動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2014年05月10日

「犬税」導入問題の核心…自治体VSイヌの放置糞、「住環境」をどう守るか

YAHOOニュース


道端に転がるイヌの糞(ふん)の処分を増税で賄うべきか−。忠犬をたたえる「犬鳴山伝説」が残る大阪府泉佐野市で「犬税」導入の是非をめぐる議論が始まった。路上にほったらかしにされたペットの糞に悩む同市が打ち出した奇策だったが、話題になって以降、放置件数が減る現象も起きている。諮問を受けた「犬税検討委員会」の委員からは「動物愛護税にしたらどうか」といった意見が浮上。町内会による自主的な解決を望む意向も市側にはある。海外からの空の玄関口となる関西空港のお膝元だけで、捨て置けないイヌの糞問題。「犬税」の行方は果たして…

■おしゃれエリアなのに糞害の警戒地点

 「りんくうアウトレット近辺と大緑地帯、空港連絡道路の側道の歩道が特に多いです」。犬税検討委で、放置糞の多いエリアが、関西国際空港から橋を渡った対岸に位置する「りんくうタウン」周辺であることを市が明らかにした。

 ここは、海外の観光客が立ち寄る、まさに空の玄関口。西日本最大級のアウトレットモールが連なり、巨大な観覧車がそびえるレジャースポットだ。飛行機の待ち時間に海外からの観光客も訪れる。

 ロート製薬は医療ツーリズムの拠点にするために用地を購入。将来的には外国人向けの高度医療を提供するつもりだ。海岸から見る大阪湾が「日本の夕日百選」に選ばれた景勝地で、ビーチも整備されている。

 そんな、大阪を、いや関西を代表する、おしゃれな街がイヌの糞害“警戒エリア”だったとは…。

 りんくうタウンの緑地の一角には、こんな看板が立つ。

 水色の潤んだ瞳で、足を上げて、おしっこをするかわいいイヌ。そのすぐ横には、匂い立つような湯気をあげるウンチのイラスト。「マナーを守ろう 飼い主の責任です」とのスローガンと真っ赤な×印が描かれている。「衆人環視がなく、整備された道がある」(泉佐野市環境衛生課)のが放置糞を招きやすい条件と分析する。

 今年開港20周年を迎えた関空。政府が訪日外国人の2000万人目標を掲げる中、りんくうタウンの美観の維持は、軽視できない課題だ。

 イヌの放置糞を徹底的になくすためには、財源がたくさんいる。それならばと、清掃や見回り、啓発活動などイヌの糞対策だけに充てる法定外目的税として浮上したのが「犬税」だった。年間1匹につき、2000円徴収する案が軸だ。

■モラルハザードの懸念も

 だが、いざ議論をすれば、実現はそう簡単ではないことも分かってきた。

 このほど公開された2月末の犬税検討委の初会合の議事録からは、問題の奥深さが浮き彫りになってくる。

 「きちんと回収している飼い主にまで税をかけるということにも不公平を感じる。もっと検討が必要」

 大阪府立大学の獣医臨床学獣医内科教授の笹井和美氏はこう述べ、慎重な対応を求めた。

 犬税が導入されれば、飼い主が課税対象になる見通しだ。そうすると、糞をかたづけなかったマナーの悪い飼い主らのために、きちんと対応している飼い主が回収費を払ってやる構図になってしまう。最も心配されるのは、税金を払っているのだから、糞をほったらかしにしていいという感覚がまかり通るモラルハザードだ。逆に放置糞を増やしかねない。

 しかも、課税根拠となるイヌを飼っている世帯の把握が実は難しい。これは、どこの自治体も似たような状況とみられる。

 泉佐野市の飼いイヌの登録件数は、毎年5200〜5400匹だが、「申請による数字しかなく、全頭の想定はできかねる」(保健センター)のが実態だ。驚くべきことに、狂犬病予防接種率は市の把握では60%程度。残り4割はほかの市で受けた可能性はあるが、接種していない恐れもあるという。「(原則)府営住宅はペットは禁止されているが、飼っている」(泉佐野市町会連合会会長)との発言があったように、全容把握のハードルは高い。りんくうタウンの緑地には、周辺の自治体から車で乗り付けてイヌを散歩させる人も多い。

■大蛇に死しても噛みついた忠犬

 「犬鳴山の伝説もありますし、動物愛護を売りにしたらどうか」

 公募で選ばれた市民委員はこう提案。イヌと人間の結びつきを強める動物愛護施設などに税金を使うという考えだ。

 犬鳴山は泉佐野市にある修験道の霊場として知られるところ。天徳年間(957〜961年)に猟師がシカを追っていたとき、連れていた愛犬がうるさく吠えて、獲物を逃がしてしまったことに激怒。イヌの首をはねてしまった。ところがイヌの首が跳ね上がり、猟師をまさにのみ込もうとしていた大蛇に噛みつき、息絶えたという。イヌが吠えたのは、自分に危機を知らせるためだったのか…。それを知った猟師は、愛犬を供養し、悔いて修行者になったとの伝説がある。

 この提案には、「動物愛護を売りにする方がアピールしやすい」(別の公募委員)との声があがった一方、「税の目的を動物愛護にした場合、なぜイヌだけを対象に税を?ということになる」(笹井氏)との疑問も呈された。

■目を光らせる府警OB

 ただ犬税の議論は、早速効果をもたらしているようだ。

 平成25年1月に調査した際の市内のイヌの糞の放置件数は1736カ所だったが、今年1月は前年同月の半分以下の688カ所にまで減った。24年6月に千代松大耕市長が表明した犬税の導入検討を契機に、泉佐野市の対策が全国で知られるようになり、抑止効果をもたらした可能性がある。

 放置糞のそばに、市の専従員がイエローカードを置いて回収を促す活動を25年2月にスタート。同年11月には、環境美化推進条例に基づき、イヌの糞を放置した違反者から全国で初めて5千円の過料をとった。大阪府警OBの巡視員が糞の放置常習者を発見。是正命令をかけたが、そのまま車に乗り込もうとしたため、過料に踏み切ったという。

■糞害にみえる地縁の脆弱化

 放置糞に対して強面の姿勢を貫く泉佐野市。しかし描いている理想像は少し違う。

 「最終的には、自主的なボランティアティア活動として、放置糞の問題に取り組んでほしいと思っています」。市の担当者はこう明かす。マナー向上は、住民参加による啓発が一番のカギだからだ。

 イメージしているのは兵庫県高砂市のケースだ。平成21年から地域の自治会が中心にイエローカード作戦を展開。昨年度も45団体・個人からの協力の申し出があったという。ホームページでは、イエローカードの使い方やポスターの作り方などを掲載し、自治会などに活用を促している。

 課題は、主体となる自治会の組織率などが低下し、地縁が薄れていること。泉佐野市でもベッドタウン化が進み、近所つきあいに距離が出てきた。協力を得るのは、地域住民のつながりを取り戻すことが大切だ。

 道に放置された飼い犬の糞で悩んでいるのは、決して泉佐野市だけではない。

 大阪市阿倍野区の高級住宅街や世界的観光地の京都市でさえ、イヌの糞害はある。京都市は昨年末、イヌやネコの糞尿の投棄が後をを絶たないとして、糞害防止条例の検討も視野に入れた局横断のプロジェクトチームを立ち上げた。

 少子化と財政悪化の中で、地域の住環境をこれからどう守っていくのか?。泉佐野市のイヌの糞との格闘は、そんな日本が抱える難題を象徴しているのかもしれない。


タグ:犬税
posted by しっぽ@にゅうす at 05:00 | 行政 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする