神奈川県は平成30年度に県動物保護センター(同県平塚市)で保護された犬猫の殺処分件数がゼロとなったことを公表。犬は25年度から6年間、猫は26年度から5年間、それぞれゼロを達成した。また、隣接地への新築移転による開所が当初予定より遅れていた同センターについて、6月1日に開所し、合わせて「県動物愛護センター」に改称すると発表した。新センター開所を機に、動物愛護の精神が県内にさらに浸透することに期待が寄せられている。
同県の黒岩祐治知事は記者会見で「殺処分ゼロは動物愛護の啓発活動を続けてきた結果。多くの人に命を預かる責任感を持ってもらうよう、活動を進めていきたい」と胸を張った。また、ボランティア団体などが収容動物を引き取っている現状について、「皆さんが懸命に活動してくださっているおかげ。今後も連携して殺処分ゼロを継続していく。県がモデルとなり(この動きを全国に)広げていきたい」と話した。
引き取り手に依存
県によると、県のセンターの犬猫の合計収容数は、26年度1103頭▽27年度1019頭▽28年度970頭▽29年度770頭▽30年度613頭−と推移。同センターでは、犬約40頭、猫約110頭の計150頭程度を常時飼育しており、それ以外の収容動物数が、ボランティア団体や獣医師団体、また一般への譲渡などでカバーされていることになる。殺処分ゼロは、多くの関係者の努力や犠牲の上に成り立つ“快挙”であることがうかがえる。
ただ、県が発表する県内の収容数や殺処分件数は、県内主要都市の横浜、川崎、横須賀市での実績を含まない。相模原、藤沢、茅ケ崎市なども数値に含めず、外数として公表している。県管轄以外の自治体などでは例年、「やむを得ない」殺処分が行われており、必ずしも県内全体の動物愛護の状況を表しているとはいえないのが実情だ。
また、「殺処分ゼロを目指すことでボランティア団体などの引き取り手が(収容能力を超えていると知りながら)無理をして引き取ろうとするケースもある」(県内の愛護センター職員)といい、「根本解決には、多くの犬猫が収容され続けている現実のほうを強調すべきではないか」(別の職員)などの声も上がっている。
取り組み「元年」
県のセンターは昭和47年に「県犬管理センター」として開所。犬の殺処分を主要な目的としていたため、殺処分を行わなくなった近年は、内部の設備などが飼育中心という業務の目的にそぐわず、平成30年1月から隣接地への新築移転工事が進められていた。当初は今年4月に開所する予定だったが、工事を請け負っていた業者に経営上のトラブルがあり、開所が延期されていた。
新センターでは、収容されている動物の様子が通路から目視できるほか、収容動物との「ふれあいルーム」も設置。家庭の居間を再現し、家庭内で動物と一緒の生活を想定できるような部屋もある。
同センターの土肥富有子所長は「明るく広い居室など、飼育環境が大幅に改善される。収容動物たちの生き生きとした姿を(来館者に)見てもらえるだろう」と期待を高めている。上條光喜業務課長は「移転を控え、職員たちの士気も上がっている。ポップ広告などをつくり、情報発信にも力を入れるなど、啓発活動や譲渡先の開拓を目指したい」と意気込んでいる。
県内では今年2月に川崎市の動物愛護センターが、手狭となった高津区から中原区に新築移転し、愛称を「ANIMAMALL(アニマモール)かわさき」として生まれ変わっている。県内の動物愛護の精神や取り組みが加速する「元年」となりそうだ。