象牙取引は企業と消費者が戦うべき「生態学的、道徳的な災害」であると、2月23日付「Financial Times」誌の共同論評の中で、ヒラリー・ローダム・クリントン(Hillary Rodham Clinton)氏と娘のチェルシー・クリントン(Chelsea Clinton)氏は論じた。
前米国国務長官のヒラリー氏は、野生動物を生息地で保護するための世界的な戦略と、取引される野生動物製 品の需要の枯渇を呼びかけており、闇市場取引に対する声高な対抗勢力となっている。
「一昨年だけで、推定3万5千頭のゾウと1千頭のサイが殺された。このスピードでいくと、アフリカ大陸からゾウとサイの両方が絶滅するだろう」と、クリントン両氏は述べた。チェルシー氏は、さまざまな国際的課題に取り組む非営利クリントン財団の副会長を務める。
「われわれは、米国内における象牙販売の全面禁止を支持する。1989年に合意された国際禁止条例は、かつての 大量殺戮に歯止めをかけることに成功した。しかし、時間の経過と共に、例外が国際的な禁止を骨抜きにし、現在では不法な象牙がいくつもの法の抜け穴をすり抜けて日常的に売買され、不正業者へと渡っている。そのような抜け穴は閉ざされるべきで、象牙製品を取引し続ける国に対し制裁を課す必要がある」。
さらにクリントン両氏は、アフリカゾウ象牙の商業的販売を「ほぼ全面的に禁止する」ためにオバマ政権が最近策定した象牙取引に関する規制を高く評価した。
この連邦政府の動きは、現在ニューヨーク州などいくつかの州で検討されている象牙取引禁止に向けての勢いを補完するものだ。最近では2月21日のチャド共和国を例として、多くの国で象牙の備蓄が処分されつつある。
主要条項の中で、新しい象牙規制はアフリカゾウ象牙の商業的輸入を禁じている。つまり、今後アンティークの象牙を商業的な目的で輸入ことが違法となる。
「最終的に、アフリカゾウの救済は消費者たちにかかっている」とクリントン両氏は訴える。
例えば、「小売業者は象牙商品の販売をやめること。そして、この儲かる違法取引によって腐敗した政府関係者や機関に不正行為をやめさせる必要がある」。
「また消費者として、船舶、航空機、トラックを利用した象牙、サイの角、および野生動物製品の輸送を法執行機関が妨げる手助けをするよう企業に促す必要がある。金融機関は、違法な取引を追跡し、資産を凍結して違法な売買から得られた利益を押収しなければならない」。
小さくても人々にできることがある。米国郵便公社は、「Save Vanishing Species(消えゆく種の保全)」切手を販売し、250万ドル(およそ2億5千万円)もの資金を集めた。
「共に戦うことによってのみ、われわれはこの危機を乗り越えて、不法取引とテロとの結びつきを破壊できる。そして素晴らしい生物たちは、今後何世代にもわたって地球上を歩くことができるだろう」とクリントン両氏は述べた。
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