動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2019年05月15日

犬猫殺処分は、暗躍する“死の商人”たちを根絶しない限りなくならない

wezzy



東京都福祉保健局は4月5日、「2020年に向けた実行プラン」で2019年度に目標としていた動物の殺処分ゼロを、2018年度に前倒しで達成できたことを発表した。

 発表によると、2015年度〜2018年度までの犬の年間殺処分数は10匹、0匹と推移し2016年度にはゼロを達成。猫も193匹、94匹と16匹、0匹と推移しており、2018年にゼロを達成したのである。

 行政と民間ボランティアの努力により、殺処分は著しく減少している。しかし、殺処分ゼロはあくまで公共施設による成果だ。これだけでは解決できない問題が残っている。

激減している自治体の殺処分 
 東京都福祉保健局では殺処分ゼロを目指して、飼い主に対する啓蒙活動や飼い主のいない犬猫の譲渡先確保に取り組んできており、そのための登録団体は50を超えている。

 この活動の結果、攻撃性の強さや病気などにより飼育が困難と判断されて安楽死させた場合を除けば、殺処分はゼロになった。



 それでは全国ではどのような状況だろうか。

 環境省の統計資料によれば、全国的にも殺処分数は劇的に減少している。2007年度の犬の殺処分は9万8556匹、猫は20万760匹で計29万9316匹だった。だが10年後の2017年度になると犬は8362匹(10年前の8%)、猫は3万4854匹(10年前の17.4%)で計4万3216匹(10年前の14.4%)にまで減らすことができた(環境省統計資料「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」)。

 それでもまだ、2017年度は合計4万3216匹が殺処分されているわけだが、10年前に対してわずか14.4%にまで減少していることは大きな成果だと評価されるだろう。東京都以外でも、殺処分ゼロを達成する自治体は増えてきている。

 問題は、殺処分数減少の影で見えにくくなっている課題だ。たとえば、飼い主から捨てられた犬猫の路上事故死や虐待による死、飼い主の高齢化に伴う入院や死亡により餓死する犬猫も後を絶たない。

 また、ペット産業の裏側で行われている不適切な繁殖飼育や不適切な流通ストレスによる死亡も多い。ここには、動物をペットショップやホームセンター、あるいはブリーダーなどから購入するという入手手段がある限り根絶できない問題がある。

殺処分を免れた動物たちの保護も手一杯
 多くの課題が残されているとはいえ、とりあえず殺処分については、大きな成果が出てきた。次の問題は、殺処分を逃れた犬猫を快適な環境で天寿を全うさせられるかどうかに移る。殺処分数の減少は裏を返せば、保護施設やボランティア団体が保護している犬猫の数が増えてきているという意味だからだ。

 しかし、どの施設も団体も、おそらくもはや手一杯なのだ。犬猫を保護するためには、物理的なスペースと、餌や排泄物処理・治療費などといった経済的負担がかかる活動が伴う。これらの施設や団体の支援も検討せねばならないが、そもそも保護しなければならない犬猫が次々と現れることに問題がある。キリがないのだ。地域猫に関しても、去勢や避妊を進めていかなければ、野良猫は減らない。

 ここで問題の根源として浮かび上がってくるのは、お金さえ出せば、誰にでも犬猫を供給してしまうペット産業の存在だ。

流通段階で死んでいく動物たち
 殺処分の数字には決して反映されない犬猫の死は、ペット産業の過剰な供給システムにある。2017年5月30日付けの朝日新聞DIGITAL『子犬・子猫、流通にひそむ闇 死亡リストを獣医師が分析』は、ペット産業における犬猫の流通過程で多くの犬猫が不適切に扱われたために死んでいることをスクープした。

 同紙によれば、日本では繁殖から小売りまでの流通過程で毎年約2万5000頭の犬猫が死んでいるという。同紙は大手ペット店チェーンが作成した犬猫の死亡リストを入手し、獣医師らに分析させた。目立った死因は「下痢・嘔吐・食欲不振」だった。次に「パルボウイルス感染症・ケンネルコフ(伝染性気管支炎)・猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)・猫伝染性腹膜炎(FIP)」などがあったという。

