動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2017年03月16日

人より多い猫が住む仮設住宅 エサやりに通う夫婦 「仮設が廃止されたら…」

Yahoo! JAPAN


被災者の心の支えに
 東北3県で、いまも3万5千人余りの被災者がプレハブの仮設住宅で暮らしている。住民の数よりネコの数の方が多い仮設住宅があると聞いて、訪ねた。

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◇  ◇

 637人が犠牲になった宮城県山元町。その山あいにプレハブの建物が並ぶ。「高瀬西石山原(たかせにしいしやまはら)仮設住宅」の看板が入り口に立つ。

 朝6時半、軽ワゴン車が駐車場に滑り込んだ。エンジン音を聞きつけた10匹以上のネコの群れが、脇の竹やぶから飛び出してきた。

 引地(ひきち)とも子さん(69)と夫の構三さん(66)が、敷地内の12枚の皿に、キャットフードと牛乳を注いで回る。黒いのはクーちゃん。顔に星の模様があるのはホッちゃん。いまご飯あげるから、ちょっと待ってね。

 夫妻がここで暮らし始めたのは震災の1年3カ月後。町は「心の支えになる」とペットを認め、飼っていたネコ1匹を連れてきた。

 ある日、部屋の前でトラ柄のネコを見つけた。やがて5匹の子を産んだ。広場で子ネコたちがじゃれ合っていると、お年寄りや仕事のない若者が外に出てきた。エサを与えて目を細める人もいた。とも子さんは「あんな震災があって、みんなすさんでいたから」。

人より多い猫が住む仮設住宅 エサやりに通う夫婦 「仮設が廃止されたら…」
仮設住宅で暮らす猫たち
連れて行きたいが…
 震災後、東北3県には最大時で11万6千人が仮設住宅で暮らし、この仮設にも219人が暮らしていた。

 ただ、新しく建てられた災害公営住宅では、原則としてペットの飼育はできない。「連れていきたいけど、ダメって言われてるから」。ネコの面倒を見ていた入居者たちは、自治会長だったとも子さんにそう告げて、つぎつぎと去った。

 引地さん夫妻も、津波で全壊した町内の家を直して、昨年5月に仮設を出た。元気な数匹を残して、十数匹を連れて行った。

 数カ月後。仮設を訪ねると、自治会長の遠藤みよ子さん(83)から「ネコが増えてるよ」と声をかけられた。目が開いたばかりの子ネコ2匹がよちよち歩いていた。数日後、駐輪場で別の赤ちゃん3匹を見つけた。軒下では5匹の子ネコが身を寄せ合っていた。

 いずれも親ネコの姿はない。「処分に困った人が勝手に置いていったのでは」と、とも子さんは思う。

再建先から餌やり
 いまでは30匹ほどのネコが、すみついている。住民は20人。引地さん夫妻は毎朝、毎夕、車で10分ほどの自宅から通い続ける。1袋4キロのキャットフードは3日で底をつく。年金暮らしの夫妻に、月2万円の餌代は軽くはない。

 この春、仮設住宅を出る70代の女性は、昨年秋に玄関のそばで見つけた子ネコと暮らしている。一日の多くを室内で過ごし、一緒に寝起きするネコはかわいい。でも、災害公営住宅では飼えない。「結局、置いていくしかないかねぇ」

 地元の女性は、昨年から納屋の中をネコに荒らされるようになったと話す。苦情を言いたくなるが、ネコを飼うのが被災者だと思うと文句は言いづらい。「もうじき仮設はなくなる。それまで我慢します」

 山元町の災害公営住宅は3月中にすべて完成し、5月の大型連休までに全員が仮設住宅を退去する見通しだ。仮設住宅が封鎖されても、ネコたちにエサをやれるように、せめて敷地内に入れるようにしてほしいと、とも子さんは願う。無邪気にじゃれ合うネコを見ると放っておけない。

「このまま面倒を見るしかないのかな」

 今は、そう考えている。

sippo(朝日新聞社)


posted by しっぽ@にゅうす at 07:15 | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする