動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2019年10月12日

犬も猫も高齢化…ペットが最期まで健やかに生きるため、飼い主に求められること

Yahoo! JAPAN



高齢化社会といわれて久しいですが、人間だけでなくペットの高齢化も進んでいます。筆者も日常の診療の中で、高齢動物を診察する機会が非常に増えたと感じています。一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2018年の犬の平均寿命は14.29歳、猫は15.32歳でした。2010年の犬13.9歳、猫14.4歳に比べ確実に延びています。寿命が延びた要因としては、動物医療の高度化やペットに対する健康意識が向上したことなどが考えられます。

 ペットが最期まで健やかな生活を送るために、飼い主はどのように対応すればよいのか、お伝えします。

健康寿命を意識する
 ペットの平均寿命が延びたことは、いいことだと思うかもしれません。しかし、例えば人間の場合、医療に頼らない自立した生活が可能な生存期間、すなわち「健康寿命」と平均寿命との差、つまり、病気などで日常的に制限のある「健康ではない期間」は男性で約9年、女性で約13年といわれています。

 死ぬ前の9年間、あるいは13年間が何かしら不健康な状態だと想像するのは恐ろしいことですが、それはペットにも当てはまります。ペットが最期まで健やかに自立した生活を送るためには、健康寿命を延ばすことが重要になってきます。

 そもそも、犬や猫の老化するスピードは人間の約4倍です。1年で人の4〜5年分生きることになります。ペットの年齢に関して明確な定義はありませんが、大型犬は7〜8歳、小型犬や猫は8〜9歳で人間のシニア(50歳以上)に相当すると考えてください。人間の高齢者(65歳以上)に当たるのは大型犬で9〜10歳、小型犬や猫で11〜12歳です。筆者も先日、還暦を迎えましたが、10歳以上の犬や猫を診るとき、「君も大変だよね、分かる、分かる」と思いながら診察しています。

 健康寿命を延ばすために、飼い主は、まずはペットの老化を理解し、早い段階でかかりつけの獣医師に相談することが非常に大切です。老化による変化で、まず分かりやすいのは体重の減少です。消化機能が衰え、食事を取る量が減るためです。次に、筋肉量の減少にも気をつけましょう。筋肉量が減少するとエネルギーの要求量が減り、結果的に基礎代謝が低下していきます。肥満体形の場合は動くことが少なく、さらに基礎代謝が低下するので注意が必要です。

 筋肉は免疫をつかさどっているといわれ、筋肉量が減ると免疫力の低下にもつながります。そのため、筋肉量はぜひ維持したいところです。運動はもちろんのこと、高タンパクの食事を摂取させる必要があります。特に、猫は老化とともにタンパク質の消化力が低下しますから、できるだけ良質なタンパク質を摂取させることが必要です。

 ここまでは老化によるものですが、ここからは既に病気に陥っているケースについて紹介します。例えば、診察の際に「物にぶつかるようになった」「私が帰宅しても全然気が付いてくれない」「食のより好みが多くなった」などの相談が寄せられることが多々あります。

 物にぶつかる犬や猫は、視力が低下している可能性があります。「帰宅しても気付かない」というのは、耳が聞こえない、目が見えないなど五感が鈍くなっていることが考えられます。食事のより好みは味覚や嗅覚が鈍った可能性があります。さらに「食べるスピードが遅い」「食事の際に口の中に入れたものをこぼす」という相談もありますが、これは口の開け閉めに問題があったり、歯科的な疾患が存在したりする可能性があり、注意が必要です。

「毛が薄くなった」というペットは、内分泌系の病気が考えられ、「よく眠る」は具合が悪くて病的に眠っている可能性もありますし、聴覚や視覚などの衰えで「起きる必要がない」と判断して眠っている場合もあります。

「高いところに登れなくなった」「転びやすくなった」「散歩をしたがらなくなった」という相談も多いです。いずれも運動感覚の機能、筋力の低下、関節疾患などの整形外科的な原因が考えられます。「年だから仕方がない」と放置すると健康寿命の短縮につながります。そうならないためにも、かかりつけの動物病院に連れていくなど飼い主がサポートする必要があります。

 動物は自分の意志では動物病院に行けません。病気を見逃さないためには、日々の観察のほかに定期的な健康診断が欠かせません。ある一定の年齢になったら、血液検査だけでなく、尿検査、レントゲンや超音波検査などが最低限必要になってきます。


相談できる環境を持つことが大事
 ペットの高齢化に伴う諸問題により、飼い主の生活が圧迫されるケースもあります。特に高齢者は、自身の病気や入院が原因でペットを飼えなくなるケースもありますから、家族や近所の人、かかりつけの動物病院など、常に相談できる環境を整えておくことが大切です。そのためには、飼い主本人の社会性が重要になってきます。人付き合いが苦手な人もいるとは思いますが、自身のペットを守るために日頃から周囲との関係性は大切にしたいものです。

 例えば、高齢の人はペットを飼えなくなったときに備えて、譲渡先を決めておくことも選択肢の一つとして大切です。確かに、最後まで責任を持って飼うという意識も重要ですが、できないことを無理に頑張るより、動物福祉の観点からも、むしろ、ペットが健やかに暮らしていけるための環境を整えることの方が重要です。

「飼えなくなったら保健所」ではなく、家族、友人、見ず知らずの人でも大切に飼ってくれる人、または、そのような活動をしている団体と日頃からコミュニケーションを取って準備することをお勧めします。そのためには、社会全体がペットを取り囲むさまざまな環境、考え方を受け入れる寛容な社会であることが求められます。

 また、動物病院は病気を治すためだけの施設だと思っている人も多いかもしれませんが、私たち獣医師は治療以外にも、飼育方法や日常の困りごとのアドバイスなど、多種多様なことに対応してきています。実際に、私の病院にはさまざまな人が相談をしにやって来ます。その人たちの質問、相談に答えていくことも大事な仕事だと考えていて、特に高齢で1人暮らしの人には「何かあったら連絡してくださいね」と伝えています。

 実際に先日、午前3時ごろに80代の高齢のご婦人から「私、転んで骨折しちゃったみたい。病院に行くにも猫ちゃんの方が心配だから先生迎えにきて」と電話がかかってきたので、夜中に猫を迎えに行きました。この女性とは長年のお付き合いで、お人柄、生活環境など、さまざまな事情を把握していたのでそういう行動を取ることができました。ときに獣医師は、動物だけではなく飼い主をサポートしなければならない局面もあるのです。

「自分や周囲に何かあったら、先生は何をしてくれるのか」「どこまでやってくれるのか」など、踏み込んだ話を日頃からかかりつけの動物病院の先生としてみてはいかかでしょうか。人も動物も高齢化する社会の中、病気を治すためだけではなく、ペットとの生活のさまざまな問題に対応できる能力を動物病院も求められているのかもしれません。

成城こばやし動物病院院長・東京都獣医師会副会長 小林元郎
posted by しっぽ@にゅうす at 08:17 | ペット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする