動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2017年03月16日

猫と“良き飼い主”をつなぐ「保護猫カフェ」の取り組み

毎日新聞


「保護猫カフェ」という店がある。猫を集客に使う従来型の「猫カフェ」とは一線を画し、捨てられるなどして行き場を失った後に保護された猫の、飼い主探しを目的とする。この「保護猫カフェ」をめぐるエピソードを紹介する。
池袋マルイ最上階を“占拠”
 2月25〜28日、東京・池袋にある百貨店「マルイ」最上階の7階のほぼ全スペースで、猫関連グッズの物販展が行われた。主催者で「保護猫カフェ」運営会社のネコリパブリック(2014年設立)は、会場の一角で猫と飼い主のお見合いイベント「譲渡会」を開いた。衛生面などに厳しい百貨店で譲渡会が開かれるのは非常に珍しい。
譲渡会参加者に対して「事前講習」を行うネコリパブリック経営者の河瀬麻花さん(右端)=2017年2月25日、東京・池袋のマルイ7階で駅義則撮影
譲渡会参加者に対して「事前講習」を行うネコリパブリック経営者の河瀬麻花さん(右端)=2017年2月25日、東京・池袋のマルイ7階で駅義則撮影
 この譲渡会は、気に入った猫がいれば「トライアル」として飼い主候補の自宅に一定期間お試しで滞在させ、相性を確認したうえで正式譲渡する。虐待や飼育放棄を避けるための飼い主審査もある。
 開催期間中の4日間で12匹の大人の猫が参加。うち5匹のトライアルが決まった。私は保護した猫の飼い主探しのため、この手の譲渡会には数多く参加してきたが、かなりの好成績だと感じた。
 子猫に限らず、一般にはなつきにくいイメージのある大人猫の飼い主希望者は、意外に多い。だが、衛生管理や脱走防止を徹底しなければならないなどの理由で、譲渡会の会場を貸してもらえるケースは非常に少ない。多摩川の橋の下やペットショップの軒先など屋外での譲渡会で、夏場には猫が脱水症状に苦しむ姿も見かけた。
ホームセンターとも提携
 開催初日に会場で、マルイの担当者に譲渡会の開催を承諾した理由を聞いた。それによると、昨年秋のネコリパブリック池袋店開店を受けて実施した物産展の反響が大きかったことなどから、譲渡会の開催が決まったという。
東京・池袋のマルイ7階で行われた猫の譲渡会=2017年2月25日、駅義則撮影
東京・池袋のマルイ7階で行われた猫の譲渡会=2017年2月25日、駅義則撮影
 ネコリパブリックが運営するカフェは、猫を集客の手段として使う一般の猫カフェとは異なり、あくまで飼い主探しが目的。希望者がじっくり猫との相性を見極められるよう、民家風の雰囲気を持たせている。
 私が過去に参加した譲渡会では、多数の猫を抱えて医療費などの負担に悩む保護主が早く手放したいと焦り、飼育能力の乏しい人や、面倒を見きれない1人暮らしの高齢者に渡す例をよく見かけた。私は「最優先すべきは猫の幸せ。飼い主候補を『お客様』にしたら営利目的のペットショップと変わらない」と主張したが、なかなか理解されなかった。
 ネコリパブリックは4月にホームセンターの島忠と協力して、トレーラーハウス内での譲渡会を行う予定。河瀬麻花代表は「多くの企業とのコラボで、保護猫カフェを知らない人が興味を持つきっかけを作りたい」と語る。
「保護猫カフェ協会」を設立
 保護猫カフェの元祖は、NPO法人、東京キャットガーディアン。山本葉子代表が02年、自宅で約30匹の猫を保護したのが始まりだ。08年には動物病院を併設するとともに、日本で初めて常設の譲渡会場を兼ねた保護猫カフェを設置した。
東京キャットガーディアンの保護猫カフェの一室にて=2017年3月6日、駅義則撮影
東京キャットガーディアンの保護猫カフェの一室にて=2017年3月6日、駅義則撮影
 現在は東京都豊島区南大塚で猫の譲渡会場、カフェ、関連グッズのショップの機能を兼ねたスペース「スカイシェルター」を運営するなど、複数の拠点に約300匹の猫を常時保護している。
 山本代表は「足りないのは愛情ではなくシステム」との合言葉をもとに、住人が猫の預かりボランティアをする「猫付きシェアハウス」「猫付きマンション」など、さまざまなアイデアを実現し、これまでに約5500匹を新たな飼い主に譲渡した。今年2月22日の「猫の日」には「保護猫カフェ協会」を設立した。
 山本代表は設立目的を「現在は全国で100程度の保護猫カフェがあると言われているが、その実態を把握したい」と語る。協会に加盟した組織は現在までに九つだ。猫ブームに踊らされずに「保護猫カフェ」の認知度を上げ、「適正な飼い主を増やしたい」とも強調している。
 希望を感じた話を一つ。池袋マルイの譲渡会で、河瀬ネコリパブリック代表は参加者への10分間の事前セミナーとして、猫の殺処分問題などに関する説明をしていた。そして最初の譲渡会が終わった後、私は参加者のうち、小学生とおぼしき女の子がこう語るのを聞いた。
 「きょう、帰ったら、このことを日記に書く」
ブームの後に捨て猫が……
筆者が保護していた白黒のオス猫。譲渡会にも何度か参加したが、2015年8月に筆者の腕の中で病死した。死後、骨の判定により10歳を超えていたことが判明=14年5月撮影
筆者が保護していた白黒のオス猫。譲渡会にも何度か参加したが、2015年8月に筆者の腕の中で病死した。死後、骨の判定により10歳を超えていたことが判明=14年5月撮影
 昨年10月にスタートし、断続的に続いたこの連載「猫ブームの光と陰」は今回で最終回となる。
 私は、現在の「猫ブーム」には、メディアが視聴率や広告料を簡単に稼ぐ材料として猫を利用し、ペット業界が便乗して大量生産を加速させた面が強いと考えている。ブームの後には捨て猫が増えると危惧するボランティアも多い。一方で、高まりつつある「殺処分ゼロ」の声に押されて行政が収容を拒み、民間で闇に葬られる猫が増える恐れがある。
 その場合のセーフティーネットとして、「保護猫カフェ」のように、行き場のない猫と飼い主とを結びつける取り組みが広がることを強く願っている。

posted by しっぽ@にゅうす at 07:10 | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする