動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2017年03月27日

鳥取大学農学部附属動物医療センターが進めるペットの最先端がん治療

Yahoo! JAPAN


Dr.岡本のペットのがん治療最前線
−最先端がん治療(1)−

今回から4回にわたりまして、鳥取大学農学部附属動物医療センター(一部は他の民間動物病院でも可)で実施している最先端がん治療を紹介します。

インドシアニングリーン修飾リポソーム(ICG-Lipo)と光を用いた光免疫誘導療法
インドシアニングリーン(ICG)は、1959年に米国で肝胆道系検査薬として開発された非常に安全な色素剤です。このICGは、800nmの光を吸収して発熱(温熱効果)、600-800nmの光を吸収して活性酸素を誘導(光線力学効果)します。筆者らはこの光特性に注目して、2007年よりがん治療への応用の可能性を模索してきました。ICGと光を用いた治療を光線温熱療法(Photodynamic Hyperthermal Therapy : PHT)と命名し、さらにPHTに局所抗癌剤を併用する方法を光線温熱化学療法(Photodynamic Hyperthermal Chemo-Therapy : PHCT)と命名しました。しかし、この治療法の対象は表在性腫瘍を対象としたものであり、深部の腫瘍には適用ではありませんでした。

腫瘍組織に選択的に薬物を蓄積させる方法の一つにEPR効果(Enhanced Permeability and Retention Effect)があります。この理論は、次の通りです。腫瘍血管の血管内皮細胞は正常組織の血管内皮細胞に比べて、その整列が不均一であることが知られています。そのため、正常血管内皮細胞間隙からは漏出しない粒子(20-200nm)でも血管外に漏出します。その結果、腫瘍組織内に粒子が蓄積していきます。現在、細胞膜と同じ材料で作られた小さな気泡(小胞)、すなわち“リポソーム”をこのような粒径にして、血管内に投与し病変部に運ぶ研究が進められています。

2010年、千葉大の田村先生らは、このリポソームの膜にICGを結合させることに成功しました(以後、ICG-Lipoと呼びます)。本剤が腫瘍に蓄積した段階で、光照射することにより、温熱療法、光線力学療法を実施できます。さらにリポソーム内に、抗がん剤等の種々の物質を内包させることにより、より効果的ながん治療が期待できます。

本治療は最終的にはがん細胞に対する免疫を誘導することがわかりました。そのためこの治療法を「光免疫誘導療法」と命名しました。

2012年より、実験動物を用いたデータを基礎に、実際の犬猫の自然発症症例に対して本治療法を実施してきました。その治療法および症例を紹介します。

ICG-Lipoを用いたがん治療のプロトコール
本治療は、1クールを3週間とし、ICG-Lipoを静脈内投与後、市販の近赤外線照射治療器(飛鳥メディカル社製DVL-15または東京医研製スーパーライザー)による照射を、週3回以上行います。治療後3週間経過した段階で、腫瘍が縮小あるいは現状維持であればそのまま継続、腫瘍が増大していれば内包する抗癌剤を再検討します。

2012年より、実験動物を用いたデータを基礎に、実際の犬猫の自然発症症例に対して本治療法を実施してきました。その治療法および症例を紹介します。

ICG-Lipoを用いたがん治療のプロトコール
本治療は、1クールを3週間とし、ICG-Lipoを静脈内投与後、市販の近赤外線照射治療器(飛鳥メディカル社製DVL-15または東京医研製スーパーライザー)による照射を、週3回以上行います。治療後3週間経過した段階で、腫瘍が縮小あるいは現状維持であればそのまま継続、腫瘍が増大していれば内包する抗癌剤を再検討します。

症例: 猫、雑、雌、10歳、4.1kg
近隣の動物病院に「くしゃみ・右眼の目やに」を主訴として受診しました。初診時は、顕著な病巣が無かったため、抗生物質を投与したところ、症状の改善がみられました。しかし、2ヶ月後、くしゃみが再発すると共に、軽度の鼻出血と頬から右側鼻部にかけての軽度腫脹を呈しました。再度抗生物質の投与を開始しましたが、右頬部の腫脹は徐々に増大し、右眼球突出と軽度鼻出血が確認されました。頭部X線像では、上顎部の骨融解像が認められました。細胞診の結果により、上皮系腫瘍が疑われました(最終的にはリンパ腫と診断)。

インフォームドコンセントの結果、放射線療法による積極的な治療を希望されなかったため、ICG-Lipoによる治療を行うことにしました。補助療法として、食欲低下時に輸液を実施することとしました。ICG-Lipoを血管内投与後、通院治療(週5回照射)としました。治療方法は、近赤外線照射治療器(飛鳥メディカル社製半導体レーザー:DVL-15)により、患部に20分間の光照射(出力5W)を行いました。

顔面の腫脹は、治療開始後、漸次減少しましたが、1週間経過した辺りから再度腫脹が見受けられました。その後、症状の改善・悪化を繰り返しました(第1〜4クール)。しかしながら、第5クールから急激に顔面の腫脹が減少すると共に、鼻塞栓もほぼ改善しました。また、X線検査の結果より、上顎部の骨吸収像の改善も確認されました。

これまでに全国約270施設で延べ約900症例に本治療を試行してきました。

文/岡本芳晴(おかもとよしはる)

昭和34年兵庫県生まれ。昭和58年北海道大学獣医学部獣医学科卒業。昭和62年北海道大学大学院獣医学研究科予防治療学専攻博士後期課程中途退学(博士号学位取得)。昭和62年より鳥取大学助手農学部。平成15年教授に就任。

@DIME編集部

posted by しっぽ@にゅうす at 07:59 | ペット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする