動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2019年05月27日

咬傷事故を起こしやすい犬種の分析(米国の現状)


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環境庁から毎年発表されている、我が国の犬による咬傷事故統計を見ると、この10年4000ー5000件の咬傷事故が報告されており、そのうちの約8割が飼い犬による事故だ。死亡に至ったケースも毎年報告されており、平成17年ではなんと11例にも達している。ただ、残念ながらどの犬の種類が事故が多いのかについては、ほとんど統計がない。

一方米国の状況ははるかに深刻で、毎年400万件の咬傷事故が報告され、このうち20%(89万人)は病院での治療が必要で、結果保険請求件数がきわめて高い重大な疾患になっている。このため、どの犬種が危険か知る必要があり、これに応えるべくオハイオ、テキサス、バージニアの医療機関の耳鼻咽喉科の医師から、咬傷事故に関わった犬種のランキングが発表された(Essie et al, Dog bite injuries to the face: Is there risk with breed ownership? A systematic review with meta-analysIs(顔に対する犬による咬傷:飼っている犬の種類でリスクが異なるか?メタ解析を用いた系統的レビュー),International Journal of Pediatric Otorhinolaryngology 117:182, 2018)。

この研究は耳鼻咽喉科の医師たちが、咬傷事故を少なくとも40例以上報告しているこれまでの論文を集めて、もう一度まとめ直したものだ。またこうして明らかになった事実を、自分たちの症例についても見直して確認する作業も行なっている。

詳細を省いて結果をまとめると次の様になる。

選んだ論文全体で26000件の咬傷事故が記録されているが、そのうち60%は犬種が全くわからないか、あるいは雑種と分類される。残りの40%については犬種が特定されている。
実際には様々な犬種を含むが、咬傷事故が最も多いのがPit-Bullと総称される闘犬(写真)で、次に続くのがシェパード。
ほとんど人を襲うことはないが、噛みつかれると重症度が高いのがグレート・デーン
人を襲う犬の形態的特徴は、顔が扁平で(ブルドッグ型)、30-40Kgの中型犬。
一方ほとんど人を襲わないのが、顔の長い(テリー型)で、噛まれた場合も傷が浅い。
この論文の著者らの経験では、雑種犬が人を襲う確率が最も高く、しかも噛まれた時の傷が深い。これは他の統計でも示されており、雑種には特別の注意が必要。
ただ、論文での犬種記録の正確性については若干疑問がある。
結果は以上だが、犬をよく知っている人は、おそらくこの結果をそれぞれの犬種の性格とオーバーラップさせて「なるほど」と考えられるのだろう。

わが国でも、死亡例は毎年出ており、米国と比べて少ないとは言え4000件を越す咬傷事故が報告されている。是非できるだけ速やかに、犬種も含めた統計結果を発表してほしいと思う。おそらく、米国と同じように闘犬の危険性は際立っていると思う。おとなしくよく訓練された犬の名誉のためにも犬種も含めた統計は重要だと思う。

一方、論文を読むと米国の状況は我が国よりはるかに深刻なのがよくわかる。アメリカ疾病予防管理センターによると、米国では過去30年に、入院の必要な咬傷事故や死亡事故が倍に増えているらしい。おそらくその一因は、米国の方がはるかに大型犬の数が多いと想像するが、幸いわが国では住宅事情から大型犬が少なく、事故数が少ないのだろう。

とすると、どの国でもまず安全な犬を選んで飼うことが、最も重要な咬傷事故対策と言えるように思う。その意味で、このような研究は犬好きの人から見たら許せないだろうが、重要な論文だと思う。
posted by しっぽ@にゅうす at 03:06 | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする