108匹のネコに協力してもらい実験
<ネコだってイヌや人間の子供と同じくらい人との間に強い絆を育む場合があるとの研究が>
イヌに比べてネコは気難しく、飼い主のことに興味がない──ぺット好きの間ではそれが「定説」のようになっている。
しかし、最新の研究によると、この常識は間違いらしい。ネコもイヌ(や人間の子供)と同じように人と絆を育み、その人がそばにいると安心するようだ。
カレント・バイオロジー誌に最近掲載された論文によれば、オレゴン州立大学の研究チームは、ネコと飼い主の協力を得ていくつかの実験を行った。実験には、生後3~8カ月の子ネコ70匹と1歳過ぎのネコ38匹が参加した。
ネコたちは飼い主と一緒に初めての部屋に入れられて、まずそこで2分間過ごした。続いて飼い主が退出して2分間過ごし、その後で再び飼い主と一緒に2分間過ごした。
研究者たちはこの間のネコたちの反応を調べて、飼い主との絆の強弱を判定した。具体的には、飼い主と引き離されたときに鳴き声を上げたか、飼い主と再会したときにどのような反応を示したかなどを観察した。
すると、飼い主と強い絆で結ばれていると見なせたネコが約65%、絆が弱いと見なせたネコが約35%だった。研究チームが論文で引用している研究によると、65%という数字は、人間の親子の関係とほぼ同等で、イヌよりも大きい。イヌの場合は、絆が強いケースが58%、弱いケースが42%だ。
飼い主は安全と安心の源
研究チームによれば、この実験結果は、ネコもイヌと同じように、生物の種を超えた絆を育む能力がある証拠だという。
この研究は、ネコとの絆に不安を感じずにいられない飼い主たちにとって朗報と言えるだろう。保護施設から引き取られるネコの数を増やす効果もありそうだと、論文の執筆者の1人であるクリスティン・ビターレは本誌に語っている。
「世話をする人との間に強力な絆が育まれれば、ネコの行動や幸福度に好ましい影響がある」と、ビターレは言う。「ネコと人間の絆について理解が深まれば深まるほど、有効な接し方を提案できるようになる。そうなれば、施設から引き取られるネコの数が増えるし、引き取られた後のネコの行動上の問題にも対処しやすくなる」
飼い主も学べることがありそうだ。「ネコたちは飼い主を安全と安心の源と見なしている」と、ビターレは言う。「ストレスのかかる状況に置かれたときに飼い主がどう対応するかは、ネコたちの行動に直接的な影響を及ぼす。それを忘れないでほしい。ストレスの強い状況では、ネコを慰め、安心させる接し方を心掛けるべきだ」
ただし、カリフォルニア大学デービス校のミケル・デルガド研究員(ビターレらの研究には関わっていない)によれば、この研究の結果を一般化するわけにはいかない。「実験の結果は、それぞれのネコの性格に左右される」からだと、デルガドは本誌に語っている。
この研究結果は、ネコが飼い主に対して感情を抱けることを意味しているのか。「ネコはイヌとも人間とも違う。イヌや人間と同じように行動すると決め付けるべきではない」と、デルガドは言う。「それでも、ネコが人間に対して愛情や愛着を示す場合があることは間違いない。 ネコはなじみのある場所で過ごすことを好むので、自宅でのネコの態度を見れば、ネコにどう思われているかが分かる」
イヌは飼い主に似るというが、ネコもそうかも。
カシュミラ・ガンダー