動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2019年10月13日

【台風や災害の多い日本で】「ペットと避難」のために知っておきたいこと

Yahoo! JAPAN



ボランティア施設も避難勧告
「きっと連れて逃げられないからあきらめている」
「救助も避難も迷惑になるから犬といっしょに家にいるだろう」
「人命優先なのもわかるから避難所にはいかないと決めている」……。

【一時預かり場所にも避難勧告】台風15号千葉の断水と停電…「ペットの一時預かり」ドキュメント

これは、SNSにつぶやかれた「ペットと避難ができない」という悲鳴の一部だ。

動物保護と譲渡活動の新しい形を模索し続け、震災のペット問題にも長年尽力してきた特定非営利活動法人ランコントレ・ミグノンの友森玲子さん。先日の台風15号被害のときには、千葉の東金で緊急のペット一時預かりを行った。しかし今回の台風19号では、その東金や、ミグノンのある地域そのものも避難勧告が出た。

友森さんはツイッターで次のように呼びかけた。「東金シェルターの地区に避難勧告level4が出ました。残念ながら避難所はペット不可なので避難しないで頑張ると管理人が言って困っています。同行避難できる場所がありましたら情報をください」

いまや、どこに住もうが、ペットを飼う一人一人が、「ペットとの避難」について意識を持つ必要があるのだ。

そこで今回は、友森さんが広島・岡山・愛媛など西日本を中心に被害が増大した2018年7月21日に寄稿してくれた、集中豪雨災害のときのペット環境の現実と解決策を改めてお伝えする。

【台風や災害の多い日本で】「ペットと避難」のために知っておきたいこと
一度野に放たれたペットは、災害や人へのおびえがあってなかなか捕獲が難しい 写真提供/ミグノンプラン
行政や獣医師会、ボランティアが徐々にサポート
2018年の夏に豪雨被害が発生した当初、SNSでは、「ペットOKの避難所がない京都市」「ペットといっしょにだとダメだと言われた」など、ペットとの避難は、困惑、混乱するコメントが多くアップされた。

その後徐々に、避難所を案内するボランティア系のコメントやサイトがなどがアップ。さらに、合わせて行政などの動きも整い始め、12日までで、下記のような動きがあった。

岡山県獣医師会:倉敷市内でペットを無料で預かってくれる動物病院12箇所やペットショップ3箇所がリストアップされた。また、15日には倉敷市真備町地区のペット同行避難所を獣医が巡回し、ペットの健康相談などにも応じた。
広島市災害緊急ペット相談窓口:ホームページ内に開設し、行方不明動物や一時預かりの相談などを受け付けている。
中でも、ペットと暮らしている人たちに賛同されたのは、岡山県総社市だ。あとで詳しく触れるが、“ペットと同伴避難”できる避難所を提供し、真備町の避難者も利用できる体制にしたという。

総社市庁舎内の会議室にできたペット避難所は、エアコンも完備され、飼い主もいっしょに避難できる理想的な避難所だ。SNSでも取り組みを賞賛する声が多く書き込まれた。

ボランティアなどのサポートで次第に補われつつはあるが、ペットとの避難は地域によってかなり格差があるというのが現実のようだ。

●東日本大震災であったこと

2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震などで、ペットにまつわる避難がたびたび問題になった。

倒壊家屋に住んでいながらもペットがいるため避難しない人、家にペットだけを置いて餌やりなどで戻る人が、二次災害に見舞われ命を落とされるケースが発生した。また、避難所ではペットと終始いっしょにいられないことで車中生活を選び「エコノミークラス症候群」などの災害関連死も課題として残った。

また、緊急な避難要請や避難所にペットを連れていけないなどの理由から、泣く泣くペットを置き去りにしたり、野に放つケースも少なくなかった。

私自身、福島や熊本と被災地で、動物保護活動などを行ってきたが、一旦、野に放たれてしまった犬猫を捕獲し保護するのは大変だ。災害の恐怖から怯えて、人を怖がる動物をストレスを与えないように捕獲する。捕獲した動物たちは、迷い犬届けを出されているかなど飼い主を捜す作業をまず行う。飼い主がいない場合、その後の譲渡という流れになるが、そこに行き着くまでに、とても時間を要してしまうのだ。


保護した犬猫のうち、飼い主さんに戻せた動物はたったの1割程度。残り9割は「狭い避難先で吠えてしまうため飼えない」、「飼い主が震災によって体調不良になってしまった」、「家族がバラバラに避難していて世話できない」などの理由で飼い主に戻すことなく、譲渡されることになった。また、結局飼い主を探し出せなかったケースも非常に多かったのだ。


躊躇は、人も動物も不幸にする
災害時は、人間の避難先も環境や整備も不十分だ。厳しい環境の避難所が多いため、ペットと一緒に避難することをためらってしまう人も多い。

また、実際災害が起きていない人たちは危機感があっても、「ペットとの避難は大変なのはわかっている。でも、災害が起きたらそれはそれで。きっとどうにかなるだろう」と対策ができてないのが現実だ。

しかし、災害は突然起こる。「迷惑がかかるのも嫌だし、もう少し家にいようかな……」と躊躇する気持ちも理解はできるが、危機が迫ってから犬や猫を入れたキャリーバッグを抱え、逃げるのは非常に厳しいものがある。愛するペットばかりか自分の命も危険にさらされてしまうことにもなってしまうのだ。

ペットがいるからこそ、躊躇するのではなく、早めの判断、早めの行動で、ペットと避難することを考えておいてしてほしいと思う。

●同行避難と同伴避難は大きく違う

この「ペットと避難」に関しては、環境省が2013年に『災害時におけるペットの救護対策ガイドライン』を作成した。これは、東日本大震災でペットと避難問題が浮上し、はじめて自治体が作ったガイドラインだ。

しかし、2016年の熊本地震で、さらに課題が生まれたこともあり、2018年3月に名称も『人とペットの災害対策ガイドライン』と変更し、改訂版を出したばかりだった。

ちょっと長いが、細かく書かれているこのガイドラインには、行政の姿勢だけでなく、基本行動、持ち物なども詳しく書いてある。ペットと暮らしている人であれば一読しておくべきだと思う。

このガイドラインのポイントとなるのは、“同行避難”と“同伴避難”の意味の解説だ。熊本地震では、このふたつの言葉が混在し、飼い主たちを困惑させた。1文字しか違わない言葉だが、実は意味は大きく異なる。

“同行避難”は、「飼い主がペットを連れて、指定緊急避難場所などに避難すること」で、飼い主とペットがまずは安全な場所に避難することを意味している。環境省も、飼い主とペットの命を守るために、この“同行避難”を推奨している。

ところが、避難所に行くと、人は室内に案内されるが、ペットは外だと言われ、室内でいっしょに過ごすことは不可能だと告げられ、飼い主が困惑や失望する事態が発生してしまった。

避難所でペットをそばに置いていっしょに避難生活することは、正式には“同伴避難”と呼ばれている。同行避難した先の避難所で、ペットと同伴避難ができるかは、自治体や各避難所ごとの判断になる。

今回、総社市の同伴避難所が話題になったが、取り組みとしてはまだまだ少数派。「ペットを受け入れる=同伴避難」ではないということは頭に置いておくべきだ。


ペットとの避難の実態
「ペット受け入れ可」と言っている避難所の多くは、人とペットの避難エリアは別。避難所には、動物が苦手な人もいれば、動物アレルギーの人もいる。また、ニオイを気にする人もいる。

そういった問題を緩和するために、人の環境と離れた校庭や駐車場などにケージを置いてペットスペースを作ることが多いようだ。

設備は、日よけのビニールシートなどがある程度。真夏の場合、熱中症などの問題も発生しがちだ。避難所の規模や環境にもよるが、猛暑や極寒、豪雨の中、野外環境はペットの健康を損なってしまうこともある。避難環境が厳しい場合は、早めに避難所運営者や自治体などに、少しでも改善できるスペースの確保や工夫を交渉していくことも必要かもしれない。

今回の災害でも、獣医師会や動物愛護ボランティアなどの協力で、無料の一時預かりなどの動きもでてきている。そういったサポートを利用するのもよいだろう。

また、一旦同行避難した後、自宅が倒壊や浸水などの危険がなければ、“自宅避難”もひとつの選択だ。自分が住んでいる自治体ではどんな可能性があるか、を事前に調べておくこともおすすめしたい。

ここまで読んで、「やっぱりペットの避難環境は悪いんだ」とか「同伴避難ができないならしない」と思った人もいるかもしれない。確かに、災害時には人命救助が優先される。犬や猫も助けて、とSNSに書き込めば「税金でなぜ動物を助けるんだ」という声も上がってくる。

熊本地震以降に発表された『平成28年度避難所における被災者支援に関する事例等報告書』(内閣府:2017年4月発表)によると、避難所内にペットを入れてほしくないと感じた人は、35.5%という結果だった。

ペットを避難所に入れてほしくない理由の1位は臭いが気になる(糞尿臭)、2位は鳴き声や音が気になる、3位はペットアレルギーが心配、という声だった。

しかし、この1位と2位は飼い主のケアで改善することは可能だ。1位のニオイ問題は、日頃からトイレのしつけはきちんと行っておくこと。避難の際に、ペットシーツやタオル、トイレ用品、排泄物の処理用具などを準備しておくことが大事だ。

2位の鳴き声、音問題も日頃の準備が重要になる。ほとんどの避難先では犬猫は“ケージ”での生活が中心となる。まったく練習せず、いきなりケージに閉じ込めてしまうと動物は騒いでしまう。普段から、部屋の中にケージを設置し、お出かけ時や寝るときはここで、と躾けておけば、環境の変化があっても動物たちもストレスが軽減される。

また、熊本地震の時には避難所で、ノミが大量発生したことが問題になったことも。ノミの駆除はもちろんのこと、複数の動物が集まる場なので予防接種も定期的に行っておくべきだ。

35.5%の人は迷惑に感じても、65%近くの人はペットの受け入れを認めてくれているのだから、こちらも指摘される問題点を改善することで、支持する数値は上げることも可能だと思う。


ペットがいるからこそ、防災訓練に参加しよう!
ペットとの避難についての知ってほしい基本情報をあげたが、大事なのは、他人事ではなく“自分事”にしていくことだ。そのためには、まず何か起きたときに、ペットとともにどのように行動するかをシミュレーションしてほしいと思う。

私の家には、保護している子猫やらうさぎやら、さらにペットの猫もいる。子猫たちは斜めがけのキャリーに、うさぎはそれぞれのキャリーに入れてと、実際に運べるかも試してみた。

一時避難でまずは、家にいるすべての動物と避難。二次避難でケージ、食器、水、フードを自宅から避難所へ運搬。ケージを設置して動物たちの置き場所を確保したら、そのまま徒歩で運営している保護施設に移動して、そちらの動物たちのケアを……、と自分の行動をシミュレートしている。そうはうまくはいかないかもしれないが、練習しておくことは必要だ。

また、地域で防災訓練が行われる場合は、ペットを連れて参加してみてほしい。「ペット参加可」と書いていなくても、ペットを連れての参加者が増えれば、地域でペット数が多いことを自治体にもアピールできる。ペットの避難対策を考えねば! という危機感ももってもらえるかもしれない。

なにより、参加することで自治体に顔見知りができ、意見も言いやすくなる。さらに、ペット参加者同士が知り合いになれば、万が一の際に助けあうこともできる。“積極的に関わる”ということが、自分の意識だけでなく、行政や周囲の意識も変えていく力になる。私はそう信じている。

友森玲子
posted by しっぽ@にゅうす at 09:02 | ペット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする