動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2020年01月27日

「奴隷」になった犬、そして猫 太田匡彦(まさひこ)著

東京新聞


◆命の消費に異議唱える
[評]宮晶子(ジャーナリスト)
 二十年ほど前、いくつかの犬種がブームとなり、数年後には多くが捨てられた。そして今“空前の猫ブーム”となり、メディアはこぞって猫の話題を娯楽的に取り上げる。さらにSNS(会員制交流サイト)がブームに拍車をかける。多くの人は見た目の愛らしさだけに夢中になり、その裏側を見ようとしない。こうした風潮に対して本書は、かわいさだけの一方的な消費に異議を唱える。タイトルにある「奴隷」になった犬、猫とは「命の大量生産、大量販売を前提とする生体販売現場」にいる犬、猫のことだ。

 著者は長くペット業界の闇を取材してきた。本書にある調査では、猫ブームによって猫は増産態勢となり、二〇一四年度からの三年間で年間流通量は三割以上も増えている。猫の入手方法も、三十歳代では「ペットショップで購入」するのが「野良猫を拾う」のと同じくらい多い。しかし繁殖から流通、小売りまでの過程で毎年、少なくとも四千〜五千匹の猫が死んでいるという。原因として、発情を促すため長時間照明を当てるなど自然に反した繁殖、ずさんな健康管理を指摘する。

 遺伝性疾患も多い。例えば人気ユーチューバーが飼い始めて話題になったスコティッシュフォールド種は、特徴の折れ耳が骨軟骨形成不全症という遺伝性疾患によるもので、発症した猫は鈍痛に苦しむこともある。だが、これらの問題を訴える研究者や動物愛護団体の意見は、圧倒的なブームにかき消されてきた。

 こうした流れの歯止めになると期待されたのが、昨年の動物愛護法改正だ。子犬・子猫は幼いほど売りやすいため幼齢販売される傾向にあったが、健全な発育を重視して、ようやく販売は八週齢以降と定められた。しかし日本犬六種は適用を逃れた。著者はこの改正の過程で多くの業界関係者にインタビューを行い、政治家を巻き込んだ動きを生々しく伝えている。

 今後は売る側にも少しずつ変化が起きるだろう。買う側もそろそろブームに流されるのはやめ、真に共生する相手として動物を考えたい。

(朝日新聞出版・1650円)

1976年生まれ。朝日新聞記者。著書『犬を殺すのは誰か−ペット流通の闇』。
posted by しっぽ@にゅうす at 08:45 | ペット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする