動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2018年06月28日

これって猛獣の多頭飼育崩壊ドキュメンタリー!? 動物愛護映画『ROAR/ロアー』がヤバすぎる!!

日刊サイゾー



CGを多用したSF&ファンタジー映画が興隆する現代に、いっさいCGを使っていないドキュメンタリータッチの衝撃的な映画が今年6月6日にDVDとして再リリースされた。1981年に米国で製作されたファミリー向け動物映画『ROAR/ロアー』がそれ。70年代にテレビドラマ化されて、大ブームとなった『野生のエルザ』(66)のような人間とライオンとの交流を描いた感動作かなと思いきや、とんでもなくデンジャラスな内容なのだ。

 動物パニック映画の先駆けとなった、ヒッチコック監督の大ヒット作『鳥』(63)で鳥の大群に襲われまくった美人女優ティッピ・ヘドレンが主演。共演は本作の監督&脚本も手掛けたノエル・マーシャル。オカルト映画の金字塔『エクソシスト』(73)のプロデューサーであり、当時はティッピ・ヘドレンと夫婦だった。ティッピの連れ子だったメラリー・グリフィスが可憐な姿を見せ、ノエルの息子たちも出演。つまり、ティッピ&ノエル一家が総出演した文字どおりのファミリー映画として撮影されたものだ。

 ところがまぁ、どんな微笑ましい家族愛に満ちた映画かと思ってDVDを再生すると、驚愕シーンの目白押し。人里離れた僻地で野生動物保護官をしているハンク(ノエル・マーシャル)のところに、妻(ティッピ・ヘドレン)が子どもたちを連れて訪れる。ハンクは空港まで迎えに行くも、運悪くすれ違いに。ハンク不在の屋敷のドアを開けて、中に踏み込んだ一家は思わず絶句。屋敷の中はどこもかしこもライオンだらけ。さらにはトラ、ヒョウ、ゾウまで現われ、どこにも逃げ場なし。登場する猛獣たちの数は、何と156頭!




ライオンやトラのことを「私のキャットたち」と呼んで溺愛するティッピ・ヘドレン。確かに猫科動物ですが……。
 ハンクによって手なづけられていたライオンやトラたちは、珍客たちを友好の印として腕や首筋を甘噛みしたり、背中におぶさってくるのだが、当然ながら彼らは鋭い牙や爪を持っているわけで、ティッピたちの着ていた衣服はボロボロ、体中キズだらけに。頼りの夫は車が故障してしまい、なかなか戻ってこない。上映時間93分間、ティッピたちはひたすら猛獣たちに追い回されるはめに。屋敷内とその周辺で、リアル鬼ごっこが続く。キャストやスタッフの安全性をまったく度外視したこのクレイジーさは、CG映画では到底味わえないものだ。

 DVDには特典映像として、メイキング・ミニドキュメンタリーが収録されており、撮影の舞台裏を追ったこちらも目が離せない。映画製作のきっかけは、ノエル・マーシャルとティッピ・ヘドレンの動物好きが高じて、72年に米国カリフォルニア州で動物トレーニングセンターを開設し、ライオンやトラの飼育を始めたことから。ライオンやトラは次々と子どもを生み、200頭にまで増え、『ROAR/ロアー』を撮影するために用意していた製作費は底をつくはめに。最近はネコの多頭飼育による崩壊一家の悲惨なドキュメンタリー番組をよく見かけるが、ノエル&ティッピの場合は猛獣の多頭飼育によって一家崩壊の瀬戸際にまで追い込まれたわけだ。


メイキング・ドキュメンタリーの中では、今も元気なティッピ・ヘドレンは、『鳥』の撮影で使った毛皮の衣装や宝石類を売り払って、何とかやりくりしたとインタビューに答えている。後にキアヌ・リーブス主演のアクション映画『スピード』(94)を大ヒットさせるヤン・デ・ボン監督は、『ROAR/ロアー』には撮影監督として参加しており、ライオンに咬まれて頭の皮が剥がれ、病院送りとなった。70針縫いながらも1週間で現場復帰したのだから、すごいガッツだ。多くのスタッフはロケ現場から逃げ出したそうだが、薄給だったのでそれも当然だろう。さらに撮影終盤には大洪水に遭い、撮影に使っていた屋敷も動物たちの多くも流されてしまった。苦労して10年がかりで完成させた本作だが、当時はこの作品の狂気じみた面白さは理解されず、北米では劇場未公開に。まさに踏んだり蹴ったり咬まれたりである。




仲睦まじかった頃のティッピとノエル・マーシャル。撮影のごたごたがあまりにも続き、残念ながら別れることに。
 本編の中で、ティッピ・ヘドレンが部屋の中に入ると、かわいい小鳥が飛んでくるという『鳥』を意識したギャグが盛り込まれているが、彼女の女優人生を語る上で、やはり『鳥』を監督したヒッチコックを外すことはできない。モナコ王室に王妃として迎えられたグレース・ケリーを失い、落ち込んでいたヒッチコックの目に留まったのがCMモデルとして売り出し中の新人ティッピ・ヘドレンだった。金髪でスレンダーな美女に、ヒッチコックは目がない。演技キャリアのほぼないティッピに、脚本の読み方から役づくりの方法など、ヒッチコックはつきっきりで女優としての所作を教え込んでいる。

 ヒッチコックは大ヒットした『鳥』に続いて、『マーニー』(64)のヒロインにもティッピを起用するが、次第に彼女のプラベートへの干渉が激しくなり、肉体関係を求めるようになる。ヒッチコックの完全なるパワハラ&セクハラだった。ヒッチコックは自分のもとを去ろうとするティッピを長期契約を記した書類を楯にして許さず、他の監督からのオファーを断るなど“飼い殺し”状態に追い込んだ。ティッピによると、ヒッチコックの妻アルマはセクハラの現場にいたそうだが、アルマは黙ったままで助けてくれなかったという。ティッピにとっては、言葉の通じない猛獣たちよりも、ヒッチコック夫妻のほうが遥かに怖かったようだ。

 ティッピ・ヘドレンの女優人生を知ってから『ROAR/ロアー』を観ると、また違った感慨が湧いてくるはず。ハリウッドで成功をおさめた女優たちは、みんな猛獣使いなのかもしれない。
(文=長野辰次)
posted by しっぽ@にゅうす at 08:25 | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする