動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2019年08月27日

死亡事件も…自分の犬が他人や他人の犬を噛んでしまったら

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作家で獣医師でもある片川優子さんの連載「ペットと生きるために大切なこと」。前回は「熱中症」についておつたえした。

ペットの「熱中症」数時間で命を落とすことも…

 今年1月、愛犬を散歩させていた70歳の女性が大型犬に噛まれて大ケガをおうという事件があった。突如大型犬が愛犬のミニチュアシュナウザーに向かって突進、それを守ろうとして飼い主が噛まれてしまったのだ。また、つい8月19日にはアメリカ・デトロイトでピッドブル3頭に噛まれた3歳女児が死亡する痛ましい事件も起きたばかりだ。

 ではしつけとはどういうことなのか。しつけないとどんなことが起きる可能性があるのか、しつけはどのようにすればいいのか。具体的にお伝えしよう。

死亡事件も…自分の犬が他人や他人の犬を噛んでしまったら
毛がのびすぎると衛生上の問題が生じることも Photo by iStock
飼い犬のしつけができなかった結果こんなことに……
 ある日勤務先の動物病院に、けむくじゃらの犬がやってきた。おそらくトイプードルなのだろうが、しばらくトリミングをしていないらしく、毛刈り前の羊さながら、目も耳も埋もれてよくわからないくらい毛が伸びている。

 よくよく話を聞いてみると、小さい頃はトリミングができていたのだが、成長するにしたがって徐々に攻撃性が増していき、トリミングを断られるようになったとのこと。飼い主のお父さんの腕には咬み傷を縫ったあとがあり、お母さんは怖がって触れないと言う。どうしようもなくなって藁にもすがる思いで病院に来たのだと話していた。

 結局その犬は麻酔をかけ、全身にバリカンをかけることになった。いざ刃を入れてみると、あまりに伸びすぎた毛は複雑に絡まり合い、絡まった毛に引っ張られた皮膚には一部炎症が起こっていた。そして口元の毛からはいつのものかわからないフードが発見され、歯にも毛と歯石が絡まり合ったものがくっついており、重度の歯肉炎を起こしていた。

 トイプードルは毛が抜けず、一生伸び続ける。トリミングができないと、見た目が大変なことになってしまうばかりでなく、皮膚病や歯周病などの病気につながる可能性がある。

 その犬の気質も大いに関係することは確かだが、幼い頃からしっかりしつけていれば防げた問題だっただろう。

 しかし結局その犬は約1年後、また羊のようにもこもこに毛が伸びた状態で病院に戻ってきた……。


誰かを怪我させてしまったら
 咬傷事故は犬を飼っている人にとって、他人事ではない。環境省の調べでは、野犬も多かった昭和に比べて減ってきているとはいえ、平成28年度でも4,341件と、毎日10件以上はどこかで起きている計算になる。これは届け出があった事故に限るので、実際にはもっと多いだろう。

 「うちの子は噛み癖があるのよ」とおおらかに構えている飼い主も時々見かけるが、小さくても犬は犬、噛む力はかなり強い。本気で噛めば誰かに怪我をさせる危険が十分ある。現にわたしも、病院で預かっていた5キロ程度のトイプードルに思い切り噛まれ、長袖の白衣を着ていたにもかかわらず流血したことがあり、いまだに腕に跡が残っている。

 また、大型犬では19日アメリカで報じられた痛ましい3歳女児の事件のように、死亡事故の報告もある。敵意を持って咬みつかなかったとしても、遊ぶつもりでじゃれて飛びかかった拍子に人間が転んで頭を打ってしまう、といった場合もある。

 予防として、きちんと犬をしつけること、子供だけで犬を制御できない場合は小さな子供だけで犬を散歩させないこと、リードは外れないようにしっかり装着すること、ドッグランでは飼い犬から目を離さないこと、トラブルになった場合は連絡先を交換すること、などが挙げられる。

 しかし、もし飼い犬が咬傷事故を起こしてしまった場合はどうしたらよいだろうか。
咬傷事故を起こした場合、自治体に届け出る必要がある。例として、東京都の届け出方法が記載されたウェブページを紹介しておく。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/douso/kansen/kousyou.html

飼い犬が起こした事故の責任は飼い主
 飼い犬が原因の場合は、飼い主に責任がある。予期せぬ事故で多額の損害賠償を請求されることもあるので注意したい。ペット保険に入っている場合は、保険が下りる場合もあるので、一度規約を確認しておくといいだろう。

 保険に入っていない場合でも、最近では人間用の損害保険に、少額で動物用の保険を付帯できるサービスも増えている。少しでも不安がある場合は、そういったサービスの利用を検討してみてもよいだろう。

 逆に、自分や子供が犬に噛まれてしまった場合はどうしたら良いだろうか。
まずは、菌やウイルスの感染を防止するため、傷口を流水でしっかり洗うことが大切だ。なるべく血を絞り出すようにして洗い流す。

 出血がひどい場合は、なにかで圧迫をして止血をしながら病院に行った方が良い。
狂犬病が心配かもしれないが、日本では1957年以降、人間でも犬でも、狂犬病は発生しておらず、日本国内の犬に咬まれて狂犬病になった人は過去50年いないので安心して良いだろう。それでも不安な場合は、咬んだ犬が狂犬病のワクチンを毎年接種しているか確認し、未接種の場合は医師に伝えると良いだろう。


事故を未然に防ぐためにもしつけは重要
 犬の先祖のオオカミは、厳密な順位づけのある縦社会で生活していた。犬にもその性質は残っており、一度自分が一番上であると認識してしまうと、「部下」である飼い主の言うことは聞かなくなり、無理やり言うことを聞かせようとすると攻撃的になってしまうことがある。

 なにもタレント犬のように芸をしこむ必要はないが、少なくとも飼い主は自分より順位が上であり、人は噛んではいけないと教えるのは、飼い主の義務だろう。

 我が家でも14kgほどのシェットランドシープドッグを一頭飼育している。お手はなぜか反対の手で行うし、おかわりは両手を乗せてくるけれど、人を咬まないように、ということだけはしっかりと教えてきた。

 しつけの方法には、悪いことをしたときに叱る方法から、悪いことをしたときには無視をして、いいことをしたときだけ褒めるという方法までさまざまあり、どの方法が合っているかは犬と飼い主によってさまざまだろう。

 私はしつけのプロではないが、悪いことをした時に叱る方法を選んだ場合、大事なのは、自分の気分で叱らないこと、そして家族全員が同じ対応を取ることのように思う。「前は叱られなかったのに今回は叱られた、結局これはやっていいのかな悪いのかな?」と犬が感じると、混乱してしまう。

 また、女性にありがちだが、例えば犬がそそうをしたとき、高い声で騒ぐと、犬は喜んでくれていると感じることがあると聞く。特に女性は叱る時は毅然とした態度で、低い声を出すと良いかもしれない。

死亡事件も…自分の犬が他人や他人の犬を噛んでしまったら
増田家のラヴちゃん(写真左)は卒業試験にも無事合格! 新しくきたシヴァくんとも仲良し 写真提供/片川優子
興奮吠えをする親の犬をしつけるために
 しかし実際に、自分の力だけでしつけを行うのは難しいケースもある。

 先日、2頭の犬を飼う増田夫妻に話を伺う機会があった。

 増田夫妻は2年前、ある事情から、親が飼育していた5歳の柴犬、ラヴちゃんを引き取った。甘やかされ、特にしつけもされずに育てられたラヴちゃんは、引き取った当初、人が好きすぎるがゆえに、散歩中誰かに会うと興奮して吠えてしまっていたのだという。朝の5時から散歩に行きたがり、要求吠えをするといった「問題行動」も見られた。

 散歩中立ち止まると吠えてしまうため、近隣住民とのコミュニケーションもままならず、迷惑をかけるのを気にして人を避ける日々。数ヶ月増田夫妻だけでしつけを試みたが、5年間放置された興奮癖は治らず、プロのドッグトレーナーへしつけを依頼することにしたそうだ。

 増田夫妻が選んだのは、訓練士が家まで来てくれる出張訓練。ドッグランや自宅近くの散歩コースで、訓練協力してくれる「卒業生」たちにも協力を仰ぎながら、訓練士と10回のトレーニングを終え、ラヴちゃんは卒業試験に無事合格することができた。

プロに頼んで犬も人もハッピーに
 「散歩を通じて地域の人たちと仲良くなれたり、訓練協力を通じて犬友ができたのが嬉しい」と笑顔で話す増田夫妻。その後ラブラドールレトリーバーの子犬、シヴァくんを新しく飼い始めた際も、迷わず訓練を依頼したという。シヴァくんの場合は、特に治したい癖があったわけではないので、トイレトレーニングなど基礎的な訓練をみっちり行ったそうだ。

 実際に散歩に同行させてもらったが、2頭ともとても落ち着いて増田夫妻のそばを歩いていた。ラヴちゃんからも、興奮癖があって人を見ると吠えてしまっていた過去など想像ができなかった。新入りのシヴァくんとの仲も良いという。

 ヨーロッパでは飼い犬と一緒にバスなどの公共交通機関に乗ることができ、他の市民もそれを当たり前のこととして受け入れているそうだが、それはほとんどの犬が幼い頃にしっかりとトレーニングを受け、犬の幼稚園に通い、社会性を身につけるからだという。

 日本では、訓練士にしつけを依頼するのは、先に述べたラヴちゃんのように、少なからず「問題行動」の見られる犬が多いようだ。しかし、子犬のうちからプロの手を借りてしっかりとしつけを行うと、その後犬との生活がぐっと楽になるばかりでなく、行ける場所やできることが広がり、犬にとってもプラスになる。これから犬を飼う人や問題行動に悩んでいる人は、一度プロによるしつけを検討してみるのもおすすめだ。

 これから涼しくなり、愛犬とのお出かけが楽しくなる季節になる。一緒に楽しくお出かけをするためにも、愛犬のマナーやしつけについて、今一度家族で話し合ってみるのもよいだろう。

片川 優子
posted by しっぽ@にゅうす at 07:47 | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする