犬を飼ううえで欠かせない日々のお散歩。シニア犬であったり、病気を患っているワンちゃんをお散歩につれて行くのは困難かもしれませんが、健康なワンちゃんは毎日お散歩に行きたいところ。
でも、「愛犬が健康なのに散歩につれて行かない派」の飼い主さんもいるようなのです。いぬのきもちWEB MAGAZINEで飼い主さん1,044名にアンケート調査をしてみると、6.1%とごくわずかではあるけれど該当する結果に。
「気が向いたときにしか行かない」
「仕事でなかなか散歩の時間がとれなくて」
「めんどくさくて……」
と答えた飼い主さんが見受けられましたが……これって、犬の立場に立つとどうなのでしょうか。
今回は、「健康な犬を散歩につれて行かないリスク」について、獣医師にくわしく解説してもらいました!
甘く見ちゃダメ! 愛犬の散歩を怠る「3つのリスク」とは?
散歩するトイ・プードル
犬を散歩につれて行かない3つのリスク
ーー元気なワンちゃんを散歩につれて行かないことに、なにか問題はありますか?
いぬのきもち獣医師相談室の獣医師(以下、獣医師):
「散歩をしないリスクは大いにあります。心身の健康を保つためにも、散歩は重要な意味があるのです。
私たち人間は仕事、友達、趣味など外の世界があります。気晴らしにと自ら外出できる自由があります。でも、犬にはそれができません。
飼い主さんが散歩してあげることは、安定した精神と身体を維持するためにも、お互いの絆にとっても大切なことです」
ーー人が外に行かない場合の気持ちや影響を考えてみると、犬にとっての散歩の必要性がわかりやすいですね。
甘く見ちゃダメ! 愛犬の散歩を怠る「3つのリスク」とは?
散歩するバーニーズマウンテン
リスク1:運動不足による肥満
獣医師:
「では、ここから散歩をしないリスクについて見ていきましょう。
まず、食べて寝るだけの生活では、人と同じように運動不足から肥満になります。すると心臓に負担がかかったり、首周りについた脂肪が気管を圧迫して呼吸がしにくくなったり、糖尿病になる可能性もあります。
重たい体を支える関節も痛め、回復させることは難しくなります。また、犬は歩かないと筋力がどんどん落ちて、取り戻すためにはとても時間がかかります。
小型犬では膝蓋骨脱臼の持病のあるコも多いですが、そういう持病のあるコは筋肉で支える必要があるのです」
リスク2:ストレスから咬む、吠えるなどの問題行動を起こすことも
獣医師:
「飼い主さんからの相談で多いのが『咬む、吠える』。その多くが散歩をしておらず、ストレスを抱えた犬の様子がうかがえます。
ほかにも食糞、家の中の物を壊す、おしゃぶりのように自分の手足の先をなめ続ける肢端舐性皮膚炎 (したんていせいひふえん)といった、飼い主さんを悩ませる問題の引き金にもなります」
甘く見ちゃダメ! 愛犬の散歩を怠る「3つのリスク」とは?
見つめるペキニーズ
リスク3:社会性が身につかない
獣医師:
「車や電車の音、ほかの犬が残したニオイを嗅ぐこと、ほかの犬や知らない人との出会いーーすべての刺激が脳を活性化させ、犬の社会性につながっていきます。
たとえ同じ散歩道でも、同じことが毎日起こっているわけではありません。その日その日で感じるニオイも、音も違う刺激があるのです。
散歩をしないと社会性が育たず、小さな刺激にも敏感なコは警戒心が強く怯え、見知らぬ人に吠えたり雷パニックなどの問題行動につながることがあります。
社会性を身につけて犬に自信をつけることは、飼い主さんとの生活や関係を安定したものにしてくれるのです」
甘く見ちゃダメ! 愛犬の散歩を怠る「3つのリスク」とは?
散歩するヨークシャーテリア
基本的な散歩の頻度・時間の目安について
ここで、適切な散歩の頻度と時間について解説します。目安として、飼い主さんはぜひ覚えておいてください。
□小型犬:1日2回、1回あたり約15分程度、もしくは1日1回20〜30分程度
□中型犬:1日2回、1回あたり約30分程度
□大型犬:1日2回、1回あたり約1時間程度
※体が大きくなるほど散歩の時間も必要になります。
ここまで、散歩に行かないリスクについて見てきました。下記では、アンケートのなかで見られた飼い主さんの「散歩に行かない理由」について、獣医師がアドバイスをしていきます。
同じような悩みがある飼い主さんは、ぜひ参考にしてみてください!
甘く見ちゃダメ! 愛犬の散歩を怠る「3つのリスク」とは?
散歩する犬
飼い主さんの都合で散歩に行けない場合は?
ーー飼い主さんのなかには、散歩に行きたいけれど体調が悪かったり、仕事に都合で時間がとれないなどのケースがあります。どうしても散歩に行けない日は、どうしたらいいですか?
獣医師:
「飼い主さんの仕事や体調、悪天候で行けない日もあると思います。どうしても行けない日は無理せず、行けたときに少し長めで楽しい散歩をしてあげてください。
ペットシッターや家族、友人など、散歩に協力してくれる人をあらかじめ決めておくこともおすすめします」
ノミ・ダニが怖くて散歩に行かせたくない場合
ーーアンケートのなかで、ノミやダニなどの害虫が怖くて行けないという声もありました。
獣医師:
「病院で処方される予防薬は効果がありますから、ぜひ使ってください。予防薬を使うことでノミ・ダニがついても一時的ですみます」
甘く見ちゃダメ! 愛犬の散歩を怠る「3つのリスク」とは?
散歩する柴犬
愛犬がどうしても散歩に行きたがらない場合
ーー飼い主さんは散歩に行きたいけど、愛犬が嫌がるケースもあるようです。
獣医師:
「散歩に行きたがらない理由はなんでしょうか? 『どこか体調が悪い? 』『外で怖い思いをしたことがある? 』などの見極めが必要です。
ケガをしている、元気食欲がないなどの体調不良があれば、まず治療を優先させましょう。シニア犬では足腰の関節の痛みを抱えていたり、体力的に今までと同じ距離や時間の散歩がつらくなっている場合も考えられます。
犬の様子を見ながら、散歩の内容を見直してみましょう」
ーー外が怖いワンちゃんには、どうしたらよいですか?
獣医師:
「外の世界が怖いのであれば、小型犬であれば抱っこから始めて、公園の土の上に少し座らせてみるだけなど、時間をかけて慣らしていきましょう。
ただし、『散歩を嫌がったら抱っこしてもらえた』と甘えにつながることもありますので、健康であれば嫌がっても少しずつ歩かせてみてもいいかもしれませんね」
甘く見ちゃダメ! 愛犬の散歩を怠る「3つのリスク」とは?
散歩する犬
首輪・リードを嫌がる場合
ーー首輪やリードをつけて歩くのを嫌がる犬には、どうしたらよいでしょうか?
獣医師:
「引っ張られることが嫌だったり、首に違和感を感じるコもいますね。まずはリードをつけたままで、家の中で過ごす練習からしてみましょう。
犬の体格に合わない、細くて軽い紐のようなものからでもかまいません。飼い主さんはリードを持たず、床に垂らした状態でいいです。
そのときは、床に垂れたリードが犬の足に引っかかってケガをしないように注意してください」ーー日常生活の中で慣れさせることが大事なんですね。
獣医師:
「リードをつけたままでゴハンを食べてみる、遊んでみる、寝てみるなど、ふだん通りに過ごさせます。気にせず過ごせたら大げさにほめてあげて、おやつを与えてもいいです。
慣れてきたら、引き続き家の中で飼い主さんがリードを持って歩く練習をしてみましょう」
ーー散歩中に走って引っ張ってしまい、首元が苦しそうなコもいますよね。
獣医師:
「もし首輪にリードをつけて、散歩中に引っ張られて苦しいなど犬なりに理由があるのであれば、ハーネス(胴輪)にリードをつけると首への負担も減りますし、犬に引っ張られても飼い主さん側もコントロールしやすいのでおすすめです」
愛犬がアトピーなどで皮膚が弱い場合
ーーアトピーなどの皮膚病を患っていて、外に出すのが不安だという飼い主さんもいました。
獣医師:
「かかりつけの獣医師さんと相談しながら、草むらは避けて芝生や土の上をわずかな時間でも歩かせてみてはいかがでしょうか。
アトピーの治療をしながら散歩することは可能です。むしろ、散歩でストレスを解消したほうが免疫力も上がりますし、治療の助けにもなるはずです」
甘く見ちゃダメ! 愛犬の散歩を怠る「3つのリスク」とは?
見つめる犬
シニア犬でお散歩に行けない場合の対処法
ーーここまで健康なワンちゃんのケースについて見てきましたが、シニア犬の場合はお散歩に行かない代わりに、なにかしてあげたほうがいいことはありますか?
獣医師:
「介護や闘病中で散歩ができず、家の中で過ごす時間が長いコは、飼い主さんがたくさん声をかけて、なでてあげてください。
犬のそばに好きなおもちゃや敷物など、安心できる環境を作ってあげることも大切です。ブラッシングも、皮膚に刺激を与えていいとされています」
ーーそのようにしていれば、外に出て歩かなくても犬のためにはいいということですね。
獣医師:
「できれば中型〜大型犬は、5分でも10分でも散歩で歩いて筋力を維持したほうが、寝たきりになるリスクは減ります。
歩けないコはバギーに乗せたり、小型犬なら抱っこして外の空気や太陽の光を感じるだけでも脳の刺激になります。
毎日ではなく時々でかまいません。一緒に外に出る時間を作ってあげてほしいと思います」
散歩に行かないことによるリスクを考えると、お散歩嫌いをできるだけ克服したり、飼い主さんが散歩の時間をとってあげることがいかに重要なのことなのか。
人が運動しないでいることをイメージしてみると、どんな影響があるかわかりやすいですよね。
これまで怠ってしまったという飼い主さんは、いまからでも散歩に行く習慣をつけてみましょう!
(監修:いぬのきもち・ねこのきもち獣医師相談室 担当獣医師)
『いぬのきもちWEB MAGAZINEアンケート vol.36』
参照/Instagram(@ringorogram、@bon2277、@loki_._nico、@kon_808、@g_moko0619、@eimi4u、@maron7799、@a4r.sa11u_mi13bygoing、@lion_0913、@momomomo1119、@grancuoco)
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
取材・文/凜香
いぬのきもちWeb編集室