動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2017年10月10日

犬の攻撃性、ホルモンに違いを発見、改善に光

Yahoo! JAPAN


噛みつき事故は米国で毎年450万件発生、対策の道ひらく可能性
 イヌは人間の最良の友かもしれないが、その友情は完全無欠ではない。飼い主に尾を振り、顔を舐めまわすイヌが、吠え立てたり、唸り声をあげたり、噛みついたりすることもある。攻撃的になりやすいイヌとそうでないイヌがいるのはなぜだろうか。米アリゾナ大学の心理学者で人類学者のエバン・マクリーン氏はこの違いに興味を抱き、ホルモンで説明できるのではないかと考えた。

【動画】攻撃的なイヌと友好的なイヌの違い、実験映像も

 そして、オキシトシンとバソプレシンという2種類のホルモンが、それぞれイヌの友好的な行動と攻撃性と関係あることをマクリーン氏らは発見し、学術誌「Frontiers in Psychology」に論文を発表した。品種改良により穏やかな気性を身につけた介助犬は、平均的なイヌに比べてオキシトシンの血中濃度がかなり高かった。一方、ほかのイヌに対して攻撃的なイヌたちはバソプレシンの濃度が高かった。

「イヌのバソプレシン濃度と攻撃性との関係を調べた研究結果は今回が初で、新しい治療の機会をひらくものです」。論文の共著者で、これらのホルモンを長年にわたり研究してきた米インディアナ大学キンゼイ研究所の生物学者スー・カーター氏は説明する。

 もちろん、それ相応の状況になればほとんどのイヌは攻撃的になる。自分の食べ物を取られそうになったときのほか、よそのイヌや飼い主以外の人間を見ただけで攻撃的になることもある。米ミネソタ大学のイヌの専門家ジュリア・メイヤーズ=マナー氏によると、これはイヌの飼い主に共通の問題だという。氏はかつてツインシティー動物愛護協会でイヌのしつけ教室の手伝いをしたことがある。

「私たちの教室はいつも満員でした」
 メイヤーズ=マナー氏によると、一部のイヌはリードをつけられることに特に強い抵抗を感じるそうだ。「捕らえられ、逃げられなくなると感じるのです。そんなとき、攻撃は最大の防御になります」。なお氏は今回の研究に関わっていない。

 米国疾病予防管理センター(CDC)によると、米国ではイヌによる噛みつき事故は毎年450万件発生している。イヌが動物シェルターに引き渡される理由の筆頭も攻撃性だ。だから、イヌが攻撃的になる理由を理解し、それを防ぐことができれば、人間とイヌの両方の命を救うことができる。

愛情ホルモンの研究で意外な発見
 イヌの行動の多くは「生まれ」と「育ち」の組み合わせによって決まり、攻撃性も例外ではない。幼少期の経験によって攻撃的になることもあるが、持って生まれた気性によってそうなることもある。そして気性は、ある程度ホルモンの影響を受けている。

 オキシトシンは愛情ホルモンとも呼ばれ、出産や母子の絆の形成に関わっていることが知られている。論文の共著者であるカーター氏の最初の研究テーマは、プレーリーハタネズミ(Microtus ochrogaster)がパートナーと添い遂げる理由もオキシトシンで説明できるかというものだった。実際、ハタネズミが巣作りをしてつがいになると、オキシトシン濃度は急上昇する。

 カーター氏は、ここでもう1つ気になる発見をした。つがいになったオスのハタネズミは、パートナー以外のハタネズミに対して攻撃的になったのだ。さらなる実験により、バソプレシンの関与が明らかになった。バソプレシンの働きを抑えると、オスのハタネズミは再び穏やかになったのである。

 ほかの科学者によって、さまざまな動物について同様の結果が成り立つことが示されたものの、イエイヌについての研究は行われていなかった。科学文献で攻撃性の原因になりそうな物質を見つけられなかったマクリーン氏は、オキシトシンとバソプレシンを有力候補と考えるようになった。

 男性ホルモンであるテストステロンが攻撃性の原因ではないかとする説はあるにはあったが、去勢していないオスイヌが去勢したオスイヌよりも攻撃的であるとはかぎらなかった。不安や抑うつと関連のあるセロトニンという物質についても、どちらとも言えない結果だった。しかし、オキシトシンとバソプレシンは広範な動物に同じような影響を及ぼしていることがマクリーン氏に希望を与えた。

イヌを変えようとする前に
 マクリーン氏は、ほかのイヌに対して理由なく攻撃行動をするイヌを集めてから、同じ年齢、性別、種類の攻撃的ではないイヌを集めた。そして、事前にバソプレシンとオキシトシンの濃度を測定するために採血をしてから実験を開始した。

 実験ではまず、イヌの飼い主にイヌのぬいぐるみを散歩させるふりをしてもらい、これを見たイヌたちの反応を観察し、再度採血を行って、攻撃的なイヌとそうでないイヌとを比較した。予想通り、ぬいぐるみに対してうなり声をあげたり、飛びかかろうとしたり、吠え立てたりする回数は、攻撃的なイヌの方が多かった。バソプレシンの血中濃度もはるかに高かった。

 研究チームは介助犬についても別に実験を行い、威嚇的な行動をする知らない人や知らないイヌと対面させた。どちらの場合も、介助犬は落ち着きを保ち、標準的なイエイヌよりもオキシトシンの血中濃度が高かった。

「攻撃的なイヌを変えようとする前に、私たちはその基本的な生物学を理解する必要があります。こうしたホルモンに目を向ける人は、これまで誰もいませんでした」とマクリーン氏は言う。今回の結果は新たな研究の出発点になるが、マクリーン氏は、バソプレシンが攻撃性を生じさせているのか、攻撃性に反応して分泌されているのかはまだ分からないと言う。

 この研究からは、どのイヌがいい子かは分からないが、自分のイヌが忠犬ではない理由を理解するのには役立つかもしれない。

文=Carrie Arnold/訳=三枝小夜子


posted by しっぽ@にゅうす at 08:26 | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする