動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2019年05月13日

ライオン100頭以上ネグレクト 南アフリカ施設

Yahoo! JAPAN


責任ある飼育下繁殖を支持する組織のメンバーがライオンを病気のまま放置。なぜ?
 南アフリカで、ショッキングな飼育放棄(ネグレクト)事例が発覚した。ライオン100頭以上とそのほかの動物が北西州の繁殖施設「ピエニカ・ファーム」にすし詰めにされ、その多くが病気になった状態で放置されていたのだ。

ギャラリー:アフリカの野生ライオンの「私生活」 写真20点

 事実が明るみに出たのは、ジャーナリストへの匿名の情報提供だった。このジャーナリストが、南アフリカの動物福祉関連法の施行状況を監視する動物虐待防止協会(NSPCA)に報告して、飼育の実態が明らかになった。

2頭分のスペースに30頭以上
 NSPCAがピエニカ・ファームを調査した結果、27頭のライオンがダニの寄生を原因とする皮膚疾患にかかっており、ほぼ全身が脱毛するほど深刻な状態だったという。調査員の報告によれば、本来2頭分のスペースに30頭以上が詰め込まれ、囲いの中は不潔極まりなかった。髄膜脳炎を患ったために歩行困難になったライオンの子も3頭いたが、うちの1頭は回復の見込みがないため、すでに施設の獣医師が安楽死させていた。

 調査を担当したNSPCA野生生物保護部門のマネジャー、ダグラス・ウォルター氏は「状況は筆舌に尽くしがたいほどひどいもので、むなしくなりました。百獣の王が劣悪な環境に置かれているのですから」と語る。「心を打ち砕かれました」

 南アフリカのライオン飼育業界に関する報告書を読むと、環境に問題がある状態で暮らしているライオンがいることがわかる。

 今回、ネグレクトが明らかになった施設ピエニカ・ファームの所有者はジャン・スタインマン氏だ。スタインマン氏は南アフリカ捕食動物協会(SAPA)の理事としてウェブサイトに名前が掲載されている。SAPAは飼育下繁殖を支持。狩猟は「合法的で、動物保護につながる」とし、会員に対しては「高い倫理基準を守る」よう求めている。NSPCAは1962年制定の南アフリカ動物保護法71条に違反した疑いでスタインマン氏を告発。有罪判決を受けた場合、約2700ドル以下の罰金または1年以下の懲役に処される。

 私たちは、スタインマン氏にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

 SAPAでCEOを務めるデオン・スワート氏は、スタインマン氏が理事ではなく「会員の一人だ」と話している。

 SAPAは2019年5月8日付でプレスリリースを発表。それによれば今後「徹底的に調査」し、「スタインマン氏に対しては直ちに処分する」と述べている。

 SAPAのウェブサイトには、「いかなる動物も不当な」空腹、喉の渇き、不快感、病気、痛みに「苦しんではならない」といった動物福祉規範が列挙されている。保護団体「ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル」アフリカ支部の野生生物ディレクター、オードリー・デルシンク氏は「不当な」には抜け穴があると指摘する。「『不当な』という言葉はあいまいです。あいまいな表現はやめ、明確にすべき問題です。動物の健康や安全に関しては、グレーゾーンなど存在してはいけません」

 2015年のドキュメンタリー映画「Blood Lions」は、南アフリカで飼育下繁殖されている捕食動物の数を6000〜8000頭と推測していた。その大部分がライオンだ。その数は現在、約1万頭まで増加していると、映画の主人公で、ナレーターも務めたイアン・ミックラー氏は考えている。氏は25年以上にわたり、サファリ運営者、ジャーナリスト、自然保護活動家として活動している。

 飼育下繁殖施設を訪れる旅行者は、料金を支払って、ライオンの子供をなでたり、哺乳瓶でミルクを飲ませたり、一緒に写真を撮ったりする。おとなのライオンと並んで歩くこともある。また、ミックラー氏によれば、多くのライオンがトロフィーハンター(戦利品を持ち帰りたいハンター)に射殺され、その一生を終えるという。ハンターの多くが米国人だ。

 ハンティングでは、フェンスで囲まれた場所にライオンを閉じ込める「缶詰」ハンティングという方法がとられる。トロフィーハンターたちが毛皮や頭部を持ち帰った後、骨をはじめとする残りの部位はアジアに輸出され、伝統薬の材料になる。南アフリカは年間の割当量を設定し、その範囲でのライオンの骨の輸出を合法としている。


骨を売るために飼育されていた?
 ピエニカ・ファームのライオンたちは骨取引のために飼育下繁殖されていた可能性が高いと、ミックラー氏は考えている。アジアでは、ライオンの骨がトラの骨の代用品として伝統薬に使用される。ミックラー氏によれば、観光やトロフィーハンティングのライオンは健康的な外見を保たなければならないが、骨取引用のライオンはネグレクトされるのが普通だという。「骨取引用のライオンを繁殖する場合、ライオンの外見を気にすることはありません」とミックラー氏は話す。「最終的には、骨だけが袋に詰められ、アジアに運ばれるのですから」

 ミックラー氏は、今回の出来事が南アフリカで飼育下繁殖されている捕食動物たちに大きな変化をもたらすことはないと考えている。スタインマン氏が腕の良い弁護士を雇い、訴訟を長引かせ、結局、軽い処罰で済むというのがミックラー氏の見立てだ。

「しゃべることができれば、ライオンは大声で裁判所に『ライオンにも公正な先進国レベルの動物福祉が必要だ』と訴えるでしょう」とミックラー氏は話すが、「現在の飼育下繁殖や骨取引を終わらせるような判決が下されるとは思えません」と付け加えた。

 ピエニカ・ファームのライオンたちは今もそのまま飼育されている。ライオンたちの運命は、調査とその後の裁判によって決まる。ヒューメイン・ソサエティーのデルシンク氏は「とても不確かな」状況だと語る。もしライオンたちが無事に生き延びても、施設で生まれ育ったため、野生に放つことはできない。しかも、南アフリカの信頼できる保護区だけでは、これだけの数のライオンを引き取れないからだ。

「ライオンたちの未来に希望はありません。選択肢があまりないのです」

文=RACHEL FOBAR/訳=米井香織
posted by しっぽ@にゅうす at 08:17 | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする