先月、和歌山県議会で動物愛護管理条例の改正案が可決された。施行後は、一定の条件を満たさない野良猫へのエサやりが禁止となる。違反して、是正指導に応じない場合は5万円以下の過料が科せられるのだ。
野良猫に悩む自治体は少なくないし、同じような条例があちこちで制定される可能性は大だ。愛猫家は気が気ではないだろうが、当初の改正案は、野良猫へのエサやりを全面的に禁止する内容だった。これに批判が殺到。県が募集したパブリックコメントには、「(和歌山電鉄貴志駅の看板猫の)たま駅長が亡くなった途端、恩をあだで返すのか」「野良猫を餓死や衰弱死させるのか」といった意見が寄せられた。
そこで県は条例案を見直し、不妊去勢手術、排泄物処理、周辺住民の理解を得るといったルールに反したエサやりに限って禁止としたという。
「最終的な条例の内容は、エサやりの“禁止”ではなく“規制”です。改正の目的は、あくまでも野良猫の繁殖過多の防止。そのため今回は、地域住民の理解を得たボランティアなどが“地域猫対策”を行う際、その計画を知事が認定し助成する制度も新設しました」(和歌山県食品・生活衛生課の担当者)
野良猫を根絶するのではなく、“地域猫”として扱う仕組みを作ろうというわけだ。そのために、地域の理解を得ながら不妊去勢手術などを施した上でエサやりを行うルールを設けたのである。
「こうして、野良猫と人間の共生を目指しています。最終的な改正案が可決されて以降は、特に批判意見は寄せられておらず、むしろ“地域猫対策として認定してもらうにはどうしたらいいのか”といった問い合わせが中心です」(同)
野良猫の繁殖につながらない形でのエサやり体制が整備されるなら、愛猫家にもノラちゃんにも悪い話ではなさそうだ。