動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2020年01月25日

リウマチ闘病中に父の介護の絶望…「犬を飼う」ことで救われた理由

Yahoo! JAPAN



小西恵美子さんは、24歳のときにリウマチを発症し、長年闘病を続けてきた。薬漬けの日々を脱却したいと、鍼灸やツボナージュなどの東洋医学も学んで体質改善の決意をしたのは、発症してから20年近く経ってからのことだった。

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 そして今、発症より30年経って、一番体調がよく、薬のない生活を送っている。治療法については小西さん個人の体験ではあり、治療の効果は個人差があるが、身体の仕組みや栄養の意味を知り、身体本来の力を強めるのは、健康な体の人にとっても大切なことではないだろうか。

 食事の摂り方や歯の磨き方なども学び、徐々に自身の身体の力を強くしていった小西さん。しかしそのときに二人暮らしをしていた父親が病に倒れた。リウマチの身体で疲労困憊だった小西さんを救ったものは――。

リウマチ闘病中に父の介護の絶望…「犬を飼う」ことで救われた理由
小西さんの母親は若い時にリウマチで亡くなった。父は90歳を超えても元気で自分のことはすべてできていたのだが(写真はイメージです)Photo by iStock
急に訪れた父の衰え
 父の部屋に入ると暑い。気分が悪くなりそうな温度だった。父はエアコンとオイルヒーターをつけ、どちらも28度に設定し、厚着している。今までは、冬でも私が暑すぎると感じる室温ではなかった。むしろ私が「寒くないの?」と聞くくらいだった。父は骨髄腫を患っている。悪化したのかと思い、体調を聞くと、寒いだけと言うが、父の身体のどこかで不具合が起きているのは確かだった。

 私の関節リウマチは発病から30年を経て、手や足の関節の変形はひどくて細かい作業をするには不便だが、薬を飲まずに日常生活を送れるようになった。ここまでくれば、自分のペースで仕事をしていけると思った矢先、91歳の父が、背中が痛くて動けないと言い出した。一昨年、お正月を迎えた後である。圧迫骨折だった。支えがないと移動がむずかしい。ベッドに横たわる時間が増えた。イスに座る時は背中を丸くしてじっとしている。

 父は身の回りのことは自分でやるし、掃除機もかけ、部屋の掃除もしていた。食べたいものの材料を自分で買いに行き、自分で料理して、私にも用意してくれた。それが室内を歩くのもすり足のようになり、着替えなど何をするにも時間がかかる。91歳だからある程度は仕方ないが、衰え方があまりにも急激だった。私は父の食事の用意を全部担うことにした。

介護が加わり、私の身体が限界に
 父は朝、10時ぐらいに起きてくる。午前中に私が出かける場合は、父の朝食の準備をして食べるばかりにする。1日2食なので、小腹がすいた時のために果物や和菓子を置いて行く。夕食の時間までに帰宅するように予定を組む。鶏肉や豚肉、魚を焼く。野菜をざっくり切って蒸す。刺身や惣菜を買ってきて、皿に並べる。鯖缶や鰯缶も助かった。

 夜に出かけなければならない時は、夕食の準備をして、冷蔵庫に入れ、何をどのようにして食べるのかをメモしてテーブルに置く。同時に私の予定と帰宅時間を書く。

 リウマチを抱えた私は自分のことだけで精一杯だったが、父の世話も加わると疲れが倍増した。全身の関節の痛みが増し、朝、痛くて起き上がれない日も多くなった。しかし父の食事の用意をしなければならない。痛みを我慢して、気力だけで起きて準備をした。しだいに私は食欲がなくなった。

 この先、父はどのような状態になっていくのだろうか。寝たきりになるのだろうか。老人ホームに入ったほうがいいのか。すぐに入れるのか。費用はどのくらいかかるのだろうか。私は介護の不安を募らせた。

 私は顔色が蒼ざめ、痩せ始めた。急に貧血のような、立ちくらみの状態になる。口が渇き、咳も出る。飴をなめてその場をしのぐ。眠れなくなった。私が倒れてしまうと思った。

 私だけでは父を支えられないと思い、介護認定の手続きをすることにした。区に書類を提出するため、近くの地域包括センターに行くと、担当者が私を見て、「あなたのほうが心配です」と言った。訪問調査を受け、ホームドクターに診断書を書いてもらい、1次、2次の審査を受けた。認定の結果が出るまでに約1ヵ月かかった。

リウマチ闘病中に父の介護の絶望…「犬を飼う」ことで救われた理由
小西さんの子どもの頃から、家にはずっと犬がいた。写真は二代目のネネ 写真提供/小西恵美子
犬とオキシトシンの関係
 父の具合が悪くなる1ヵ月前、10歳目前だったゴールデンレトリバーが死んだ。急にけいれんを起こして倒れた。脳障害の症状だ。かかりつけの獣医さんにつれて行き、診てもらい、入院。翌日、息が絶えた。

 家では子どもの頃から犬を飼っていた。玄関を開けると、舌を出して笑い、私の目をしっかり見て、しっぽを振って迎えてくれる。その顔を見るのが嬉しかった。散歩に行くと、私の脚や手が痛いのをわかっていて、ゆっくりと歩調を合わせてくれる。疲れがたまり、関節の痛みが強い日にぐったりしてソファに座っていると、そっと横にきて寄り添う。私の足に手をのせ、足元に横たわる時もある。リウマチの痛みを忘れる心地いい時間だった。

 快方に向かっていたリウマチが悪くなっている。なんとかしたいが、何ともならないと茫然とし、不安ばかりが大きくなる。

 その状態を分子整合栄養医学のIさんに話すと、「キラーストレスです。オキシトシンが出ていません。犬がいなくなったのが大きく影響しています。犬を飼うといいのですが……」と言われ、調べると、麻布大学の菊水健史先生の研究チームによる論文が、アメリカの『サイエンス』誌に掲載されて話題になったという記事を見つけた。飼い犬と触れ合うことで、人も犬も互いにオキシトシンが分泌されるという(※オキシトシンと同じ働きをするホルモンにセロトニンがある)。

 視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉から分泌されるホルモンがオキシトシン。脳の中でも分泌され、出ないと、脳の誤作動が起きてしまう。

 オキシトシンには心を癒やしたり、体の痛みをやわらげたりする働きがある。犬と見つめあった時に人間の体内のオキシトシンは3倍以上に増加するという。

 また関節の痛みや腰痛、ストレスを緩和する。犬だけではなく、趣味や旅行、音楽鑑賞、食事など、五感を刺激して心地いいと感じている時はオキシトシンが増えているという。感謝や思いやりの気持ちをもつ、身近な人と触れ合うことでも分泌されると実験で判明している。

 母親と子どもの間にもオキシトシンが出る。子育てがどんなに大変でも、オキシトシンのおかげで母親は愛情をもって世話ができる。幸せホルモンと言われるゆえんである。

オキシトシンは最大の治癒力!?
 犬には癒され、やすらぎを感じてはいたが、こんなにも大きな存在だったとは想像もしていなかった。

 Iさんにオキシトシンの話を聞いた3日後、今までずっと世話になっていた犬のトレーナーから電話がかかってきた。

 「今、1歳半の男の子のゴールデンレトリバーがいます。ある方のためにセラピードッグとしてのトレーニングをしましたが、入院なさって飼うことができなくなったのです。とても人の気持ちがわかるいい子です。散歩をしないとストレスになることはなく、人と一緒にいることが満足の犬で、手がかかりません。あなたにぴったりだと思い電話しました」

 絶妙のタイミングの電話だった。それでも父を抱えて、犬を飼えるのか迷った。「飼ったほうがいい。何を迷っているの」。翌日、一番で電話をして犬を迎えに行った。

 父は猛反対だった。賛同してほしかったが、私の身体は限界だった。

 朝、起きると犬が舌を出して笑って迎えてくれる。私は幸せな気持ちになって笑顔になる。2週間ぐらい経つと、犬と散歩していて痛みが軽くなっているのが実感できた。苦痛になっていた家事をやれる感じがした。オキシトシンが出た証だ。

 犬がこんなにも影響するとは信じがたかったが、明らかに痛みも気分も楽になっていた。オキシトシンの効果のすごさに驚くばかりだった。

 私は犬を飼うことでキラーストレスを乗り越えられた。今では犬のいない暮らしが想像できない。このタイミングでのこの廻り合わせに感謝している。

 【次回は2月7日公開予定です】

小西 恵美子(フリー編集者)
posted by しっぽ@にゅうす at 07:26 | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする