動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2019年11月23日

「ゾウは、いません」消える人気動物、迫られる動物園改革

産経新聞社



全国の公立動物園で、ゾウやトラなど人気動物が姿を消しつつある。動物保護を目的とする条約の厳しい規制や購入費の高騰により、高齢で死亡しても次の個体を調達できないケースが多いからだ。専門家は「動物園が“過渡期”にきている」と指摘する。経営主体のほとんどは自治体で、限られた予算やエリアの中、人気動物に頼らない改革に迫られている。

 「天王寺動物園にゾウはいません」

 大阪市立天王寺動物園(同市天王寺区)のゾウ舎の入り口にはこんな張り紙が貼られている。昨年、アジアゾウの「ラニー博子」(雌、推定48歳)が高齢と病気のため死んでから、代わりのゾウはやって来ず、展示スペースは静まり返っている。

 ゾウだけではない。9月には、アムールトラの「虎二郎」(雄、7歳)が死に、10月には唯一いたコアラの「アーク」(同、12歳)も繁殖のため英国へ旅立った。

 同園は、アジアゾウとトラは新たな個体を迎えるべく国内外の動物園と交渉中だが、時期のめどは立っていない。コアラについてはアークを最後に飼育をやめる決断をした。

 日本動物園水族館協会(東京)の岡田尚憲事務局長は「全国の動物園でゾウやキリン、ゴリラといった人気動物が手に入りにくくなっている現状はある」と話す。


背景にあるのは規制や購入費といった高いハードルだ。アジアゾウは、希少動物保護を目的とするワシントン条約により、学術目的以外での商業取引が禁止されている。また、動物商の白輪剛史さんによると、一部の国による買い占めや種の減少で、アジアゾウを購入するには1頭約4千万〜5千万円、アムールトラは1千万円ほどかかるという。

 こうした中、各動物園では、飼育する動物の選別も進んでいるという。

 「各園が『うちの動物園にこの動物は本当に必要か』という判断をするようになっている。アークのように、繁殖のために他の動物園に行った方がいい、という判断もそう。各園がそれぞれの特色をどう打ち出していくかが問われている」。岡田さんはこう指摘する。

海外動物園とやりとり

 動物を連れてくる場合、海外の動物園などと情報を共有し、繁殖計画を立て、交渉するのが一般的だ。同協会によると、動物の個体や飼育情報などをデータベース化している国際的な動物情報管理システム(ZIMS)などを活用しているところが多いという。

 近年、より厳しく求められているのが動物福祉や保全を目的とした飼育環境の整備だ。

希少種の保全と動物の福祉に対する意識が高い“動物園先進国”の欧米に対し、「日本は『遅れている』とみられがちだった」と話すのは岐阜大応用生物科学部の楠田哲士准教授(動物園動物繁殖学)。こうした状況を打破するため、日本の動物園では、飼育環境の改善を図る取り組みが加速しつつあるという。

 「国内でも園同士の繁殖協力や施設整備は進んでいる。飼育基準の向上や保全への取り組みを積極的にアピールすることで、海外の動物園との交渉もしやすくなるだろう」と楠田氏はみる。

あの手この手の改革

 実際、各動物園ではさまざまな改革を進めている。

 天王寺動物園では平成28年、野生に近い新たな展示方法や飼育環境改善計画などを打ち上げた改革「天王寺動物園101計画」に着手。今年度からは専門職の「動物専門員」を3人採用。獣医師や飼育員とともに動物の健康管理や飼育方法の改善を行い、動物がより健康で幸せに暮らせる環境整備に取り組んでいる。

 富山市が所有する富山市ファミリーパークでは、ニホンカモシカやホンドタヌキなど日本や富山県が原産の動物を中心に飼育。27年からは、特別天然記念物のニホンライチョウの保護・繁殖に力を入れている。村井仁志動物課長は「単なる娯楽として動物園に来るだけでなく、展示を通して身近にいる動物と共存するという意識をもってもらえたら」とする。

「海外からの動物を導入するなら『この施設で動物が幸せに暮らせるか』ということが厳しく問われる。施設作りや餌のやり方など工夫している」。こう話すのは札幌市円山動物園の山本秀明飼育展示課長。同園ではテナガザルやシンリンオオカミなど35種の飼育を断念し、3頭いるホッキョクグマの飼育に重点を置く方針へ転換した。

 海外からのさらなる導入を考え、従来の約5倍の飼育スペースを確保し、繁殖拠点を目指す方針だ。
posted by しっぽ@にゅうす at 09:52 | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする