◇犬と飼い主、ボランティア 独自に試験・認定のNPOも
高島市の朽木ゴルフ倶楽部で先日、災害救助犬の雪山訓練があったね。
どんな訓練をしているの?
記者 NPO法人災害救助犬ネットワーク主催の冬季合宿で、
会員22人と飼い犬31頭が参加しました。
同NPOは会員97人を擁する数少ない全国規模の民間団体です。
独自に毎年試験を行い、1月現在の災害救助犬認定数は52頭です。
認定の期限は3年間で、再受験し合格しないと失効します。
使役犬として捜索能力の維持と、今後認定を受ける犬をしつけるために、
訓練を年3回実施しているそうです。
Q 犬の“受験勉強”なんだね。難しいのかな?
A 合宿に参加した同NPOの津田光(あきら)事務局長(60)らに聞きました。
試験では、山野に隠れた何人もの遭難者役を時間内にどれだけ発見できるかが試されます。
建物倒壊現場に見立てたがれきの山から人間を発見する試験もあるそうです。
犬は買い主らのハンドラー(操作者)とコンビで受験します。
認定率は半分ほどとか。三重県から参加した男性は、飼い犬をまず訓練士と組んで合格させ、
次は自らとのコンビで合格を目指していました。
Q 警察犬の訓練と似ているの?
A かなり違うようです。警察犬は、主に犯行現場の遺留品や浮かんだ容疑者の持ち物などから、
特定の臭いを追跡するよう訓練されます。
一方、災害救助犬は主に、不特定多数の人間を災害現場などで捜し出すのが任務です。
人間の臭いをかぎ分けて遭難者の有無を判断したり、閉じ込められたりしている場所を突き止めます。
人の手掛かりとなる物音にも反応できるよう、土管の中に人が入って音を出し、
犬の注意を促す訓練も行うそうです。
Q どこが出動要請するの?
A 基本は遭難者の家族らからの依頼です。
警察や消防は人の生存限界とされる72時間ほどで捜索を打ち切ることが多く、
その後で依頼が来るそうです。同NPOでは、山菜採りに出て帰宅しない、など里山での道迷いが
大半で年間10件ほど。11年5月には災害時に被災者を捜索する協定を京都府と締結。
三重、岩手、青森計4県に広がっています。
民間の災害救助犬活動が認められ、行政の対策に組み込まれてきているといえます。
Q 阪神大震災や東日本大震災などでも災害救助犬が活躍したね。
A はい。でも出動は無報酬のボランティアで、個別依頼の捜索も無償だそうです。
同NPOでは、出動先へのガソリン代として1キロメートルあたり10円を補助しているに過ぎません。
犬と買い主は自費で活動します。今回の合宿も自費参加。
団体の運営は会員の会費と個人や企業などからの寄付で成り立っているそうで、
獣医やペットショップなどに募金箱を置くなどして協力を呼びかけています。
Q 知らなかった。大変なんだね。
A 合宿の参加者に聞くと、このボランティア精神は
「犬好きが、何か社会の役に立ちたい」という気持ちで支えられているようです。
同NPOのホームページには「救えるはずの命を救うために」とうたわれています。
<回答・塚原和俊(高島通信部)>