動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2019年08月30日

他人のペットに無断でおやつ…善意の「ジャーキーテロ」が動物を苦しめる

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ペットフードの健康被害
 生協の食材宅配を行っている『生活クラブ』が販売していたペットフード「犬・猫用ササミ姿干し 無塩」を食べたペットの嘔吐や下痢などの健康被害(68件)があり、その中の14匹が死亡したという報告が8月19日に上がった。製品からは微量のサルモネラ菌などが検出されたという。ペットと暮らしている人にとっては、他人事とは思えないニュースだ。

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 日本国内のペットフード市場は、今や3440億円(2018年度)と巨大化している。平成21年には環境省と農林水産省によって、ペットフード安全法が施行された。が、ペットフードは、食品衛生法の規制対象外で、今回問題となったペットフードも食品ではなく、生活用品のカテゴリーになっていたのだ。もちろん、きちんと健康面を考えたメーカーや商品も増えているが、人間の食品基準に比べると曖昧な基準が多いという現状もあるのだ。

 動物保護シェルターを運営している特定非営利活動法人『ランコントレ・ミグノン』の友森玲子さんのもとにも、ペットのフードがらみの困った相談が数多く寄せられるという。一体どんな問題が起きているのか、詳しく話を伺った。

譲渡会でケージにペットのおやつを投げ入れる人
 保護動物の現状を多くの方に知ってもらうために、私が運営する保護団体では、環境の良いギャラリーなどを借りて、出張譲渡会を年に数回行っている。それは、外苑にあるギャラリーでのこと。来場してくれた方々と保護動物について話をしているときだった。さっきまで大人しかった動物たちが声を上げて突然騒ぎ始めた。何が起きたかと思い振り返ると、一人の女性がファスナー付きビニール袋から何かを取り出して、ケージ内に次々と投げ込んでいたのだ。

 「あ! ちょっと待って! やめてください!」

 叫んでケージの中へ手を突っ込み、投げ込まれたものを必死にかき集めた。多くの動物たちは口に含み、大半を食べられてしまっている……。拾ったものをみると、なんだかよくわからないササミのようなものだった。

 投げ込んでいた女性は、必死な私の様子を怪訝な顔して見ている。
「一体何を投げ込んだのですか?」とできるだけ冷静に女性に尋ねると、
「ここにかわいそうな保護動物がいるって聞いたから、わざわざ食べ物を持ってきてあげたのに! 一体あなたはなんなんですか!!」と逆ギレされてしまった。

 この保護動物を管理している責任者であると伝え、さらに、ここにいる動物たちが良い健康状態で譲渡されるように、フードもおやつも添加物の少ない安全なものを選び適正な量を計算して与えていること、また、健康状態によってはおやつを制限している動物もいることを伝えた。「申し訳ないのですが、食物を与えるのはご遠慮いただけますか?」というと「人の善意を踏みにじって!」と捨て台詞と共に持ってきた犬用のおやつとゴミを捨てて帰ってしまったのだ。


犬の散歩中、突然やってくる“ジャーキーテロ”
 こういった動物たちの食べ物トラブルは、譲渡会以外でも起きている。最近よく相談を受けるのが、犬の散歩中のトラブルだ。散歩中に出会う人が、あきらかに粗悪なジャーキーを会うたびに犬に食べさせてしまうという。散歩のルートや時間を変えたのに、まるで待機しているように出会ってしまう、と困り果てている人もいた。最近あまりにそういう話が多いので、私はそういった行為を“ジャーキーテロ”と呼んでいる。

 この問題が厄介なのは、ジャーキーテロをする側に悪気が一切ないことだ。逆に、オヤツをくれることで犬たちが懐くため、「自分は犬たちに喜ばれることをしている」という自負を持っている人が多い。そのため、無下に断ると「好意を無にして!  ヒドイ! 裏切られた!」というムキになる人もいる。

 しかも、ジャーキーテロをする側は、いかに効率よくたくさんの犬達におやつをあげられるか日々研鑽を積んでいる。こちらが、「あ! どうしよう」と思うまもなく、犬に向かって的確にかつ素早くジャーキーを投げ与えるなどの技術を持っている。飛翔距離内に入ってしまったら最後、断る猶予なく食べさせられてしまうのだ。

 「投げられたジャーキーを犬が素早く飲み込み、呆然としていたら、“ナイスキャッチ! ”とうれしそうに叫ばれてしまい、もうどうしたものやら」と相談に来たボランティアさんは愚痴っていた。

 もしもこのような現場に出会ってしまったら、投げられたジャーキーが視界に入った時点でUターンして素早くジャーキーの飛翔距離内から脱出することだ。距離的に逃げようがない場合は、投げられたジャーキーを食べる前に、家から持参した安全な食物を犬に与え、素早く取り上げるしかないだろう。そして、話ができる相手であれば、「うちの犬はアレルギーがあるんです」とか「糖尿病で食事制限があるので……」といった断り方が無難だろう。

他人のペットに無断でおやつ…善意の「ジャーキーテロ」が動物を苦しめる
保護動物=安価な食事で十分というのも、おかしい。健康重視で考えるべきだ。写真/友森玲子
小さな動物ほど、健康への影響も出やすい
 「そんな、犬や猫のおやつぐらいでちょっと神経質になりすぎではないか」
「人間でもあるないし、動物にそこまで気にするのはおかしい」と思う人もいるかもしれない。

 でも、実は個体が小さな動物たちだからこそ、人間以上に食が影響しやすい。一般的な小型犬の場合、体重が5kgとすると人間の約1/10の体重だ。あげる側にとっては、ほんのジャーキー数本のつもりかもしれないが、犬の体重換算すると数十本という量になってしまう。そのため、常識的な飼い主はフードの量やおやつなど副食の量にも気を遣っている。

 今回のペットフードの安全管理の事故のように、安全性が不確かなフードもまだまだ多く存在している。私が運営する保護施設でも、保護動物に与えるペットフードやトリーツ(しつけなどを行う際に使用するご褒美)、口に入る可能性がある猫砂なども品質などを選んで決まったものを使用している。支援してくれる方にも銘柄を指定してサポートいただく形を取っているのだ。

 「そんな昔の犬や猫は、人間の食べ物の残りものを食べていても元気だったのに、細かいこと言い過ぎ」と言われることもある。でも、そういった食事を与えられていた頃の動物たちは短命だった。人間の食べる食事は犬や猫にとっては塩分も高いだけでなく、必要とする栄養バランスが異なるため、不足する栄養素も出てくる。また、玉ねぎや香辛料など、人間にとっては無害でも動物には食べると有害なものも意外と多い。

 また近年では、動物たちの食物アレルギーも認知され、発症数が増えている。そういった動物たちは、特定のタンパク質などを避ける食事を動物病院などで指導されながら生活していることも多い。子供同士のおやつでもアレルギーの問題などが話題になるが、ペットでも広まっていることを知っておいたほうがいいかもしれない。

ジャーキーテロで死亡事故も起こりかねない
 さらに、糖尿病の動物の場合、事態は深刻だ。一日の給餌量や時間を厳密に管理し、それに合わせてインスリンの量が決まる。過剰におやつやフードを与えられてしまえば高血糖に陥り、そこから様々な合併症を引き起こし命にも関わってしまうのだ。飼い主は検査費用の面でも大きな負担をしながらやっと維持をしているのだ。

 他にも、蛋白漏出性腸症の動物は、徹底した低脂肪食で管理をしないと低蛋白血症に陥り、下痢が止まらなくなり、腹水が溜まるなどして最悪の場合は死に至ってしまうこともある。腎不全や心臓病なども食事の管理を徹底しなくてはいないのだ。しかも、そういう食事管理されている犬や猫ほど、おやつを見せられたら我慢ができない。普段食べることができないジャーキーが散歩中に飛んできたら夢中に飲み込んでしまうに違いない。

 自分が動物を飼っていなかったり、飼っていても食餌管理が必要な状況になっていなかったりすると、「そんなに大変なことなの?」と想像できないかもしれないが、“むやみに食物を与えることは傷害を与えること”になってしまう場合もある。ジャーキーテロを起こしている人だって、動物を病気にさせようと思っているわけではなく、動物が好きで好かれたいがためにしているはずだ。だからこそ、ジャーキーテロの危険性を多くの人に知ってほしい。

他人のペットに無断でおやつ…善意の「ジャーキーテロ」が動物を苦しめる
動物はどう思う? という気持ちで接すれば、おやつがなくても仲良くなれる。撮影/山内信也
ジャーキーなくとも仲良くなる方法とは?
 ジャーキーテロを行う人は、犬や猫を仲良くなりたい、ふれあいたいと思っている人が多い。確かに、ジャーキーを持っていれば、動物たちは飛びついてくる。しかも、回数を重ねれば、ジャーキーをくれる人と認識してくれるから、仲良くなる時間は短縮できてしまう。これが、ジャーキーテロを繰り返してしまう要因だろう。

 では、ジャーキーを使わずにどうすれば仲良くなれるのだろうか? ここ数年、SNSでは動物の動画が増えた。「元保護犬の〜ちゃんに会いました! 怖がりさんだけど可愛い! 人間は怖くないですよ〜!」と嫌がる動物にカメラを向けて、大きな声で犬に語りかけている動画を見たが、これは犬を怖がらせるばかりで追い詰めてしまう。人間と犬は友達だから、どんな人間でも必ず仲良くなれる、と思いがちだが、そんなことはない。人間でも人見知りの人がいるように、動物でも打ち解けるのに時間がかかるタイプもいる。

 特に動物の場合、安全な人であるか、というのが重要な要素になる。「可愛い〜!!」と大きな声で奇声を上げれば当然、怯えてしまう。黒く光るカメラも武器に見えるのか嫌がる動物は多い。想像してみてほしい。自分よりも大きな人がいる中で、大きな声を上げてカメラを近づけて撮影されたら、嫌なはずだ。

 好かれるのは、物静かで控えめな人間。まずは、しゃがむなど姿勢を低くして自分を小さく見せる、攻撃する気はないという意思表示のために視線を外す、可愛いからとじっと見つめてしまうのは逆効果なのだ。

 この段階で近づいて来れる動物はとてもフレンドリーなので、指先を近づけたりして匂いを嗅いでもらい、触っても嫌ではなさそうな場合だけ撫でさせてもらう。このときもちょっと動物の気持ちになって考える事が大切だ。自分が知らない人に身体を触られたときにどう感じるか想像してみよう。親しい人に肩をポンポン叩かれるぐらいなら気分がよくても、しつこく背中をさすられたり、ギュッと抱きしめられたら居心地が悪くなるだろう。しつこくなり過ぎない程度に触れ合い、喜んでいる場合だけたくさん撫でてあげよう。

 動物と人間を同じように語るな、とお叱りを受けるかもしれないが、私はベースは同じだと思っている。自分勝手な思いだけで近づけば、それは嫌がられてしまうものだ。ジャーキーテロに遭遇しないだけでなく、知らぬ間に自分が、ジャーキーテロリストにならないためにも、今回の知識をぜひとも参考にしてほしい。

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「いぬねこなかまフェス2019〜動物愛護週間に集まろう〜」9月23日開催! 
毎年9月20日〜26日は、「動物の愛護と適正な飼養についての理解と関心を深める」ことを目的とした動物愛護週間。友森玲子さんが動物を愛する多くのゲストと共に登壇するイベントも開催されます。登壇者(50音順)akiko、浅田美代子、糸井重里、スティーヴ エトウ、大槻ケンヂ、坂本美雨、鈴木杏、椿鬼奴、富樫春生、友森昭一、友森玲子、町田康、水越美奈 ほか詳しくはこちらから→https://www.1101.com/pl/mignonplan/
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友森 玲子


posted by しっぽ@にゅうす at 08:58 | ペット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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