 この結果は、繁殖・流通段階において衛生管理が行き届いていないことを示している。また、犬猫たちが強いストレスを受けるような劣悪な環境下に置かれていることも予想がつく。特に犬猫たちは、何回もの移動を繰り返す流通に乗せられる。

 その流通の主な経路は、繁殖業者から競り市に出され、ペット店で販売されて消費者に買い取られるというものだが、チェーン展開しているペット店の場合は競り市の後にいったん流通拠点に集約してから各店舗に配送することになる。



 同紙は、全国の自治体から情報を集めて流通過程で死んだ犬猫の集計を試みている。その結果、2016年度に流通途上で死んだ犬は1万8687頭、猫は5556頭で計2万4243頭としている。

 前出の環境省統計資料によれば、同じ2016年度の殺処分は5万5998匹だった。つまり、殺処分の43%に匹敵する数が流通途上で死んでおり、犬に限っていえば、同年の殺処分の1万424匹を上回る数の犬が流通途上で死んでいるのだ。ペット産業がいかに多くの犬猫をビジネスのために殺しているかがわかる。

 しかも、ここにはなんとか店頭まで生き延びたものの、売れなかったために悲惨な末路を辿った犬猫は含まれていない。

良心的なペット店と安直な手段に頼るペット店
 ペット店に辿り着くまでに多くの犬猫が死に、たとえ無事に店に辿り着いても、売れなければ「処分」されてしまうという現実。

 それでもまだ良心的な店は、犬猫の成長に合わせて値段を下げることで、少しでも新しい家族が見つかるように手を打ってはいる。店によっては、最終的には無料にしてでも飼い主を探す所もあるそうだ。

 だがすべての店がそのように良心的ではないし、動物愛護の精神を持っているとは限らない。単純に商売と割り切っている店もあるだろう。そのような店は、犬猫に商品価値がなくなると(つまり売れやすい子犬・子猫の時期を過ぎると)、以前は保健所に持ち込んで殺処分にしていた。まるで大量に作った恵方巻きやクリスマスケーキを処分するようにだ。しかし、すでに多くの自治体が殺処分ゼロを目指すようになっており、現在は保健所がこのような持ち込みを拒否できるため、この手は使えなくなった。

 そこで、抜け道として、店の名を出さずに個人として保健所に持ち込むこともあるらしい。ここに、保健所に持ち込めなくなった犬猫を引き取る「引き取り屋」なる業者が登場したのだが、これについては後述したい。

 その前に、ペット産業で供給を請け負っているブリーダーについて少しだけ触れておこう。


“死の商人”パピーミルブリーダーとは?
 犬猫を繁殖させてペット店などに子犬や子猫を供給している業者をブリーダーと呼ぶ。ブリーダーにはシリアスブリーダーとバックヤードブリーダー、そしてパピーミルブリーダーの3種類がある。

 シリアスブリーダーはいわゆるプロのブリーダーで、特定の種に関して専門的な知識を持ち、その種の保存のために飼育環境を整え、健康管理を行いながら繁殖させている。

 バックヤードブリーダーとは素人のブリーダーで、趣味として自分が飼っている犬や猫に子どもを産ませている。専門的な知識はないため、単なる動物好きが小遣い稼ぎでやっているようなものだが、これがお金を儲けることに味をしめると、パピーミルブリーダーになる可能性がある。

 そして、このパピーミルブリーダーが最大の問題だ。パピーミルブリーダーは「子犬工場」と訳されることが多く、金儲けのためだけに動物を無理やり繁殖させている。そこには動物に対する愛情はない。特に犬を対象としていることが多く、親犬を生きていける最低限の餌と空間で飼い、大量に子どもを産ませようとする。



 シリアスブリーダーの場合は母体の健康管理のために、生涯の出産回数を調整するなど配慮するが、パピーミルブリーダーは母体の健康には一切関心を示さず、限界まで乱繁殖させる。しかも排泄物まみれの不衛生な狭い空間で散歩にも連れて行かず、病気になったり繁殖できなくなったりすれば捨てる。

 そのうえ安く品質の悪い食事を最低限の量だけ与え、本来面倒をみきれないほどの頭数を飼っている。動物に関する知識も乏しく、本来は制限しなければならないインブリーディング(近親交配)も行っている。そのため、先天性もしくは劣悪な環境による後天性の病気を持つ個体が生まれることが多い。そのような商品価値がないと判断された子犬は不法に処分されていく。パピーミルブリーダーは不法遺棄事件や多頭飼育崩壊の原因になっているのだ。

 彼らは血統書も偽造して売っているという。このようなパピーミルブリーダーが存在しているのは、彼らから安価に子犬を仕入れているペット店があることを示している。

「引き取り屋」の登場
 ペット店に常に展示されているのは愛らしい子犬や子猫たちで、成体はいない。それでは子犬・子猫のうちにすべて売れているのかというと、そのようなことはない。売れ残る子犬・子猫も多くいる。

 ペット店側にすれば、売れ残った商品価値のない動物を飼っておくスペースと餌代は無駄なコストになってしまう。以前は、売れ残った子犬や子猫を保健所に持ち込んでほとんどが殺処分されていた。

 ところが、2013年に動物愛護法が改正されると、ペット店やブリーダーなどの業者が保健所に動物を持ち込むことができなくなった。(環境省 平成24年に行われた法改正の内容「動物愛護管理法第35条関係」)

 そこで、「引き取り屋」と呼ばれる業者が登場した。引き取り屋は、売れ残った犬猫を数千円〜数万円の代金を受け取って引き取る業者だ。彼らは動物保護のためにそのようなビジネスを行っているのではない。パピーミルブリーダーと同様、単なる金儲けのために活動している。

 引き取った子犬や子猫は、狭いケージに放り込まれ、死ぬまで放置される。餌は十分に与えられず、排泄物の清掃も行われない。当然散歩などあり得ず、ただ死ぬのを待たれるだけの存在となる。あるいは山の中に捨てられることもある。

 雌の場合は悪質なブリーダーに5000円〜2万円ほどで売却されることもある。その後は、産めなくなれば死ぬまで劣悪な環境下に放置される。つまり、冒頭に紹介した殺処分ゼロ目標が、「引き取り屋」という業者を生み出してしまったとも言える。

 今のところ「引き取り屋」のビジネス自体は違法ではないが、引き取った後の動物の扱いは虐待になっている可能性はかなり高い。ただ、一部には、引き取った犬の散歩と保管場所の掃除を毎日行っている業者がいることも報じられている。


殺処分ゼロが生み出した悪循環
 自治体が殺処分ゼロを目指すことで、ペット店の安易な殺処分持ち込みを自制し、安易な仕入れと販売を自制することが期待されたが、実態は「引き取り屋」なる闇ビジネスが生まれてしまった。その結果、以下のような悪循環が生まれている可能性がある。

パピーミルブリーダーによる犬猫の過剰生産

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ペット店による抱かせ商法による衝動買いを狙った販売のための仕入れ

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売れ残りを保健所に持ち込めないため「引き取り屋」に売却

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「引き取り屋」が山中に遺棄か飼い殺し。雌はパピーミルブリーダーに売却

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パピーミルブリーダーによる犬猫の過剰生産

 もし本当にこのような悪循環が生じているのであれば、これを断ち切るためには行政は殺処分ゼロだけではなく、殺処分をなくすことで浮いた施設や予算を有効に活用すべきだろう。動物保護活動、ブリーダーに対する厳しい認可制度や認可ブリーダー以外から仕入れたペット店への罰則、そして各種ボランティア団体への経済的支援などできることはいくらでもある。

 個人でできることは、できるだけペット店(ホームセンターなども含む)で安易に衝動買いしないことだ。とは言っても、すでに売られている犬猫については、誰かが購入しない限り悲惨な末路を辿るというジレンマもある。

 ペット店で購入するのであれば、病気になろうが老い衰えようが最期まで面倒をみる覚悟を持ってほしい。あるいは、犬猫を飼いたければ、まず保護されている犬猫を引き取ることも検討してはいかがだろうか。



 ちなみに、我が家には現在、姉弟2匹の猫が暮らしている。縁があり引き取って保護した猫たちだ。すでに10歳を超える外猫たちで2匹とも口内の状態が悪かったので、我が家に連れてきたときは痩せており、弟猫のほうは少々凶暴だったが、その後2匹とも治療して今は体重も増え、ソファの上で仲良く身を寄せ合って穏やかに寝ている。
posted by しっぽ@にゅうす at 08:33 | ペット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする