27日発売の「週刊新潮」(新潮社)が、猫カフェ「モカ」の闇を暴いた。「モカ」は、かねてより猫たちのずさんな管理体制がネット上で告発されており、批判を浴びていた。
猫カフェ「モカ」は池袋や新宿、渋谷など都内を中心に全国で15店舗を構えており、訪日外国人の観光名所としても有名、AKB48らアイドルも訪れる人気店だった。しかし今年7月下旬、モカのスタッフと見られるTwitterユーザーが、「猫パルボウイルスが蔓延しているのに営業を続けている」「この4日間で、猫が4匹も死んだ」と、内部告発を投稿。このツイートは拡散され、ネットでは大きな批判の渦が巻き起こっていた。
これを受けて8月1日、経営元の株式会社ケイアイコーポレーションは、7月18日に開店したばかりの「モカ」立川店を「一部の猫の体調に深刻なトラブルが発生した」として臨時休業にした。また、8月2日には公式サイトに文章を載せ、関東全店を一時的に休業することを発表した。この文章によると、「7 月 26 日深夜、立川店の猫 2 匹の体調に異変がみられたため病院で受診したところ、猫パルボウィルス検査で陽性との診断結果が出ました」と説明がなされ、「お客様のご心配も考えて」との理由で、全店休業にするとある。しかしこの取り繕ったような対応に、「モカ」への批判はさらに紛糾する。同社社長のTwitterは炎上し、8月3日にはアカウントが削除された。また「モカ」は、8月18に銀座マロニエゲートへの出店を予定していたが、この騒動を受けて中止されていた。
世間を巻き込んだ一連の騒動に対して、「モカ」の誠意ある対応が待たれていた。ところが8月22日には「徹底した安全対策の実施により、全店舗の安全が確認できていることをお約束します」と発表し、関東全店の営業を再開している。
猫パルボウイルスは糞便を媒介して感染し、その感染力は非常に強い。人間には害がないが、猫にとっては致死率の高い危険な病気だ。「週刊新潮」の記事にコメントを寄せた獣医師は、〈「パルボが出たのに休業しなかったのは、非常に危険です」〉と前おいたうえで、〈「ワクチンさえ打っていれば、基本的には防げるので、“昔の病気”というイメージです。ワクチンを打っていない、極めて劣悪な環境、多頭飼育、などの条件が重なった場合にのみ感染するという認識です」〉と指摘している。「モカ」の猫たちが、どれほど劣悪な環境に置かれていたかが想像できるだろう。
「週刊新潮」には、元「モカ」社員によって、猫たちの過酷な労働環境についても明らかになっている。記事によれば、〈「10時に開店して20時に閉店するまで、猫は免疫力が低い子猫をふくめ、10時間ぶっ通しでフロアに出され、休憩できません」〉。また、ケイアイコーポレーションは芸能イベントやスタジオ運営事業も行っているため、〈「モカでアイドルやバンドのライブをやることも。大音量の音楽は、人間の何倍も耳がいい猫には大変なストレスで、みな怯えきって、翌日には何匹かが軟便になります。また、猫の欠員が出ると、他店からの補充で賄いますが、猫は縄張り意識が強く、急な環境の変化もストレスになります」〉―――こうした状況では、「モカ」の猫たちの免疫力が低下し、病気が蔓延するのも無理はないことだったかも知れない。
さらにこの元社員は、Twitterの炎上騒動前から、「モカ」の都内計6店舗でパルボの感染が発覚していたものの、公表して休業することはなかったという事実も暴露している。さらに、〈「新宿店でパルボが出たときは、責任者が社長に営業休止を訴えましたが、社長は“猫が死んだら買い足せばいい”と言うだけでした」〉と、猫の命を粗末に扱う社長の言動まで暴かれた。記事によれば、「モカ」では、2015年から3年半ほどの間に、50頭という異常な数の猫たちが命を落としている。
猫カフェというビジネスにとっては、たしかに猫は商品だが、その大前提として、扱っているのはモノではなく命だ。現在「モカ」は営業を再開しているが、こうした認識を改めずに営業を続けていくとしたら、これほどおぞましいことはない。その実態を知ってもなお、「モカ」の猫と遊びたいと思う客がいるとしたら、それもまた同罪だろう。
(今いくわ)