飼い主に断り、ゆっくり触る 犬との接し方の初歩を聞く
井立さんと市民を癒やす職犬ココ=犬山市の犬山動物総合医療センターで
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幼いころに散歩中の犬にかまれ、嫌いな時期が長く続いたが、今では自分が犬の嫌がることをしたのかもしれないと反省している。犬と人間は一万数千年以上前からの友人とされる。これから犬と仲良くなりたい人のために、犬山動物総合医療センター(犬山市羽黒)の獣医師井立由起子さん(43)に、接し方の初歩を聞いた。
全国で唯一、自治体名に「犬」が付くことにちなみ、市は二〇〇二年から「職犬」として犬に辞令を出している。四代目に選ばれたのは、同センターで飼っているラブラドルレトリバーのセラピー犬「ココ」(雌、七歳)。井立さんや看護師らと市内の保育園や福祉施設を訪れ、利用者を笑顔にしている。
井立さんによると、犬は本能的に優しい成人女性を好み、活発で物の扱い方が荒い男児、大柄な人、帽子をかぶったり腰に何かを携えたりした人を警戒する。また、日本犬は長時間触られるのが苦手だ。「遺伝子を操作されていない古いタイプで、性格も日本人的」と話す。
最近では「番犬として留守をさせるより、家族として一緒に出掛けたい」と、人間の社会になじむようにしつける飼い主が増えているという。とはいえ、犬がされてうれしいこと、嫌なことは変わらない。
散歩中の犬に会ったときは触れ合うチャンスだ。ただ急に触らず、先に飼い主に断ることが必要だ。飼い主であれば、家族以外の人が触っても大丈夫かどうかが分かる。動く物を追うのも犬の習性なので、走らずにゆっくり、大声を出さずに振る舞うと落ち着いて接することができる。
犬の頭上から手を出すのは避けたい。「犬がにおいをかごうと上を向くため、人が驚いて急に手を引くとかみついてしまう場合があります」と井立さん。脚や足先、しっぽ、耳を触られるのも、とても嫌がる。
慣れているココでも足先を触られると嫌がる=犬山市の犬山動物総合医療センターで
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犬から寄ってきて、手のにおいをかいでくるのは警戒が薄らぎ、関心を持ってくれた証し。後頭部から首の横、喉の辺りをなでると距離が縮まり、腹を見せてくるときは胸の辺りをなでれば喜ぶ。
「幸せホルモン」と呼ばれ、母親が授乳する際に分泌されるオキシトシンは、犬と見つめ合うときにも出るとの研究報告もあるそうだ。井立さんは「絆を強めるほど、より深いコミュニケーションが取れ、幸せな気持ちになれる」と、犬との交流を勧める。
◆極意を知る
・犬は成人女性を好み、男児や大柄な人、帽子をかぶったり腰に何かを着けたりした人を警戒する
・飼い主は家族以外の人が触っても大丈夫かどうかが分かるので、事前に了解を得る
・犬の頭上から手を出すのは避けたい。しっぽ、足先、耳を触られるのも嫌がる
・後頭部から首の横、喉、胸の辺りをなでると喜ぶ
・犬と見つめ合うと、幸せな気分になれる。「幸せホルモン」が分泌されるという研究報告もある
(田中富隆)