするという目標は決して夢物語ではありません。
殺処分ゼロは見えてきました。「2020年のオリンピックは殺処分ゼロの国、日本で行われた」と自慢できるように、殺処分ゼロへのラスト1マイルを走り切りたいと考えています。
posted by しっぽ@にゅうす at 07:10
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