「エシカルファッション」が主流に?
アメリカに本拠地を置く世界最大の動物愛護団体、PETA(People for the Ethical Treatment of Animals.”動物の倫理的扱いを求める人々の会”)のモットーは、”Animals are not ours.”「動物は、人間のために存在しているのではない」ということです。
ファッション業界で、PETAの意思に賛同しているメーカーはたくさんあります。
例えば『ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)』や、『ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)』、ファストファッションの『Next』『 ASOS』『New Look』『 Topshop』など。
これらのメーカーからは、フェイクのパテントやスエード、紙でできているのに光沢があって革に見えるバッグや、アンゴラ(ウサギの一種)の毛を使用しなくても上品に見え、そのうえ機能性も兼ね備えたニットや、コートなどが発売され、好評を得ています。
これらのファッションは一般に、”エシカルファッション(ethical fashion.道徳的なファッション)”と呼ばれ、2000年台前半からヨーロッパなどを中心に広まり、日本でもで4〜5年前に概念が輸入されたことで、ファッションの重要キーワードのひとつとなりました。
なんと、リアルファーを使わない製品ばかりを作っている、その名も『アンリアルファー(UNREAL FUR)』というオーストラリアのメーカーもあるくらいです。
概念自体は、20年ほど前からあります
このエシカルファッションはもちろん、少し前に話題になったロハス(LOHAS)や、スローフード、商品のトレーサビリティ(追跡可能性)、地産地消、フェアトレード、それに 2006年位からカリフォルニアで始まった、身近な場所で作られた食品を購入・消費する”locavorism”などに、深い結びつきがあります。
これは、商品の価格破壊に大きく貢献してきた要素でもあるのですが、各メーカー(GAPなどのSPA含む)の工場がある途上国での児童労働など、労働環境の悪さを問題視する風潮も『エシカルファッション』の台頭を後押ししました。
あっちをたてるとこちらが立たず?エシカルファッションの限界
若手作家でジャーナリスト;EMILY MATCHAR氏のニューヨークタイムズ紙への寄稿は、非常に示唆的です。
氏は、今や「エシカルファッションを購入すること」そのものが、「自分は社会の持続可能性や正義に寄与しています」という意思の表明手段となっている。と指摘し、個人の自由意思によって作り出された市場こそが、すべてに超越すると考える新自由主義的者(ネオリベ)の典型的な主張である
「あなたの個人的な選択が、社会を変える」という代表的な例になっており、言葉自体はとても聞こえは良いが、実際にはうまくいかないことの方が多い。というのです。
例えば 「獣害」として、殺処分を受けている動物たちをただ焼却処分することが、果たして道徳的と言えるのか。
また、アンゴラを使わない化学合成繊維で出来たニットを買ったとして、そのことで、皮革産業の技術者(アルチザン)や、工場労働者の仕事はなくなって収入を絶たれ、ついには伝統が失われます。
また、多くの化学合成繊維には石油が使用されていることから、工場からは日々多量の有毒物質が垂れ流されており、長期にわたって身につけていると アレルギーや不妊、発がんなども懸念されます。
市場経済にすべてを委ねていたら、どんどん”不都合な事実”が噴出するわけです。
理想的な、エシカルファッションとは
エシカルファッションブランドとして有名な『Victoria Road』創立者で、財務責任者のMegan Brosterman氏がフィントンポスト紙に寄稿したところによると、エシカルファッションで利益を得るのは「生産過程すべてに関わる人」でなければなりません。
「道徳的」というのは、ファッション業界に関わる全ての人々ーデザイナー、技術者、お針子、工場労働者までーが等しく利益を享受できている状態を指します。
そして、製品の製造過程で いかなる有害物質もその排出量を減らせている状態を「エコ」と呼びます。
流行に乗せられることなく、消費者が自分で判断を
PETAは毎年『PETA FASHION AWARDS』を開催し、エシカルでファッショナブルな商品を発信するメーカーを表彰しています。
また、歴史と権威ある婦人雑誌『VOGUE』などに対し、リアルファー、レザーを使った洋服を永遠に紙面から排除することを求めています。
ただ、筆者としては、これは報道の自由を侵害しかねない行為であり、これに屈せず影響力あるメディアには中立でいてもらいたいと思います。
上記の「消費者の個人的な選択が社会を変える」という言葉通り、多くのメーカーはエシカルファッションにシフトしてきており、そのこと自体は利益追求組織である企業の宿命です。
しかし、それが本当に道徳的なのか、市場を決定するキープレイヤーである消費者自身が今一度問うてみるべきなのではないでしょうか。
〈参照〉
#FairTuesday and the Ethical Fashion Movement: Can They Make a Difference?-huffingtonpost.com
Sorry, Etsy. That Handmade Scarf Won’t Save the World.-nytimes.com
The limits of locavorism-theweek.com
PETA UK Vegan Fashion Awards 2014-peta.org.uk
PETA Celebrates Animal-Friendly Designers-vogue.co.uk