TOCANA 気候変動の被害は我々人間よりも、野ざらしで生息している動物たちのほうが明らかに深刻だ。アニマルライツ、動物の権利をこれまで以上に手厚く保護しなくてはならないとの理念の下、米ハーバード・ロースクールで本格的な“動物弁護士”を養成するコースが登場している。
■ハーバード・ロースクールが“動物弁護士”を養成
米カリフォルニア州のバークレーやサンフランシスコ、ロサンゼルスなどの都市では、動物の毛皮製品の製造と販売が禁止されていて、このトレンドは米国内でますます広がりを見せるだろうといわれている。これは、より動物にやさしい環境づくりを推し進め、動物実験と動物への虐待行為を禁止しようとする動物福祉(Animal welfare)の考えを支持する動きと言える。
このような動物の権利という法律分野が昨今注目されており、2000年の時点では動物法のコースがある教育機関は全米で9つしかなかったものの、現在では167と急増していることからもわかる。
ハーバード・ロースクールが動物弁護士を養成へ! 気候変動、動物実験、虐待などから動物の権利をガチ保護!の画像1
「San Francisco Chronicle」の記事より
そしてこのタイミングで、ハーバード・ロースクール(ハーバード大学法科大学院)は本格的に“動物弁護士”を養成する新たな教育プログラム「Animal Law & Policy Clinic」を発足させることを発表している。
この新しい教育プログラムは、米国内およびインターナショナルなレベルで動物法の立法、訴訟、および政策分析を実践的に教え、学生にこの分野の広範な知識を提供するという。法学生たちは農業動物、野生動物、ペットなど動物たちの気候変動によるあらゆる形態の包括的な脅威を含む多くの問題に取り組むとしている。ハーバード・ロースクールは、動物保護運動の未来への道をリードしていると自負している。
「同プログラムは卒業生を訓練し、動物保護分野でのキャリアに着手し、動物保護運動に有益な影響力のある訴訟と政策分析を行い、動物の法律と政策に関する多くの差し迫った問題に対して国際的にも有効なプラットフォームを提供します」と同プログラムを主導する クリステン・スティルト教授は語る。
一方で「これは、法学部の学生とロースクールコミュニティ全体にとって本当にスリリングなニュースです」と話すのはハーバード・ロースクールの環境法学者、リチャード・ラザルス教授だ。
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「Big Think」の記事より
また食品システム政策からアニマルライツを考えるコースも設けられている。講師陣の一員であるニコル・ネゴウェッティ氏は、産業用の家畜が動物福祉に及ぼす影響について、教育と擁護に尽力してきた専門家だ。
「本プログラムは、人間と動物双方の利益のために、回復力に優れ、健康的で、公正な食物システムを達成するための影響力の高い法的戦略を特定・追求する際に、新たな世代の学生たちに優れたトレーニングを提供することになります」(ニコル・ネゴウェッティ氏)
新たに設立される動物法と動物政策の教育プログラムは、ハーバード・ロースクールならではの幅広く豊かな専門知識と伝統を受け継ぐコースであるといえそうだ。
■気候変動の最大の被害者は野生動物
アニマルライツで昨今話題に上っているのは、気候変動が野生動物に及ぼす脅威である。
講師のジョナサン・ラボーン氏は現在世界で最も脆弱なグループは野生動物であり、特に発展途上国の産業によって自然破壊が加速している地域の動物であるとしている。
「これらの国々での野生動物の搾取と殺戮に関して、私たちが特に気候変動の観点から注視しているのは、それらが人々、コミュニティ、文化の搾取と殺戮と深く関わっている点です。野生生物に関する法的問題を研究することにより、私たち自身の社会的および法的問題について多くを学ぶことができるのです」(ジョナサン・ラボーン氏)
ラボーン氏は、過去にも野生動物法に関する講義を受け持っていた。彼は弁護士たちに動物法を世界全体の前向きな変化に影響を与えるための出発点となるように促したいと考えている。
「野生生物法や気候変動のようなほかの集団的問題の鍵となるのは、どこで変化を起こすことができるかを見つけ出し、それらをより効果的にするためにどのように制度を変えるかについて話すことです」(ジョナサン・ラボーン氏)
また、アメリカのハンバーガーチェーン「バーガーキング」は今年から一部の店舗で植物を原料とした“人工肉ハンバーガー”を提供していて話題だが、これはアニマルライツと動物保護の意識の高まりを示す現象であるということだ。
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「KJCT8」の記事より
こうした動きは毛皮製品の製造販売の禁止を含め、より動物にやさしい環境づくりが一般化するように推し進め、動物実験と残虐行為を禁止しようとする動物福祉法のムーブメントに乗ったものであるという。このような動きが合体しはじめると、このハーバードの動物法と動物政策に関する一連の講座が変化への動きの最前線になるということだ。
変化する社会の中で、動物の権利を深く考えて保護することが、ひいては人間社会の“生きやすさ”にもつながるのだとすれば決して“他人事”ではない。そして目下の気候変動が人類のせいだとすれば、野生動物からすれば我々は重大な加害者ということになってしまうのだろう。
参考:「Big Think」、ほか
文=仲田しんじ
posted by しっぽ@にゅうす at 09:17
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