動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2019年08月20日

ワンコに効くがん治療は、人間にも効く!? 比較腫瘍学が教える犬と人の共通点


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ワンコだってがんになる
 年をとるとがんを発症しやすくなるのは、ワンコも同じらしい。10歳を超えた犬の死亡原因の1位はがん。犬の10歳といえば、人間でいえば50代後半から60歳くらいだ。ちょうど私たちも、がんが気になってくる年頃だろう。また人間と一緒に暮らしているペットの犬は、私たちと同じように、発がん原因の可能性がある環境因子にもさらされている。

 犬のがんも、人間と同じように自然発生的にいろいろな部位にできる。例えばチャウチャウは胃がん、スコティッシュテリアは膀胱がん、ボクサーは脳腫瘍、ゴールデンレトリーバーは悪性リンパ腫にかかりやすいのだそう。また犬のがんの場合も、肺や肝臓といった他の器官にも転移する。さらにがんの増殖を食い止めようとする免疫機能も人と似かよっているという。

 2003年にヒトゲノムの全配列について解析が完了したが、2005年には犬のゲノムも解析が完了している(注1)。それらを比較したところ、ヒトと犬では80%以上の遺伝子が類似していたという。これに対して新薬開発などの研究で使われるマウスの遺伝子でヒトと類似しているのは67%にとどまるそうだ。

 研究中の薬が、管理された環境下のマウスに人工的に発生させた腫瘍に対して効果を示しても、ヒトでの臨床試験ではまったく効果が認められなかったという例が沢山あるのも頷ける。

比較腫瘍学ってなに?
 米国国立がん研究所(NCI)では、がん治療を改善すべく、2003年から「比較腫瘍学」という分野で、がん専門家、医師、獣医師、基礎研究者などが協力して、ペットの犬と人間のがんの類似点を研究している(注2)。犬のがんは、腫瘍そのものも生物学的にヒトの腫瘍と類似点が多く、がん治療でも犬に対して安全で有効な治療は、ヒトにとっても有効なことが多いという。

 NCIでは米国、カナダにある24の獣医大学と連携し、骨肉腫の研究を進めてきた。骨肉腫は小児や若者にまれに発症するが、警察犬などとして活躍するロットワイラーなど大型犬にもよく見られる。これまでに犬の手術で、骨の病巣を取り除いた後に再建し、患肢を切断せずに温存する術式が開発された。今では同じ方法が骨肉腫の手術を受ける小児にも活用されているという(注3)。

手術台の上で。(米国空軍提供)
 犬とヒトの骨肉腫の遺伝子は、区別するのが難しいほどよく似ていることから、NCIは現在、骨肉腫を患った犬を対象に臨床試験を実施している。免疫細胞に、がん細胞を攻撃させるためのワクチンを投与するという新たな治療法だ。

 小児の骨肉腫のようにまれながんの場合、臨床試験を実施する上で必要な参加者を集めるのに時間がかかり、新しい治療開発が進まない現実がある。犬の臨床試験により、有効性が示されれば、骨肉腫を患う犬も新たな治療のおかげで寿命が延び、子どもの骨肉腫の治療研究にも寄与することになる。

ワンコだって免疫療法
 またマサチューセッツ州のタフツ大学では、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と呼ばれる血液のがんについても、犬を対象とした臨床試験で、異なる種類の免疫療法の併用を検証しているという。この病気でも、犬とヒトは同じ標準治療を受けている。初回治療は非常に効果的だが、その後は一定程度の患者の間で治療効果が薄れてくるため、免疫療法との併用など新たな治療法が模索されている。

 また、このがんを発症している犬、例外的といえるほど長期に治療効果が続いている犬のデータを様々に分析し、治療によく反応する分子的特徴などを確認して人間の治療研究に役立てていく計画だ。比較腫瘍学で、ワンコにとっても人間にとってもより良い治療が開発されるなんて、こんなに嬉しいことはない。

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参考リンク

注1.イヌゲノムの配列解析を発表(MIT News、英文リンク)

注2.がんのイヌと人を救う― NCIの比較腫瘍学研究(海外がん医療情報リファレンス翻訳)

注3.人間の最良の友がいかにがん治療を助けるか (The Conversation、英文リンク)
posted by しっぽ@にゅうす at 07:40 | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする