【人とペットの赤い糸】
赤ちゃんや幼児が家にあるさまざまな物を口に入れてしまうので、親や家族は注意が必要だが、一緒に暮らす大切なパートナーであるペットも同様だ。ペットたちも人の目が届かないうちに、いろいろな物を食べてしまう。家の中にはペットが食べると危険な物がたくさんある。
食べてはいけない物を食べてしまうことを異物誤飲という。好奇心旺盛な子犬や子猫に多いが成犬や成猫、高齢犬や高齢猫にも時にはみられる。
アイペット損害保険会社の昨年12月の調査によると、飼育している犬が異物誤飲をしてしまったことが「ある」と回答した飼い主は60・3%にも上った。
異物によっては、ペットが吐き出すことができなかったり、便として出てこなかったりする場合がある。大きさや形状によって、体内に留まることがあり、飼い主が誤飲に気づかないケースが多い。主な症状として嘔吐(おうと)や下痢、元気がなくなる、吐血、食欲不振、咳き込むなどを起こす場合がある。
挿絵にあるストッキング▽くつ下▽またたびの実▽梅干しなどの種▽骨▽つまようじ▽竹串▽ゴム▽毛糸▽つり針▽調味料のフタ▽タオル▽石▽アイスクリームのヘラ−は実際に横浜のある動物病院で、食道、胃や腸の中で発見された物だ。ゴムといっても注意が必要。色とりどりのゴムが、ぐるぐるにからまって胃や十二指腸から出てきたケースもある。
竹串の誤飲は異物の中でも多く認められ、先端がとがっているため、消化管穿孔(せんこう)などを起こしたり、食道に穴をあけ、生命にかかわる恐れがある。また、球状や立体などの異物は腸の中で詰まりやすく、腸閉塞(へいそく)を起こし生命のリスクにつながる。異物誤飲と分かったり、その恐れがあると判断した場合は、飼い主が吐かせることは難しいので、すぐに動物病院での診察を受けることが大切だ。
動物病院での一般的な診察は、血液検査やエコー検査、バリウムを飲ませ、レントゲンを撮って異物が食道、胃や十二指腸にないかを確認する。異物がある場合、まずは催吐処置を行う。催吐処置で吐かない場合には、大きさや形状などから、麻酔をかけて内視鏡手術や開腹手術がおこなわれる。異物誤飲は、繰り返しやすい疾患でもあり、胃を繰り返し切開していると、臓器が癒着する可能性もある。
異物誤飲の主な対策としては、(1)危険な物をペットがジャンプしても届かない場所に移動(2)掃除を徹底する(3)ゴミ箱はすぐに開けられないものにする(4)棚や引き出しに危険な物は収容する(5)散歩の際、拾い食いしないようにする(6)予防が大切なので、拾い食いをしないしつけを行う−などがある。
動物は思いがけない物を食べてしまうことがある。読者の皆さまもこんな物を食べてしまったという場合があったら、ぜひ教えていただきたい。
飼い主として、日常気をつけてあげることが、一緒に暮らす大切なパートナーであるペットへの思いやりであり、ペットの生命を守ることになる。
■越村義雄(こしむら・よしお) 一般社団法人「人とペットの幸せ創造協会」会長。同ペットフード協会名誉会長。一般財団法人日本ヘルスケア協会理事、「ペットとの共生によるヘルスケア普及推進部会」部会長など。