10匹を保護するより 10人が捨てなければ
愛犬の「たく」を抱き上げる安松さん

■飼育放棄の現状
よくほえる、引っ越す、子犬が生まれた−。ほかに高齢の飼い主が入院、死亡するケースがあれば、「旅行に出掛けるので」という身勝手な理由など、飼育放棄により動物が保健所へ送られてくる事例は後を絶たない。
安松さんが活動を始めたのは2006年ごろ。環境省の統計によると、06年度は犬猫合わせて年間34万匹が殺処分されており、11年度には半減したものの、依然17万匹がその対象となっている。
保護期限が来れば次々と処分される現実を知ったことをきっかけに、「ただの犬好きの主婦」ながら「少しでも助けたい」といういちずな思いだった。ブリーダーの規制がなく、人気犬種は次々と繁殖されることから「保健所はペットブームの縮図。簡単に買える分、簡単に捨てる人が増えたのでは」と指摘する。
■修行のよう
犬ともらい手が“お見合い”し、1〜2週間のトライアルを経て、お互いに納得してから正式に譲渡。「遠くでも幸せにしてくれる人なら」と、近畿圏内外を問わず引き取りの相談に応える。
平均して「5歳までの小型犬には3カ月でいいお話がある」という一方で、ともに過ごせる時間が短く、病気になるリスクも高い10歳以上になると「1件のご縁をひたすら待つ」そうだ。
現在、自宅では犬5匹を保護しており、1フロア全体がペットの住まいになっている。最も多い時期にはグループで20匹程度、自宅だけでも7、8匹が生活するときもある。長ければ散歩だけで5時間を要し、引っ張りの強い大型犬を連れ歩くのは一苦労。冬季はその厳しい寒さから「修行のようだ」と苦笑する。
■入り口をふさぐ
ブログやメールを通じて広く情報を公開し、散歩中や自宅近くの公園で開設されるドッグランでは飼育放棄や迷子に関する情報を共有。“ワンちゃん仲間”との情報交換を怠らない。
しかし、個人宅では限界がある。「処分が迫っている子を救うことは大事だが、出口で受けるより入り口をふさぐことが重要。10匹を保護するより、10人が捨てなければ」と啓発に向け、語気を強める。