動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2020年01月29日

どうする災害時のペット避難 事前に飼い主や地域で検討を

山陽新聞


2018年の西日本豪雨をはじめ、全国各地で大規模な災害が頻発する中、ペットを連れた避難のあり方がクローズアップされている。ペットの避難については環境省や岡山県がガイドラインを定め、自治体に対応を求めている。だが、人優先で手が回っていないのが実情だ。県内の現状を取材した。

 昨年11月、災害時に被災者がペットと一緒に避難することを想定した図上訓練が岡山市内で行われた。西日本豪雨の事例を踏まえ、県が初めて企画。市町村の担当者らが、犬や猫を収容するスペースを確保したり、ペットフードなどの必要物資を整理したり。「猫嫌いの人が避難してきた」「ペットと避難した人とほかの避難者がけんかを始めた」といったトラブルへの対応も検討した。中国地方の他県の職員も参加し、関心の強さを印象づけた。

 「災害時にはペット専用の避難所を開設します」−。西日本豪雨を体験した総社市では昨年6月に策定した「避難所開設・運営マニュアル」にペットの避難についての項目を初めて盛り込んだ。同市は西日本豪雨発生時、自治体主導としては「全国初」(環境省)のペット避難所を設置。ピーク時には20世帯の犬17匹と猫6匹が身を寄せた。同市危機管理室は「誰でもためらわずに避難できる環境づくりの一環。ペットとの避難は市民の関心が高く、周知していきたい」とアピールする。

人命優先

 ペットとの避難に注目が集まったきっかけは、11年の東日本大震災だ。災害の発生で置き去りにされた多くのペットが犠牲になったり、野生化したりすることが問題化した。その後、環境省はペットを連れて避難する方針を打ち出した。県も熊本地震の被災地対応を受けて18年3月に策定した「災害時動物対応マニュアル」で、市町村には避難所でのペット受け入れ方法の検討を求めている。

 あれから約2年たつが、県内では検討があまり進んでいない。14市町村がまだペットの受け入れについてのマニュアルができていない。防災担当者からは「人の避難のマニュアルづくりが最優先」「これまでの災害でペットとの避難実績がない」などといった声が聞かれた。重要性は認識しているものの、「人命優先」のためペットとの避難方法の検討まで手が回っていないのが実情だ。

 県生活衛生課は「動物の専門知識を持った職員がいる自治体は少なく、担当者が1人で手が回っていない場合が多い。災害に備えて県としてもサポートしていきたい」と話す。

マニュアルがあっても…

 一方、マニュアルがあっても災害の混乱でうまく運用できないケースもある。その一つが、西日本豪雨で地域の約3割が水没する被害を受けた倉敷市真備町地区だ。

 同市が西日本豪雨の前年に策定した避難所運営マニュアルでは、ペットの受け入れ場所を確保する▽ペットの台帳を作成する▽利用者が生活する場所とは別の場所で飼い、交わらないようにする−などを事前に決めていた。しかし、被災当初は避難所によって対応が分かれていたという。同町に住んでいた会社員男性(62)は「犬を連れて避難できなかった知人もいた。犬は家に取り残されたため、脱水で衰弱。見ていて気の毒だった」と振り返る。

 飼い主の悲痛な叫びは倉敷市保健所にも届いた。「ペットはどこに避難できるのか」「家に犬を残しているので何とかしてほしい」。電話が鳴りやまなかった。同保健所生活衛生課の石部涼子係長は「避難所を回ったが、ペットの支援物資を管理する人がおらず、ニーズが把握できなかった」と語る。

 同市防災危機管理室は「どの避難所もパンク状態で、トラブルを避けるため判断した結果だったと思われる。運営主体は地域になるため、災害に備えてどのような受け入れをするかを決めておくように啓発していきたい」としている。

対応分かれた台風19号

 全国各地に甚大な被害を与えた昨年10月の台風19号でも、地域で対応が分かれた。

 東日本大震災を受けて、防災マニュアルにペットの同行避難を明記していた福島県。しかし、ペットの受け入れは2市にとどまったという。県食品生活衛生課は「受け付けを拒まれ、ペットを車や家に残したケースもあったと聞く。全市町村に当時の状況をアンケート調査している最中で、受け入れの協力が得られるように努めたい」と話す。

 一方、長野市では8カ所の避難所で、ペット連れの避難者を屋内に受け入れた。マニュアルでは「ペットは屋外」としていたが、市動物愛護センターは「風雨が強く寒かったため、現場の判断で行った」と明かす。避難所の一つである屋内運動場では、スペースの一角をペット同伴の家族に開放。3週間後には、ペットを収容する3畳ほどのコンテナハウスを用意し、他の避難者にも配慮した。

飼い主が備えを

 では、災害にどう備えればいいのか。倉敷市真備町地区の巡回診療を行った県獣医師会の甲斐みちの緊急災害時対策委員長は「人に比べて飼い主の責任で対応する自助の期間が長くなるため、飼い主が事前に準備しないといけない」と指摘する。

 中でも「えさや水などは3日以上を用意。日頃からケージ(檻)に入れて、狭い環境に慣れさせる訓練をすることや病気のまん延を防ぐため狂犬病ワクチンを必ず接種しておくこと」を挙げ、「避難する際には何を持っていくか、どこに逃げるかなどを事前に家族で話し合ってほしい」とアドバイスした。

 一方、行政側には「ペットの受け入れができる、できない場所を事前に知らせれば、スムーズな避難が期待できる。ペットと一緒にする避難訓練も実施し、飼い主と一緒に考える機会を作ってほしい」と注文した。

<環境省のガイドライン>

 ペットと一緒に避難する「同行避難」を原則とした上で、餌とトイレ用品の備蓄や日頃のしつけなどは飼い主の責任と明記した。一方、自治体や関係団体には、受け入れ態勢の検討や必要な物資の備蓄、訓練の実施などを求めている。東日本大震災後の2013年に作成され、18年に熊本地震を受けて改訂された。
(2020年01月27日 12時20分 更新)
posted by しっぽ@にゅうす at 09:07 | ペット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする