動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2016年04月23日

油断できない!狂犬病 国立感染症研究所の専門家が岡山で講演

山陽新聞


日本国内では1957年以降発生していないが、世界では年間5万5000人以上が狂犬病で死亡している。岡山県獣医師会公衆衛生部会(岡山市中区桜橋)はこのほど、狂犬病の病態や発生時の適切な対応などを学ぶ講習会を岡山市内で開催。研究の第一人者で、国内発生時の対応ガイドライン作成にも関わっている国立感染症研究所(東京都)の井上智・獣医科学部第二室長が、県内自治体で公衆衛生を担当する職員や開業獣医師ら約40人を前に講演した。要旨を紹介する。

発生見過ごす恐れも

 狂犬病対策は人の健康被害を防ぐために行うのが大前提。感染源の動物を管理する一般の飼育者や動物取扱業者、医療・獣医療関係者、自治体や国の動物・公衆衛生担当者など、幅広い分野に関わる問題だ。

 狂犬病は古来知られるウイルス性疾患。知られている通り、発症した動物にかまれることで感染する。インフルエンザのように爆発的に広がらず、ヒトからヒトへの感染は極めてまれだ。しかし発症すればヒトも動物もほぼ100%死亡する。

 かまれた傷口からウイルスが全身の神経組織に広がり、脳の中枢神経を破壊。発症まで1〜3カ月と潜伏期が長いのに、発症まではウイルスも抗体も検出できず、感染の有無を調べるのが難しい。気付いた時には死の宣告ということもある。

 有効な治療法はなく、発症させないことが大事。狂犬病が疑われる動物にかまれたら、速やかに決められた間隔で5回のワクチン接種をすれば、ヒトは発症を阻止できる。流行地域に行く前に3回の予防接種をしておけば、かまれても2回接種で済むが、そもそも犬など感染源となる動物にかまれないことが大切だ。

 狂犬病は鑑別が非常に重要だが、国内では60年近く発生がないため多くの医師や獣医師が狂犬病に触れた経験がなく、「清浄国だから大丈夫」と思っていると見過ごす可能性がある。2006年、フィリピンから帰国後に男性2人が狂犬病を発症し、36年ぶりに輸入症例が出た際は、興奮や恐水・恐風症状など特徴的な症状があったにもかかわらず、しばらくは神経疾患やアルコール・薬物中毒などが疑われた。

ペットの管理徹底を

 狂犬病が発生した場合、潜伏期が長いため数カ月前にさかのぼり原因を特定しなければならない。感染源の動物は何か。国内感染か輸入か。日本に狂犬病がないという前提に立てば、どの流行地域から国内に入ってきたのか。結果によって対策は全く変わってくる。

 ヒトの狂犬病の感染源は99%が犬。狂犬病はアライグマやキツネ、スカンクなど野生動物にも多く流行しているが、飼い犬が野生動物にかまれて発症するケースは多く、身近なペットの管理が大切。06年の輸入症例は飼い犬にかまれ発症している。

 国は、国内発生時の対応ガイドラインを作成し、各自治体に通知。患者や動物の発見、行政への報告、確定診断した後の感染拡大防止対策など終息までの流れを示している。

 国は自治体ごとに対応マニュアル作成を求めているが、実施状況には温度差がある。既に机上訓練を実施している自治体もあるが、最良の結果(陰性)を想定している場合が多い。最悪のシナリオを想定し、マニュアルがなくてもまずは一度訓練してほしい。ヒト用ワクチンの備蓄も検討しておくべき。06年の輸入事例の際は、終息までに国内のヒト用ワクチンは全てなくなってしまった。

 日本は清浄国と言われているが、科学的根拠より推測に基づく部分も多く、実は「発生はないらしい」としかいえない状況。日本と同様、半世紀以上発生がなかった台湾も、13年に野生のイタチアナグマに流行していたことが判明し、一夜明けたら清浄地域ではなくなっていた。日本も本当に発生がないと断定できるのか。国は現在、疑い事例は確実に検査・鑑別し、「清浄国」の科学的根拠を集積できるよう、各地の衛生研究所や動物愛護センターなどを中心に、検査態勢整備を進めている。

 狂犬病を防ぐには、一般の人にも疾患の危険性や予防接種の大切さを理解してもらうことが大切。子ども世代から啓発していかねば。疑いがある野生動物やペットの情報が行政に寄せられるよう、平時から獣医療関係者や市民らと関係を密にしておくことも重要だ。

 ◇ ◆ ◇

<4―6月は予防注射月間>

飼い犬 必ず接種を 「済票」装着も義務

 狂犬病に備える上で大切なのが、飼い犬に狂犬病予防接種を受けさせることだ。毎年4―6月の狂犬病予防注射月間中には、自治体が公共施設などを会場に行う集団接種と、動物病院で行う個別接種がある。

 畜犬登録をしている飼い主に案内はがきが届くので、都合の良い会場・病院へ。獣医師の問診を受けた後、予防接種を受けさせる。未登録犬は登録も行える。基本的には会場や病院でアルミやステンレス製の「狂犬病予防接種注射済票」が交付される。済票は、鑑札とともに必ず犬に身に付けさせることが狂犬病予防法によって義務付けられている。

 注射済票が交付できない会場や動物病院で接種を受けた場合、紙の「注射済証」が発行されるが、これだけでは手続き終了とは見なされない。必ず市町村の窓口に出向き、注射済票の交付を受ける。

 世界保健機関(WHO)が掲げる、人獣共通感染症のまん延防止の目安は「予防注射の接種率70%」。日本は2014年度で71.6%と名目上はクリアしているが、畜犬登録自体が100%ではなく、実態を表しているかは疑問符が付く。岡山県はさらに59.2%と全国でも低い水準で、万一県内で発生した場合は非常に危険だ。

 もし発生した場合、岡山県はあらかじめ定めた対策マニュアルに沿ってまん延防止を図ることとしている。狂犬病が疑われる犬の隔離・検査と並行し、期間を定めて該当区域内の全ての犬の係留を命令。場合によっては犬の移動制限、係留されていない犬の捕獲、臨時の予防接種を行うことなどを定めている。
(2016年04月18日 10時46分 更新)


posted by しっぽ@にゅうす at 08:05 | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする