増えすぎて飼えない」防止
猫や犬が繁殖して増えすぎて飼い主が飼育を放棄する「多頭飼育崩壊」を防ごうと、県は、10匹以上の犬や猫を飼う人に届け出を義務化する方針を固めた。飼い主への支援や指導を行う上で、状況を早期に把握する必要があると判断した。届け出を怠った際の罰則を設けるかどうかは慎重に検討する。来年の県議会2月定例会に県動物愛護管理条例の改正案を提出する方針だ。
県によると、県動物保護センター(平塚市)に多頭飼育崩壊で引き取られた犬と猫は、2013年度は12匹、14年度は13匹、15年度は0だったが、16年度は142匹と急増。17年度は63匹だった。横浜市動物愛護センターでも、17年度に95匹が引き取られた。
環境省によると、雌猫は生後4〜12か月で出産可能になる上に年2〜4回出産、1度に4〜8匹産む。放置すると、3年間で1匹の雌猫から2000匹以上に増えかねないという。犬も同様に繁殖ペースが速く、飼い主が不妊去勢手術などの対策をとる必要がある。
多頭飼育崩壊が発生すると、排せつ物や死骸が散乱して悪臭が漂うなど生活環境の悪化を招く。周辺住民が被害を受けるため、県としては、届け出制で多頭飼育の状況を早期に把握し、市町村とともに防止対策を講じたい考えだ。
改正案では、横浜、川崎、相模原の各政令市を除く自治体に住む飼い主を届け出義務化の対象とし、平塚、鎌倉、小田原、厚木の4市に置く保健福祉事務所を届け出先として想定。多頭飼育の届け出制度などを明記した改正動物愛護管理法(13年9月施行)に関する環境省通知に基づき、「おおむね10匹以上」を「多頭」の基準とした。
県によると、千葉や札幌など8府県4政令市が既に届け出制度を実施。県条例が改正されれば、神奈川では初の導入となる。先行自治体では罰則があり、千葉県は5万円以下、埼玉県は3万円以下の過料を科しているが、神奈川県幹部は「多頭飼育崩壊の防止が条例改正の目的。罰すること自体は目的としていない」とし、罰則については慎重に対応する。
また、多頭飼育崩壊は、飼い主の経済的困窮も原因の一つとされ、県は飼育困難になった場合などの引き取り手数料(1匹当たり1000〜4000円)の減免も検討する。
犬や猫の不妊去勢手術には数万円かかり、県や政令市などは5000円前後を助成しているが、費用を捻出できない飼い主もいるため、県動物愛護協会の山田佐代子会長は「条例改正とともに、手術費用への支援拡充も含めた対策を講じてほしい」と話している。(佐藤竜一)
2018年10月20日 Copyright c The Yomiuri Shimbun