茨城県古河市の動物保護施設が排せつ物を放置した劣悪な環境で犬や猫の管理を続けているとして、運営するNPO法人に対し、県が2月に動物愛護管理法に基づく改善命令を出す事態に発展している。本来、身寄りのない動物の命を救うべき愛護団体への改善命令は異例。専門家は虐待に当たる可能性を指摘する。
NPO法人が運営する茨城県古河市の動物保護施設の内部。排せつ物が放置された場所で、犬や猫が飼育されていた(2017年秋ごろ)=共同
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NPO法人が運営する茨城県古河市の動物保護施設の内部。排せつ物が放置された場所で、犬や猫が飼育されていた(2017年秋ごろ)=共同
動物愛護管理法に基づく手続きの流れ
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動物愛護管理法に基づく手続きの流れ
3月下旬の施設内。放置された排せつ物が見られ、悪臭が鼻を突いた。周囲はすだれなどで目隠しされ、外部から中の様子は見えない。NPO法人の代表理事を務める男性は取材に「今は県の指導の下できちんとしている」と説明。床を清掃してコンクリートや砂利を敷き詰める作業を進めていた一方、施設の奥まではうかがえなかった。
男性によると、現在保護しているのは犬猫計約60匹。やせた犬もみられたが、「食べ物も十分与え、動物たちは私になついている」と話す。
2017年秋ごろに撮影した写真を示し「足の踏み場もないほど大量の排せつ物が放置され、動物たちは体がやせ細り、ふん尿で汚れていた」と証言したのは、かつて施設で動物の世話に携わった女性。男性はこの写真を「(自身が)病気で清掃が行き届かなかった時期のものだ」と認めた。
複数の関係者によると、当時は計約120匹を飼育し、避妊や去勢手術をせずに繁殖。排せつ物が施設全体に広がり、固まってこびりついた床の上で犬や猫が寝起きや食事をしていたという。少なくとも16年春ごろからはこうした環境で管理されていたとみられる。
女性は「動物たちの世話というより、一日中掃除。犬や猫がまともに生きていける環境ではなく、本当にかわいそうだった」と顔をしかめた。
情報提供を受けた県動物指導センターは昨年10月に施設を立ち入り調査し、不衛生な状態での飼育を確認。昨年12月には法人に改善勧告したが、期限までに状況が変わらず、今年2月に改善命令を出した。なお続けば刑事告発も視野に対応を検討するという。
動物愛護管理法上、このNPO法人は非営利での保管や譲渡を目的とする「第2種動物取扱業」に該当。同法を所管する環境省によると、17年度末までに第2種の業者が改善勧告や命令を受けた例はない。
近隣では改善を求める声が絶えず、3月には市選出の高橋勝則県議が県の対応を「やる気が感じられない」と県議会で批判。県の木庭愛保健福祉部長は「時間をかけて口頭指導してきたことが結果的に対応の遅れを招いたのは率直に反省したい」と答弁した。
ペット関連法に詳しい細川敦史弁護士は「動物をおざなりにするのは本末転倒。虐待に当たり得るケースで、行政や警察は適切な対応を取るべきだ」としている。〔共同〕