動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2018年12月30日

「保護猫の支援」がビジネス化する深刻理由

Yahoo! JAPAN



空前の猫ブームという言葉も、もはや決まり文句の感がある。猫の人気にあやかったビジネスも活発だ。ニーズがあるところに商機を見いだす、その風潮は今も昔も変わりない。

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 一方で、最近、変化しつつあるのが猫に関するボランティアだ。ボランティアとは、捨て猫、野良猫を保護して飼い主を探したり、むやみに増えないよう、去勢避妊手術を行って元の場所に戻す(TNRという)活動などのことだ。昔から、動物愛護の精神から、または猫が好きな人が、自分のお金や時間を費やして必死に行ってきた。しかし最近、その猫愛には変わりないものの、ビジネスの視点を取り入れる団体を見かけるようになった。

今回はそうした猫の保護活動を行う団体と、ペットにまつわるビジネスを営む企業として島忠を取材。猫ビジネス・猫ボランティアの今を調べてみた。

■「保護猫を家族にする」という選択を広めたい

 2014年と、比較的最近立ち上げられたのがネコリパブリック(通称、ネコリパ)だ。同社の戦略は、保護猫という存在を世の中に広め、ブランド化していくこと。

 「保護猫を家族にする、という選択を広めていきたいんです。今、多くの猫が殺処分されている現実を知っている人は少ないですが、もし知ったら心を痛める人が多いと思います。そして今の猫ブームをブームではなく、“保護猫を家族にする”という文化にしていきたい」(ネコリパブリック代表取締役の河瀬麻花氏)

 河瀬氏は出身地の岐阜県で保護猫ボランティアのサポートをしていたが、身銭を切って活動をしながら「野良猫を増やしている」との誤解を受けていると感じることもあった。そんなボランティアたちの苦労、そして疲弊していく姿を見続けてきた結果、保護猫活動のビジネス化を思い立ったという。資本金は600万円。さらに、新規ビジネスをサポートする県の助成金制度も利用した。起業にあたっては、実家の家業で携わっていたeコマースやカフェ事業などの経験が役立った。

現在、年に約3万5000匹(平成29年環境省調べ)の猫が殺処分されているが、同社は2022年2月22日までに、行政による殺処分をゼロにすることを目標として掲げている。

 そのための活動は多岐にわたる。“自走型”保護猫カフェのほか、「ネコ市ネコ座」といったイベント、SNS、オリジナル商品の販売などだ。保護猫カフェは第1号店の岐阜店のほか、東京都内に3店舗、大阪、広島にそれぞれ1店舗を展開。また、オリジナルグッズ販売専用のストアも都内に1拠点、運営している。自走型と称するとおり、活動をビジネスとして成立させ、継続を目指すところに特徴がある。

■猫の国という、テーマパークのような空間

 そのため、同社では通常の保護猫カフェとは違う仕掛けも取り入れている。ネコリパの猫カフェを訪れる人は、“猫の共和国”に入国することになる。パスポートやビザが発行されるほか、保護猫のなかから大統領を選ぶ“大統領選挙”の選挙権をも与えられる。大統領はもちろん猫である。猫の国という、テーマパークのような空間だ。

 ただし保護猫カフェなので、猫共和国の住民たちはお客の里子となってもらわれていくことが前提となっている。

 ちなみにネコリパでは、自社で保護活動を行っているわけではなく、地域の保護団体と連携し、里親募集中の猫を預かる形で保護猫カフェを運営している。カフェではオリジナル商品を購入することもできる。猫用のペットグッズや、猫デザインの雑貨などだ。

 「商品力を高めるため、商品開発には力を入れています。海外の商品を仕入れてくることもありますが、商品デザインはネコリパの活動に共感してくれるデザイナーにお願いしています」(河瀬氏)

 一般の人にもアピールする商品をそろえており、2017年からはマルイでのポップアップストアを継続して展開している。

 「ネコ市ネコ座」は猫グッズの販売や、保護猫にかかわる展示、保護猫譲渡会などが行われるイベントで、収益は保護猫活動にあてられる。開催は不定期で、規模も、協力企業の店舗内で行うものから、イベント会場を借り切って行うものまでさまざまだ。

 2018年7月には東京ドームシティで3日間にわたり開催し、約6000人の来場者が訪れた。10月13日、14日には三重県にて開催。2019年2月には神戸での開催が予定されている。


ネコ市ネコ座では「市」=商品販売と、「座」=情報発信の場を併せ持っているところがポイント。東京ドームシティ開催回では、保護猫ボランティア団体が討議するサミットも行われた。ふだんは別々に活動している猫の保護団体同士が交流し、情報交換する場ともなっている。

 ネコリパの特徴をもう1点付け加えるとすれば、クラウドファンディングを活用していることだ。

 ネコリパの大きな転機となったのが2016年、大阪心斎橋店のオープン。“ネコビル”と呼ばれ、ビルの1階から5階までが丸ごと猫のための施設だ。実はこの大阪店は2代目。その前の大阪1号店は、“多頭飼育崩壊”現場の部屋を活用するための策としてオープンしたものだった。

 多頭飼育崩壊とは、飼い主が自分で管理できないほど多数の動物を集め、繁殖を放置するなどして、飼育が不可能となること。保護猫のボランティアでは、この多頭飼育崩壊により多数の猫を引き取るケースも多いという。ただ、上記大阪の例は、保護活動をしていた方が亡くなったことが発端であり、一般的な多頭飼育崩壊とは事情が異なるという。

 幸い、多頭飼育崩壊の現場を猫カフェにするアイデアは成功し、2年後には新店舗の検討をするほどになった。

 ただ、ビルを丸ごと借りるとなると、これまでにないほど大きな費用が必要である。このとき利用したのがクラウドファウンディング。結果、当初の目標額よりさらに上の目標(ストレッチゴール)である1800万円超の金額が集まったという。

 ネコリパの新ブランドNECOREPAのフラッグシップ店を蔵前にオープンしたのも、別に立ち上げたクラウドファンディングによるもの。そのストレッチゴール562万円の達成により、11月1日には、岐阜に飲食ブランド「さび食堂」を開始した。「さび」は猫の毛柄の一種で、黒と茶がまだらになった模様のこと。同店ではねこまんまや、岐阜名物の土手煮、鶏ちゃんなどが味わえる。

「クラウドファンディングは購入型を利用することも多いです。寄付という感覚でなくても、もらえるグッズがかわいいからとお金を投資してくれる人もいます」(河瀬氏)

 今後もクラウドファンディングを利用した出版社の立ち上げを予定しているという。

■日本の「保護猫カフェ」の元祖

 日本での保護猫カフェの元祖とも言えるのが、NPO法人の東京キャットガーディアン(以下、TCG)だ。

 代表の山本葉子氏は2002年より、自宅で約30匹の猫の保護を開始。2008年には常設の猫の譲渡会場として、猫カフェを兼ねた開放型のシェルターを立ち上げた。

 ビルの5階に設けられた「大塚スカイシェルター」は、天井が高く開放感のある空間。大きな窓から入る外光のなか、たくさんの猫たちが思い思いにくつろいでいる。時期によって異なるが、この団体施設には合わせて380〜450匹の猫が暮らしている。カフェスペースに出ているのは大人の猫と白血病ウイルスチェックが終わった子猫たちだ。生後2〜4カ月までくらいの子猫のスペースは別に設けられている。

 山本氏は「保護猫活動をビジネスの手法で行っている」とはっきり言い切る。

 「ビジネスでないと続かないんです。ビジネスとして運営できれば、将来、私がいなくなったときも、保護猫の活動を継続させることができます」(山本氏)

 猫を救うための、同団体の活動も幅広い。シェルターのほか、これも日本初で猫付きマンション、猫付きシェアハウスを運営。猫グッズや猫トイレ砂、キャットフードなどの通販のほか、ビル1階にリサイクルショップも営む。NPO法人として初めて、ペット保険代理店の資格も取得している。

 当然山本氏だけでは運営していけないので、シェルター運営のスタッフを8人、リサイクルショップの担当者2人、広報担当、経理担当、獣医師などを雇用する。手広く行う事業は黒字ではあるが、譲渡活動の面では、寄付を受けたりボランティアの協力も得ている状態だ。

 なお、同団体のシェルターは猫カフェ型ではあるが、一般の猫カフェとは行政上の扱いが異なる。一般の猫カフェは(保護猫カフェであっても)、営利目的の第一種動物取扱業となる。猫を展示して飲み物料・入場料などを得るためだ。
posted by しっぽ@にゅうす at 03:54 | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする