動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2019年07月13日

ペット販売、少し待って 犬猫は生後8週まで禁止へ

日本経済新聞



ペットショップなどでの犬や猫の販売を生後56日(8週間)まで原則禁止する改正動物愛護法が6月成立した。幼いほど衝動買いを誘い、飼い主による遺棄につながりやすいためで、改正前から1週間延ばした。2年以内に施行される。ペット業界は規制強化に反対だったが、施行を待たずに自主的に新ルールに切り替える業者も出てきている。

 ペットショップで売られる犬(東京都内)=共同
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ペットショップで売られる犬(東京都内)=共同

東京都の女性会社員(38)は2年前、子犬を飼おうとペットショップを見て回った。愛くるしさに心が癒やされ、欲しい気持ちにかられたが、ショーケースに1匹で過ごす姿に不安が募った。「本来なら犬同士で過ごし、力加減を覚える大事な時期。ちゃんと社会性は身についているのか」

結局、インターネットで知った岡山県のブリーダーから雌の柴犬(しばいぬ)を購入した。自身はマンションでひとり暮らし。不在時は友人やペットシッターに世話を頼む可能性もある。親犬と長く一緒にいた方が成長後の問題行動が少なくなると聞き、生後12週になってから引き取りに行った。

欧米では生後8週まで親元で育てるよう法令で制度化している国が多い。一方、犬舎の狭い日本の飼育環境では、成長に伴い子犬が母犬を傷つけるトラブルが起こりやすく、生後30日前後で母犬から離すのが一般的だ。幼い方がかわいさから売れやすい上、飼育コストを抑えられるという販売者側の都合もある。

だが、早い時期に親から離された犬は「かみ癖がつく」「すれ違う犬にほえ続ける」といった問題を起こす恐れが指摘されている。飼い主が飼育を放棄し、最悪の場合は殺処分に至ることもあるため、規制強化を求める声が動物愛護団体を中心に強まっていた。

ペットショップも変わりつつある。首都圏で店舗展開するペット販売大手コジマ(東京)は今年1月、子犬や子猫の販売について、8週を超えてからの引き渡しを推奨するとの見解を公表、7週ルールに一石を投じた。

コジマによると、7週では、社会に順応できなかったり、発育が遅れていたりする犬や猫が一定数いるという。母乳由来の抗体が減り始めて免疫的に不安定な時期でもあり、8週までは店舗で世話をし、その後に様子を見ながら引き渡すのが妥当と判断したという。

川畑剛社長は「飼い主の意識も年々高まっており、見た目のかわいさで衝動買いする時代ではない。できる範囲で社会化し、問題のない状態で渡すことが販売者責任と考えている」と話す。

▼動物愛護法 「人と動物の共生」をうたい、ペットの虐待や殺傷の罰則を定めた法律。6月成立の改正法は、遺棄防止のため繁殖業者などに犬猫へのマイクロチップ装着を義務化したほか、ペットの殺傷に対する罰則を「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に強化。子犬・子猫の販売を始められる時期も生後56日(8週)超に改めたが、国の天然記念物に指定された日本犬は、特定の条件での販売に限り現行の7週超を維持する。施行は8週超規制が2年以内、チップ装着義務化が3年以内。

〔共同〕
posted by しっぽ@にゅうす at 00:54 | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

多頭飼育崩壊 “増えすぎ”で殺処分の危機...高齢の飼い主が限界に ペット飼育の“覚悟”とは 福岡


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荒れ果てた室内に数え切れないほどの犬たち。

TNCの報道番組キューブが放送し、全国でも取り上げられた「多頭飼育崩壊」の現場です。

増えすぎて殺処分を迫られたペットたち...記者がその結末を取材しました。

集合住宅の一室にネコ・ネコ・ネコ!

22匹もいるというこの部屋、つい一週間前まで…荒れに荒れていました。

【飼い主(福岡市)】
Q・なぜゴミ屋敷みたいになった?
「ネコのことしてたら時間がなくなっちゃう」
Q・相談する相手は?
「いないです、いなかったですね。
 きょうだいは亡くなりましたし、もともと結婚していないので一人ですね」

猫との生活が始まったのは5年前。

自宅近くで弱っていた1匹を招き入れたことがきっかけでした。

その後も3匹を仲間に加えましたが、不妊手術の費用は捻出できず、予想外のスピードで繁殖していったといいます。

『多頭飼育崩壊』

ペットが過剰に繁殖し、適切に飼育できなくなる状態です。

現在は動物愛護団体が手を差し伸べ、猫の不妊手術を行いながら里親への譲渡を進めています。

【飼い主(福岡市)】
Q・自分のところから1匹もいなくなったら?
「悲しい、悲しいけどこの子たちが幸せになるんならそれでいい。
 ここ何年か…はっきり言って幸せにしてあげてる気持ちはないですから…」

福岡県大川市、ここにはさらに深刻な現場がありました。

【仲村 記者】
「すごい!ものすごい数の…犬が…」

【飼い主(大川市)】
Q・これ、全部で何頭いる?
「いま60頭ぐらいいます。
 自分が節約して仕事をすればイヌたちは養っていける。
 『もう少しできる、もう少しできる』でここまでなってしまって」

飼い主の女性が一人で生活しているという家の中は、もはや犬小屋と化していました。

【飼い主(大川市)】
「最初は捨てイヌとか、けがしたイヌとか引き取ったりしていた」

Q・ここまで増えた理由は?
「当然、避妊とか去勢とか言われるが、私としては費用が高くて…何万しますよね」

適切な飼育環境からはほど遠いといえるこの家は、やはり近所でも“よく知られた存在”でした。

【近所に住む人】
「においがね、窓からもほえるしね。うるさい!」
「ある意味じゃ虐待かもしれないしさ散歩もさせないしね。
 自分がきちんと管理できる状態であれば、何匹飼ってもいいと思うけど」

住民の苦情などを受け、保健所は4年前50匹ほどを強制的に引き取り殺処分したものの、その後、犬の数はまたしても増えていったといいます。

【飼い主(大川市)】
「産まれた命は育みたいという気持ちが強かった。
 とにかくイヌたちの食費を稼ぎたいっていうので、1カ月に1回休みぐらいで仕事をしてきた。
 睡眠時間が1時間ぐらい。事故も何回か起こして寝てない状態だった」

この事態に、保健所は飼い主にある『二択』を迫りました。

それは、犬とともにこの家を出ていくか…それとも全て殺処分するか…です。

【飼い主(大川市)】
「本当はこのまま全頭飼いたい。
 1頭1頭特徴があるしかわいい子なので、本当は育てたいけどそういう訳にはもういかないので。
 とにかく…こんな状態になったから責められて当然なんです。
 でもイヌたちをやっぱり生かしたい(泣)」

決められた命の期限は6月いっぱい。

残された時間はもうありませんでした。

期限を過ぎた7月2日、取材班が向かったのは、佐賀県有田町にある動物愛護団体の施設。

そこにいたのはー

【塩塚 記者】
「いました、たくさん!
 1、2、3、4、5、6、7、8...8頭の犬がこちらで保護されています」

あの犬たちは...無事でした。

飼い主の女性が動物愛護団体にSOSを出したことで、急きょ保護されることになったのです。

しかし、ここにいるのは60頭のうち8頭だけ。

ほかの犬たちはどうなったのでしょうかー

【アニマルライブ 岩崎ひろみさん】
「みんな行き先が決まりましたので、1頭残らず殺処分されず助けることができた」

ニュースを見た全国の愛護団体などから「引き取ってもいい」という連絡が殺到。

これからそれぞれの団体が里親探しをするなど課題は残るものの、『最悪の事態』は免れることができました。

また、支援の輪はそれだけにとどまらず、えさやトイレシートなどの物資が全国各地から毎日10件以上届いています。

今回はなんとか救出できたものの、1人暮らしの高齢者による多頭飼育崩壊のケースは急激に増加していて、愛護団体も“手一杯”になっているといいます。

【アニマルライブ 岩崎ひろみさん】
「飼い主さんの“義務感”と“覚悟”が足りない。
 その覚悟というのは、ワクチンだったり毎日のご飯、衛生面、避妊・去勢です。
 これを怠ることで今回のようなケースが起きてしまいますので、覚悟というのは『お金がかかるものだ』と認識してもらいたい」

かわいそうだと捨て犬や捨て猫を引き取り、結果的により深刻な結果を生み出すという皮肉。

近隣の苦情などで初めて表面化し、その時にはすでに手遅れになっているケースも多いだけに、当事者の孤立を防ぐ仕組みの整備が急務となっています。

〜参考〜
何とか命を繋ぎとめることができた今回のケース。

実は殺処分まで、本当に瀬戸際のところまで来ていた。

というのも施設(アニマルライブ)には、すでに保護犬や猫が100頭以上いて、空きスペースはなかった。

保護犬たちの中には里親が見つからず老犬となっていく犬たちも多く、施設で最後まで看取るため、飽和状態となっている。

テレビ西日本
posted by しっぽ@にゅうす at 00:53 | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

石垣島の保護犬殺処分ゼロに貢献 大阪の保護・譲渡団体に聞く


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大阪・高槻市で犬の保護・譲渡活動を行っている「犬の合宿所in高槻」(代表・伊藤順子さん)は、これまでに約600頭の犬を一般家庭に譲渡してきました。その大半は沖縄や鹿児島の離島出身の子たち。ボランティアさんの協力を得て、多くの犬の命を救ってきた活動についてお聞きしました。

【写真】「バゲージ・ボランティア」の協力で離島から伊丹空港へ

−−離島の犬を迎えるようになった経緯は?

伊藤 2012年に仲間と設立した譲渡会開催団体で譲渡会をしていると、「雑種を飼いたい」「保護犬を迎えたい」という人たちが多いのに、大阪には保護犬が少なかったんです。ニーズがあるのに…と思っていた頃、石垣島(沖縄)から犬を引き取った人と知り合ったり、本土からの移住者で、島の保健所(八重山保健所)の情報を発信している人がいることも分かりました。そこからですね。島では救えない命も、大阪へ来れば幸せになれるんじゃないかと。

−−石垣島からは何頭くらい迎えた?

伊藤 トータルで90頭近く引き取りましたが、間もなく「殺処分ゼロ」を達成したので、今は徳之島や奄美大島など鹿児島の離島が多くなりました。石垣島が殺処分ゼロになったときはうれしかったですね。人に対する怯えがひどい犬は、引き出させてもらえなかったのですが、そういう子も家庭犬になれるという実績を作ったら、引き出させてくれるようになりました。それまで掛かっていた処分費を、避妊・去勢手術や元の飼い主探しのための費用に回せるようになったので、保健所本来の姿に変わったと思います。

−−離島からとなると、輸送費だけでもかなり掛かるのでは?

伊藤 航空貨物便で送ると高額になるので、できるだけ「バゲージ・ボランティア」さんにお願いするようにしています。石垣-関空や鹿児島-伊丹の便に乗る方に、手荷物として犬のケージを運んでいただくんです。離島の場合、島から本土までの飛行機もあるのでタイミングが難しいですが、その区間だけ貨物にしたり、現地のボランティアさんに協力していただいたり。犬を運ぶためだけに鹿児島や徳之島まで行ってくださる方もいるのですが、それは申し訳ないですし、予定が変更になることもあるので、旅行や出張のついでに引き受けてくださるのがありがたいですね。

−−こちらは保護施設がないようですが、犬たちはどこで生活を?

伊藤 一緒に活動している岩井(文恵)さんのお宅で、多いときは10頭くらいお世話してもらっていた時期もありました。頭数が増えてからは「預かりボランティア」さんですね。里親さんが見つかるまでおうちで預かってもらい、家庭犬としての生活に慣れさせてもらうんです。先住犬がいると、その犬がいろいろ教えてくれるので助かります。今は二十数名の方が協力してくださっていますね。

−−里親さん探しは譲渡会で?

伊藤 譲渡会もありますし、個別にご連絡をいただいて「お見合い」してもらうこともあります。心掛けているのは、たくさんお話することです。譲渡前はもちろん、トライアル中も譲渡してからも、小まめに連絡してコミュニケーションを取り、犬の様子を確認しています。もっと簡単に譲渡するところもあると聞くので、「面倒くさい」と感じる方もいるかもしれませんが(苦笑)、犬に幸せになってもらうためですから。その分、譲渡後のご相談も多いように思います。頼っていただけるのはうれしいことですよね。

−−今後も離島の犬を中心に?

伊藤 都会では「保護犬を迎える」ことが文化として定着しつつあると思うので、体が続く限り、続けていきたいと思います。

 室内飼育が大半となった都市部と違い、離島では外飼いや放し飼いの犬もまだまだ多く、さらに避妊・去勢手術の必要性が十分に理解されていないこともあって、自然繁殖してしまうことが少なくありません。その結果、保健所への収容頭数が増え、殺処分という運命をたどる犬も…。離島から都市部に移動させて里親を探すという伊藤さんたちの発想が、多くの犬の命を救っています。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

■市民ボランティア「犬の合宿所in高槻」 http://inunogassyukusyo.seesaa.net/
posted by しっぽ@にゅうす at 00:51 | 行政 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シニア世代がペットを飼うときに考えたいことは? 成犬・成猫をもらい受ける選択も


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【住まいの処方銭】ペットのいる暮らし

 子供が巣立ってどうにも寂しい。前から考えていたペットを飼いたい。だが、年齢を考えると、最後まで世話できるのか…。

 シニア世代がペットを飼う際に、考えたいことは何だろう。愛玩動物飼養管理士の資格運営などを手がける日本愛玩動物協会(東京都新宿区)の東海林克彦会長に聞いた。

 最近では、生まれて数カ月のイヌやネコをペットショップで購入する例が少なくない。「種によって違いはありますが、近年、イヌなら15歳以上生きることが少なくありません。ネコはイヌよりも長生きする傾向にあります。子供の段階から飼うなら、将来を考えておく必要があります」

 小さいときから飼う場合、飼い主にも体力が必要だ。子イヌや子ネコは動きが鈍く、見ているだけでかわいい。だが3〜4歳くらいまでは、活動量が多く、室内でも活発に走り回る。相手をしていると疲れてしまう。

 そこで、東海林さんがシニアに提案するのは、大人になったペットを飼うことだ。「成犬や成猫は、トイレなどのしつけがされており、負担が減ります。運動量が多くなく、性格も落ち着いています。なかには、リタイアした盲導犬を飼う方もいます」

 大人になったイヌやネコといえば、以前の飼い主が手放した「保護犬」や「保護猫」を、譲渡会でもらい受ける方法がある。譲渡会は、行政や地域の動物愛護センター、民間のシェルターなどが実施している。インターネットで地域名と「ペット譲渡会」「動物愛護センター」などで検索しよう。飼い方なども詳しく教えてくれる。

 ここで「1度捨てられたのではなつかないのでは?」と思うが、「愛情を注いでいけば、十分なつく」そうだ。(不動産・住生活ライター 高田七穂)
posted by しっぽ@にゅうす at 00:50 | ペット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「都市化する社会の人と動物」(視点・論点)

NHK



麻布大学いのちの博物館 上席学芸員 高槻 成紀

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動物を研究してきたものとして、人と動物のことを考えてみたいと思います。

動物の話題といえばパンダのシャンシャンでしょうか。生まれた時から大の人気者で、中国へ返す日程が延長されたと報じられました。これは結構な話ですが、多くの人が認識していないことがあります。それはパンダは一体、どういう動物なのかということです。
動物は人間との関係でいえば、家畜とペットと野生動物の3つに分けることができます。家畜は生産動物とも呼ばれ、ウシやブタに代表される動物たちで、肉やミルクを提供する形で私たちの生活に役立っています。家畜の生活は人に管理されており、家畜化される前の原種が絶滅してしまったものもいます。ペットは可愛がられるという形で人の役に立っており、広く人の役に立つという意味で、また、生活を人に管理されるという意味で家畜と同じです。イヌは伝統的には番犬とか猟犬など実用的な働きをしてきましたが、今は家族のような存在になっています。家畜でもペットでもない動物は野生動物です。
 同じ動物でも、このように人間との関係として眺めると大きく性質が違うことがわかり、それによって我々が接すべき姿勢も違うはずです。そういう視点からいうと、パンダはどの動物群になるでしょう。家畜でないことはわかります。野生動物といえばライオンとかゾウなどが連想されますが、シャンシャンはそういう動物とは違うような気がします。ではペットでしょうか。可愛らしいし、白黒の模様も野生動物のイメージとは違います。それにのんびりとタイヤで遊んだり、昼寝をしていたりするので、その点でもペットかなと思います。しかしそれは正しくなく、パンダは紛れもない野生動物です。野生動物とは人間とは無関係に自分の力で生きることのできる動物であり、その環境で長い時間をかけて進化してきました。
 動物園を訪れる人たちはシャンシャンの可愛い面だけを見ますが、その感覚はペット、あるいはぬいぐるみを見るものです。しかし現実にはパンダは絶滅の危険がある野生動物なのです。パンダがなぜ絶滅しそうであるのか、今後どうなるかを考える人はほとんどいません。

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 可愛いとされるパンダの目玉模様を外してみると全然可愛くない顔になります。
これは私たちが外見に強く影響され、勝手にイメージを持つことを示しています。それでも、パンダは良いイメージだから問題は小さいといえます。かわいそうなのは悪いイメージを持たれている動物です。例えば、オオカミは欧米では長い間、悪魔のように毛嫌いされてきました。それはヨーロッパでは長い間、ヒツジを飼育する農業をしてきたからで、そのヒツジをオオカミが襲って殺すことがよくありました。

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おとなしいヒツジ、それも子羊が殺されたのを見た農民はオオカミに強い嫌悪感を持ち、それが悪魔のイメージとつながり、中世には恐ろしい動物として絵画に描かれています。
 ヨーロッパの価値観を持ち込んだアメリカへの入植者はオオカミを見つけると徹底的に殺しました。殺したオオカミの前で撮影した記念写真がたくさん残されています。
日本ではさほど嫌われた動物はいないようですが、コウモリが嫌いな人は多いし、哺乳類以外も考えれば、ヘビは怖がられて嫌われます。特定の動物ではなく、そもそも動物は気持ちが悪い、嫌いだという人は少なくありません。
最近私が電車に乗ってきたとき、車内にアゲハチョウが入ってきました。その時に女性が悲鳴をあげてパニックのようになりました。チョウがパタパタと飛んでいれば多少気にはなりますが、何も実害はありません。その時、私は「ああ、この人は生活の中で昆虫に接することがないのだな」と思いました。
 
このように、偏見によって特定の動物を嫌悪するのは良くないことですが、私にはそれ以上に気がかりなことがあります。それは無関心ということです。
私が調べてきたニホンジカは奈良公園のものがよく知られていて、のんびりと芝生で草を食べる動物というイメージですが、実際には各地で増えすぎて農林業被害だけでなく、山の森林に深刻な影響を及ぼすまでになっています。またイノシシも大きな農業被害を出しています。そのため、こうした動物は駆除されており、シカもイノシシも毎年60万頭もの膨大な数が駆除されています。しかし、多くの人はそのこと自体を知らないし、なぜ駆除しなければならないかも理解していません。都市に住む人が増える中で、動物の実態が捉えられなくなっているのです。「イタチごっこ」という言葉はありますが、イタチを見たことのある人がどれだけいるでしょう。有名な「故郷(ふるさと)」の歌は「ウサギ追いしかの山」で始まりますが、ノウサギを見たことのある人もとても少なくなりました。それだけ現代の日本社会が動物に接する機会を失っているということです。

半世紀にわたって動物を研究してきた私が感じるのは、どの生き物も懸命に生きているということです。絶滅に瀕している動物もいれば、増えすぎて人間との間に難しい問題を引き起こしている動物もいます。しかし、その動物自身が変化したのではありません。問題のほとんどは人間によって動物の生息環境が変化させられたことによるものです。そのことが明らかであるのに、都市住民が増える中でそのことが実感しにくくなっています。
そのことを象徴する意味で、私の好きな古今亭志ん生の噺の枕を紹介します。

「あれ、どうしたんだい。あのカニ、まっつぐ歩いてらぁ」
するとカニが
「ちょっと酔っちゃったもんで」

これがどっと受けるのですが、私はこの話を聞いて昭和の時代の人と動物の関係の空気のようなものを感じます。その時代、誰もがカニを見たことがあり、カニは横に歩くことを知っていました。子供も大人も路地で時間を過ごしたので、酔っ払いがフラフラと横歩きをするのも見たことでしょう。そういうことが前提にあるから志ん生の噺がどっと受けたわけです。しばらく前の日本では、カニだけでなく、さまざまな動物が身の回りにいて、人々はいつでもこういう動物に接して生きていました。そしてカニにはカニの、カエルにはカエルの事情があって、人間とは違う生き方をしている。人にとって意味のないこともそれぞれの動物にとっては大事なこともあるのだということを共有していました。思いやりというほどゆとりのあるものだったかどうかはわかりませんが、動物がいるからと大騒ぎをして徹底的に殺すということはなかったように思います。
冒頭のパンダに戻ると、私たちは動物の外見から勝手なイメージを持ち、メディアからの情報に影響されてステレオタイプに捉えがちです。そのことで、ある動物を熱愛する一方で、別の動物を嫌悪します。都市生活をしていれば動物に接することもなくなりますから、その傾向はますます強くなっています。そのため野生動物のことを知らず、無関心になっています。無知・無関心は偏見を生み、問題がさらに深刻になります。私はこのことがさらに進むことを心配しています。
 本来、動物を身近に感じて暮らしていた日本人が都市生活をするようになって無関心になり、偏見を持つようになりました。その傾向は都市化が進む中でさらに強くなるでしょう。その過程で、人と動物の関係を希薄にするのは望ましくないことです。私たちの社会はそのことを意識し、動物の実情を伝える努力をもっとしなければならないと思います。そして、子供たちに動物や自然のことを教える努力をもっとする必要があると思います。
posted by しっぽ@にゅうす at 00:49 | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする