動物 しっぽニュース
認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会

2017年04月25日

環境倫理から考える ── 果たして交雑ザル57頭殺処分は妥当だったのか

Yahoo! JAPAN


2月に千葉県富津市、高宕山(たかごやま)自然動物園で交雑ザル57頭が殺処分されました。特定外来生物法に基づいての駆除ですが、この処分をどのようにみるか ── 、環境思想論を専門とする三重短期大生活科学科・南有哲教授が、環境倫理の視点からこの問題を論じます。

スズメもネコジャラシも大陸からやってきた 外来か在来種かはどう決める?

 1回目は、環境倫理における「人間中心主義」と「全体論的な環境倫理学」の2つの思想を紹介、2回目は「人間中心主義」の思想の場合は、この問題をどうとらえるか、展開してきました。最終回の第3回は「交雑ザル殺処分をどう考えるか」と題し、「全体論的な環境倫理学」とそれに批判的な見方から、この問題を深めていきます。

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 では、今回のケースについてはどうでしょうか? まずは全体論的な環境倫理学が提起する問題から見てみましょう。この立場からするならば、数十万年あるいは数百万年にわたる生物進化の過程によって形成されていった種内の遺伝的多様性、あるいはそれを基盤とした種分化のプロセスは、人間活動による撹乱とそれに伴う遺伝的均質化への傾向から可能な限り保護されなければならないということになりますが、この提起は「人間の利益」にどうかかわってくるのでしょうか。

 一つ考えられるのは、その生物種の進化の歴史を解明するための貴重な情報が失われてしまうのを防ぐことです。種内の集団別の、さらには近縁種の間の遺伝子構成の異同を解析し、これに化石などから得られる情報を組みあわせることで、その種の進化や地理的分布の変遷をたどることが可能になりますが、ここで人間の手による遺伝子撹乱が加わると、それが不可能あるいは極度に困難になってしまいます。

 これは自然史の科学的解明という人類の知的欲求の実現に対して、重大な障害を創り出すことに他なりませんが、しかしこのような言い分に対しては、「だから何?」という疑問の声も聞こえてきそうです。生物学の研究者や進化に関心のある人はともかく、そうではない大勢の人にとってはどうでも良い話ではないのか?と。しかし私には、事はそう単純ではないように思えます。

「遺伝的多様性を人為的に撹乱すること」への認識共有が必要
 ヒトすなわちホモ・サピエンスはそれ自体が一つの生物種として、生命共通始祖に端を発した40億年に近い進化の歴史を背負った存在です。そしてヒトの祖先たちは生態系の構成要素として他の生物種と様々な関係を取り結ぶことによって、初めて生き延びることが出来たのであり、それが子孫としての今日の私たちの存在を可能にしています。

 ということは、ヒトの進化の解明は他の生物種の進化の解明抜きにはあり得ないということになります。また道具の製作や火の使用などによって、周辺の自然環境を意識的かつ能動的に改変する能力を獲得して以降は、祖先たちの行動が周囲の生物種の進化や分布に影響を与えているはずですから、そのような生物種の進化史を解明することで、ヒトの活動の歴史を探究することも可能になります。現にヒトにつくシラミの種の間の遺伝子構成の異同の解析を通じて、人類が衣服を身につけ始めた時期を推定することができないか、という研究も行われているのです。

 さらに知的関心のみならず、より「実利」的な面からもアプローチすることが可能です。例えば、人間を苦しめるアレルギーや癌といった病の原因の所在をヒトの進化の過程に探り、そこから治療法など対処を考えようとする「進化医学」が進んできています(その到達点をわかりやすく示してくれたのがNHKスペシャルの『病の起源』だと思います)。
 
 さらには、ヒトの心に共通して存在する特徴的な傾向を進化論的に解き明かそうとする「進化心理学」も成果を挙げているようですし、それを踏まえた上で倫理や道徳といった社会的規範の基盤と起源を探ろうとする「進化倫理学」さえ登場しています。こういったヒトの進化をめぐる諸科学の進展に対しては、少し長い目で見なければならないのかもしれませんが、人類が直面している様々な課題の解決への参考となり得る重要な情報の獲得を期待できるでしょう。

 ですから、「遺伝的多様性を人為的に撹乱することは、貴重な情報に満ちた遺跡を損壊するに等しい行為だ」という認識を、皆が共有するべきではないでしょうか?

 「何があっても絶対に破壊してはならず、壊されたものはいかなるコストをかけてでも絶対に復元されなければならない」とまでは言えないのでしょうが、破壊につながる行為が本当に社会にとって、どうしても必要なものであるのか、問題が生じた場合の責任の所在はどこか、破壊を最小化するための方法は何か、そして復元の展望や手法さらにはコストといった課題について熟議すること、さらに撹乱の対象となる遺伝的多様性そのものについての可能な限り綿密な調査を行うことが、求められる当然の前提であると私は考えます。

人間と生き物とのアンビバレントな関係確認の必要
 他方、生物個体の生命の尊重という問題提起についてですが、このことを考える前提として、私たち人間と生き物とのアンビバレントな関係を確認しておく必要があります。私たちは生き物を自らの資源として使役し、食材や実験材料として扱い、さらには愛玩や鑑賞の対象として消費する一方で、資源化されるまさにその生物種 ── たとえばブタ ── に対してさえ、しばしば感情移入し、共感や同情を覚え、まるで人間に対するかのように評価したり接したりします。

 したがって個人差はかなりあるとは言え、生き物のおかれた状況や扱われ方は、場合によってはそれに接する人間にネガティブな精神的インパクトを与えます。そのようなインパクトによる精神的ダメージの回避や軽減は「人間の利益」の重要な構成要素であって、そのための文化的装置として慰霊の儀式や感謝の祭り・生物の取扱いに際してのさまざまなタブーや掟といった習俗が人間によって創出されてきました。そして生物個体の生命の尊重を呼びかける思想は、生物に対する後者のスタンスを理論化したものであると理解されるのです。

 このような捉え方は「人間ならざる存在を道徳的配慮や権利承認の対象にすべき」という問題意識からすれば浅薄な見地だということになるのでしょうが、社会的合意の形成という観点からすれば、事を「人間の利益」の問題として扱うのは不可避であると私は考えます。

 なぜなら、生物の資源化と擬人化というアンビバレントな関係のあり方やその捉え方が、個々人さらには文化によって異なる ── クジラやイルカがその好例でしょうが ── 以上、合意形成のためには、特定の個人あるいは文化のそれを原理原則として人々に対して権力的に強要することを認めるのでない限り、個々人の利益としての「心の痛みの回避・軽減」のための相互配慮の必要性を、社会さらには人類共通の了解事項にしていく他ないからです。

 例を挙げるならば、イヌを食べる人とイヌを愛玩する人がともに社会を構成する ── 真の意味での「多文化共生」とは、そのような要素も含まれると私は考えます ── ためには、イヌをめぐって異なる価値観を持つ人々が、互いの「心の痛み」に配慮した言動を取る必要があるということなのです。

生物の擬人化という人間の性向
 さらに言うならば、生物の擬人化という人間の性向は、全ての種に対して平等に向けられているわけではなく、より「共感しやすい」生物種へ、例えば微生物よりも肉眼で見える生物、植物や菌類よりも動物、無脊椎動物よりも脊椎動物、そして魚類・両生類・爬虫類よりも鳥類および哺乳類に対して強力に作動するという、一般的な傾向が存在するのは明らかです。

 先に「痛覚主義」について触れましたが、「表情や声・行為を通じた苦痛の表明」とは生命への脅威に曝された生物が示す反応の在り方の一つであって、他にも「特定の化学物質の外界への放出」といった在り方も想定されます。しかし私たちヒトは前者に対しては容易に理解し共感することができますが、後者についてはそうではありません。そこに「痛覚の有無」を尊重の基準とする考え方が受容される条件が存在するのであって、この点において痛覚主義は極めて「人間中心主義的」な思想であると言えるでしょう。

環境倫理から考える ── 果たして交雑ザル57頭殺処分は妥当だったのか
交雑ザルの殺処分は遺伝的多様性の保全からやむを得ないものだとしても、すでに動物園の管理下にあった中での処分はさまざまな問題を含んでいます(写真・アフロより作成)
人間による管理下にあるサルを殺処分することが本当に必要であったのか
 最後に今回の事態についての、私なりの評価を述べることにしたいと思います。アカゲザルとニホンザルの交雑個体を生態系から除去する活動そのものは、それによって遺伝的多様性が保全され、結果として生物進化に関わる情報が保存される可能性が高まるのであるならば、それは必要なことであり個体の生命を奪う結果になってもやむを得ないと、私は考えます。

 ただしその場合も、遺伝子攪乱を引き起こさないように去勢・断種 ── これはペットに対しても普通に行われます ── した後に放獣するであるとか、施設で飼育するなどの可能性を追求し、殺処分においてもその方法について十分に考慮するなど、「動物個体の苦痛と生命の喪失」に同情し、痛みを感じる人間の心に対する配慮が求められます。

 しかし一方で、すでに人間による管理下にあるサルを殺処分することが本当に必要であったのか、はなはだ疑問です。現に飼育されているわけですから、捕獲された野生個体の場合のように「殺さずにおくための膨大な追加コスト」がかかるとは考えられませんし、また万が一の脱走に備えて、上述のような遺伝子攪乱を防止するための処置をとることも十分に可能です。

 『朝日』の記事は「絶対に外へ逃げられないような施設での管理が難しいなら、飼育しているだけで法律違反になるので、殺処分はやむを得なかった」との環境省の担当者の談話を掲載していますが、研究や教育を目的とした特定外来生物の飼育については、特別の許可の取得と施設整備を前提として承認されているわけですから、むしろ動物園という施設の性格をも考慮に入れて、交雑ザルとニホンザルの行動の比較研究や、遺伝子攪乱についての市民への情報提供のための貴重な機会として、必要事項をクリアした上で飼育を続けるべきだったと思います。

 さらに言えば動物園には子どもが多く集まりますし、子どもたちは一般にサルを見るのが好きですから、「なんにも悪いことをしていないのに、おさるさんたちが殺された」という出来事が、子どもたちの心にどのようなインパクトを与えたのか、大変気になるところでもあります。

 そういったことを考慮するならば、たとえ動物園や行政側の事情がいろいろあったのだとしても、交雑ザルを殺処分した今回の処置は妥当ではなかったというのが、私の意見です。

posted by しっぽ@にゅうす at 07:45 | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月23日

特定外来生物の鳥 販売目的で飼育の2人逮捕

Yahoo! JAPAN

国外から日本に入ってきて、生態系に悪影響を及ぼすおそれがある特定外来生物に指定されている鳥を販売目的で飼育していた疑いで、鹿児島県出水市の男2人が19日、現行犯逮捕されました。特定外来生物被害防止法違反の疑いで現行犯逮捕されたのは、出水市高尾野町柴引の鳥類販売業・跡上男治容疑者(64)と、弟の跡上平紀容疑者(61)です。警察によりますと、2人は自宅で経営する鳥類販売店で、環境大臣の許可を受けずに特定外来生物の鳥・ソウシチョウ6羽を販売目的で飼育していた疑いがもたれています。取り調べに対し2人は容疑を認めているということで、警察は飼育されていた6羽を押収しました。ソウシチョウはインド北部などに生息する鳥で、かつては観賞用として日本に輸入されたことがありましたが、現在は禁止されています。警察は、逮捕された2人がソウシチョウを入手した経緯や過去にも販売していなかったかなど調べを進める方針です。

MBC南日本放送 | 鹿児島


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2017年04月20日

「アニマルプラネット」で4種類の動物検定実施

日刊スポーツ


<社会班厳選:キャッチアップ!トレンド>

 日本出版販売(本社・東京)は先月26日、猫に関する知識を問う「第1回ねこ検定」を全国5都市で開催した。昨今の猫ブームを受けて新設された検定だが、収益金の一部を保護団体に寄付し、動物愛護の普及啓発にも貢献しようとしている。

 猫の検定試験は、今回が初めてではない。ケーブルテレビなどで視聴できる動物専門チャンネル「アニマルプラネット」が09年8月、犬検定など4種類の動物検定を新設。翌年8月の第2回で、猫検定の3級試験を加えていた。11年8月の第3回が社内事情で延期され、現在も行われていない。犬の知識を問う検定試験は多く、日本ペット技能検定協会の「ドッグ検定」や動物愛護社会化推進協会の「犬の飼い主検定」などが知られる。


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2017年04月16日

捨て猫を飼ってたら元の飼い主が現れた…所有者はどっち?

ネタりか


ここ数年、日本は空前の猫ブームといわれており、巷には猫の本や猫グッズが溢れています。外を歩いていて猫に出会うとつい近寄りたくなるという猫好きな方も多いのではないでしょうか? 外で保護した猫を飼っている方も多くいます。

しかし、外で保護して飼い始めた猫が野良猫ではなく本当の飼い主がいる迷い猫だということもありえます。このようなケースでの猫の所有権について、三宅坂総合法律事務所の伊東亜矢子弁護士にお聞きしました。



■所有権はどちらにある?

野良猫を飼い始めて数年後、元の飼い主が現れ「返してほしい」と言われた場合、法的には猫の所有権はどちらにありますか?

「法律上、“家畜以外の動物”であれば、飼い始めるときに“他人が飼育していたもの”であると知らず、かつ、その動物が飼い主のもとを離れたときから1カ月以内に飼い主から返してくれと言われなかった場合は、権利を取得することができます(民法195条)。

ただし、この“家畜以外の動物”とは“人の支配に服さないで生活するのを通常の状態とする動物”を指すと解されており、猫はこれには当たらないと考えられます」(伊東弁護士)

まず、法的には猫は家畜ではありません。法律では「ペット」を定義しておらず、「物」として扱います。このことから、このケースで所有権について根拠となるのは動物に関する法律ではなく、遺失物法ということになります。

「猫に限った話ではありませんが、拾った物を遺失物として警察に届け出たが遺失者が分からない。そんな場合には、警察が公告の手続をとり、3カ月以内に所有者が判明しなければ拾得者が所有権を取得できます(民法240条、遺失物法)。

この手続をとっていれば、数年後に元の飼い主が現れても、所有権は現飼い主にあるといえます」(伊東弁護士)

この手続を取っていなかった場合は、所有権は元飼い主のままと考えることができます。ただし、所有権の時効取得を定めた民法162条にもとづき、現飼い主が所有権を取得できる可能性もあるそうです。

しかし、民法162条には「20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有」、「10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と、善意無過失で他人の物の占有を開始」などの条件があるため、このケースで考えるとあまり現実的ではありません。

実際には、遺失物の手続きをとっていれば所有権は現飼い主、とっていなければ所有権は元飼い主ということになりそうですが、解釈が難しいところです。後の紛争を避けるためには、猫を拾った時点できちんと手続をとっておくのがよいと考えられます。

「なお、『拾ってください』と書かれた段ボール箱に入れて置かれていたなど“捨て猫”であることが明らかな場合は、民法239条1項の“所有者のない動産”(所有者が所有権を放棄した)と考えられ、自ら飼おうと思って飼い始めたときに所有権を取得することが可能となります」(伊東弁護士)



■飼うつもりなら必ず警察で手続きを!

ところで、もし話し合いなどの結果、猫を元の飼い主に返すことになった場合、世話をしていた期間の餌や病院などの費用を請求することはできますか?

「費用の請求は可能と考えられますが、そのためにも、きちんと前述の手続をとり、3カ月間は“現れるかもしれない元の飼い主のために預かっている”という形を明確にしておくことが望ましいと考えられます」(伊東弁護士)

元の飼い主に費用を負担してもらうことはできそうですが、共に暮らし愛情を注いだペットとの別れはつらいものです。猫を拾ったらまずはしっかり飼い主を探すこと、そして飼う場合は所定の手続きをとることが大切です。

また、飼い猫がいなくなってしまった場合もすみやかに警察や動物愛護センターに連絡しましょう。猫を「物」として扱うのは違和感があるかもしれませんが、法律的には、財布を落としたり拾ったりした場合に警察に届けるのと同じことなのです。



*取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)

*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。

【画像】イメージです

*Malcon / PIXTA(ピクスタ)

posted by しっぽ@にゅうす at 07:31 | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月15日

動物たち受難の春、ペット・動物園をめぐる事件が多発

Yahoo! JAPAN

祖父母が飼っていたゴールデンレトリバーが生後十ヵ月の孫を噛み殺すという事件が起きたのは、先月九日のことだった。

 その日、赤ちゃんは保育園で熱を出したために祖父が迎えに行き、祖父母宅で母親の帰りを待っていたのだという。ようやくハイハイを覚えたばかりだったが、リビングで放し飼いにしていた四歳の牡のレトリバーが突然、右目から後頭部にかけて噛みついたとのことだ。

 赤ちゃんは、血液の約半分にあたる三〇〇ccを失い失血死した。

 祖父母の家では、事件を起こしたゴールデンレトリバーの他に小型犬を二匹と秋田犬の計四匹を飼っていたそうだ。室内にケージは設置していたが、レトリバーは放し飼いだった。近隣住民が週刊文春の取材に応えている。

 「あそこのお宅は以前は大型犬のグレートピレネーズを飼っていました。いまもレトリバーのほかに小型犬も併せて四匹ぐらい飼っているんです。お爺ちゃんとお婆ちゃんは家の前の公園でレトリバーをよく散歩させていました。大人しい犬で他の犬とトラブルになったとは聞いたことがありません」

 むしろ、祖母はレトリバーのことを“臆病な犬”と言っていたのだという。その臆病なはずの犬が痛ましい事件を引き起こしてしまったわけだが、何故こんな事件が起きてしまったのか、専門家の意見は二分している。

 週刊新潮では、野村動物病院の野村道之院長が“犬が抱いた不安や恐怖”が乳児への噛みつきを誘った可能性を挙げている。ハイハイを始めたばかりの乳児は、レトリバーにすれば“見知らぬ生き物”の侵入であり、それが恐怖につながったとの見方だ。

 あるいは、いつもなら自分を可愛がってくれる飼い主が、その日に限って“違う生き物”を可愛がるため、嫉妬心を抱いて噛みついた可能性も捨てきれない、と遠藤ドッグスクールの遠藤暁彦トレーナーは言っている。

 他方、野村獣医科Vセンターの野村潤一郎院長は週刊文春の取材に、事故ではないかと推測している。野村院長が言う。

「飼い主は大型犬も含め複数の犬を飼った経験があるようで、飼育初心者ではない。また過去に人を噛んだこともないようなので、当該犬に精神的な異常があったとも考えにくい。諸々の条件から考えると、今回のケースは犬が攻撃したというよりは、例えば人間には聞こえない音や何らかの危険を感じ、赤ちゃんを危険から回避させようと咥えたが“加減がわからなかった”という事故の可能性が高いと思います」

 犬の歯は私たちが思っている以上に鋭く、軽く噛まれただけでも大けがにつながることも多々あるのだそうだ。環境省の統計資料(平成二七年度)によると、犬の咬傷事故は全国で四三七三件発生していて、うち二名が死亡している。

 今回の事件では、ゴールデンレトリバーを飼っていた祖父母が重罰を受けることはないだろうと元東京地検検事で弁護士の川口克巳氏は言う。

 「本件でお母さんが自分の両親に懲罰を求めることはないでしょうから、当局もそれを十二分に考慮し、祖父母を重過失致死罪で立件しておいて、罰金で済ませる、あるいは不起訴にして、注射済票を着けなかったなどの、別の形式犯の罰金で済ませるといった処置になるのではないでしょうか」(週刊文春より)

 ゴールデンレトリバーも罪には問われず、すでに祖父母のもとに返されているという。

 母親はシングルマザーだったが、生まれて一歳にも満たない娘を失くした悲しみは察して余りある。だが、孫を死に至らしめたのが飼い犬だった祖父母もまた居たたまれない気持ちでいっぱいだろう。飼い犬を見ればその犬が孫を噛み殺した現実を突きつけられ、孫の死を悼めば、そこにもやはり飼い犬の不始末がちらつく。レトリバーは罪には問われないが、殺処分するかどうかは飼い主の判断に委ねられることになる。

 この春は、こんなふうに動物をめぐる不可思議な事件が続出している。とりわけ動物園での事故や事件が頻出しているのだが、簡単に列挙すると――。

 長野県の小諸市動物園では今年二月二六日、一五歳の雌ライオン“ナナ”が女性飼育員の右太ももに噛みつき、展示場と寝室をつなぐ通路に引きずり込もうとした事件が起きた。そのときの様子を小諸市商工観光課・平井義人課長が説明している。

 「(前略)一刻も早く女性飼育員を助け出そうと二人の男性飼育員はホースで水をかけ、ナナを引き離した隙に女性飼育員を助け出した。救助にかかった時間は五分くらい。飼育員はすぐに救急車で病院に運ばれましたが、全身に引っ掻き傷や噛み傷があり、特にひどかったのが咽喉の傷で、気道にまで達する深さでした」(週刊新潮より)

ナナは二〇〇一年に東京の多摩動物園で産まれ、三歳のときに雄ライオンの“カイ”と一緒に小諸動物園に迎えられた。三年前にカイが病死したため、ナナは小諸動物園唯一のライオンになったが、昨年一二月に開かれた一五歳の誕生日会には多くのファンが来園するなど、小諸動物園の人気者だったのだそうだ。

 被害にあった女性飼育員はナナを担当して二年になり、動物園関係者が言うには、ナナはその女性飼育員によく懐いていたそうだ。だから、“どうしてナナが突然……”と小諸動物園の関係者は誰もが首を傾げていた。この事件以来、小諸動物園は休園が続いている。

 同じように、今年三月一二日、和歌山県白浜町のレジャー施設『アドベンチャーワールド』でも、インドゾウの“ラリー(四〇歳・雄)”の身体を洗っていたタイ国籍の女性飼育員が、ラリーが振りまわした鼻にはね飛ばされて死亡するという事件が起きている。身体を洗っていた際、ラリーが突然それを嫌がって鼻を振りまわしたらしい。

 日本では動物が人間を死傷させる事件が続いたが、海外に目を転じると、今度は逆に、動物園の動物たちが被害にあった事件が散見される。

 イギリス北西部カンブリア州のサウスレイクス・サファリ動物園では、過去四年間で四八六匹の動物が死亡していたことが調査チームの報告書で明らかになった。先月一日のことである。報告書によると、獣医師による健康管理や清潔度、害虫駆除などの水準が低く、死んだ動物を解剖して調べたところ、栄養不足や過密状態での飼育、低体温等の理由で死亡していたことが確認された。

 サウスレイクス・サファリ動物園は一六〇〇匹以上の動物を飼育していたが、昨年だけで一二三匹の動物が死亡していた。その中には、栄養失調で倒れただけで安楽死させられたキリンなども含まれていたそうだ。

 また、六匹のライオンの赤ちゃんも安楽死させられていたが、信じられないことに、十分な飼育スペースが確保できなかったことが理由だったと経営者は述べている。飼育員たちは出勤して初めて動物たちが殺処分されていたことを知らされ、また、殺処分したことはいっさい口外しないよう命じられてもいたそうだ。

 この動物園では、二〇一三年に女性飼育員がスマトラトラに襲われて死亡するという事件も起きていた(健康、安全面での対策を怠っていたとして昨年六月、動物園側には約三五〇〇万円の罰金刑が言い渡されていた)。

 劣悪な飼育環境と言えば、昨年十月の報道になるが、中国・広東省広州市のショッピングセンター内にある動物園『正佳極地海洋世界』には“世界一悲しいホッキョクグマ”と呼ばれたホッキョクグマの“ピザ”がいる。

 ピザの他に飼育されているオオカミやセイウチの飼育室には窓もなく、環境エンリッチメント(健康的な飼育のための環境上の工夫)も施されていない狭いガラス張りの部屋で飼われているという。動物愛護団体が公開した動画には、空気口の前に横たわるピザが映し出され、専門家は“新鮮な空気を吸おうとしている姿”だと説明した。

 昨年末、世界五十の動物愛護団体が連名で動物園の閉鎖を求める書簡を広東省の知事らに送付し、さらに一〇〇万人の署名を集めた嘆願書も添えられたが、飼育環境の改善はなされていないようだ。ピザについてはヨークシャー野生動物公園(英)が引き取りを申し出たが、動物園側は“国外組織の介入は不要”を理由に申し出を拒否している。国外組織の介入は不要――、と言い切るあたりは、いかにも中国的だ。

 フランスでも、こちらもにわかに信じがたいが、先月六日深夜、パリ郊外のトワリー動物園に“密猟者”が忍び込み、飼育していた四歳のミナミシロサイ一頭を殺して角を奪うという事件が起きていた。シロサイの頭部には三発の銃弾が撃ち込まれ、角はチェーンソーで切断されていたとのことだ。

 ミナミシロサイは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種リストで“準絶滅危惧種”に指定されており、盗まれた角は闇取引でおよそ三〜四万ユーロ(三六〇〜四八〇万円)相当の値がつけられているらしい。犯人たちの狙いは明らかだが、住み込みの職員五人は、犯行はおろか犯人一味が正面の扉をこじ開けて侵入していたことにも気づかなかったという。

 再び日本に目を向ければ、二月二一日、千葉県富津市は、ニホンザルを飼育している高宕山(たかごやま)自然動物園で一六四頭全頭のDNA鑑定を行なったところ、五十七頭が“特定外来生物”のアカゲザルとの交雑種だったことがわかり、その五十七頭を“外来生物法”に基づき殺処分したと発表した(特別外来生物は生態系や人間の生活、健康に影響を及ぼすとして防除の対象になっている)。

 また、新たに生まれる子猿についても今後はDNA鑑定を行なうそうだ。

 〈市によると、高宕山周辺や同園のニホンザルは、房総半島に固有の希少種。同園は指定地域外だが、山の一帯エリアが天然記念物になっている〉(千葉日報オンライン2月21日付より)

アカゲザルはもともと西〜東アジアが原産なのだが、県南部の観光施設で飼育されていたものが施設の閉鎖に伴い逃げ出し、高宕山周辺にも住み着いたとされている。一方、高宕山自然動物園のニホンザルも、檻の隙間や老朽化したフェンスの損傷箇所などから逃げ出し、アカゲザルと交配したため、交雑種が産まれたものと見られている。千葉県は二〇〇五年からアカゲザルの全頭駆除に乗り出していたが、思うような成果を上げることができなかったようだ。

 〈外来生物対策室の担当者は「特定外来生物は、絶対に外へ逃げられないような施設での管理が難しいならば、飼育しているだけで法律違反になってしまう。(今回の殺処分は)やむを得ない」としている〉(朝日新聞2月21日付)

 高宕山自然動物園には“ニホンザルの飼育許可”しか降りていなかったことからも、五十七頭の交雑種の殺処分は避けられなかったとしている。動物園では、駆除した五十七頭の慰霊祭を開いて弔ったとのことだ。

 動物たちの事件をいくつか紹介したが、私が目にした記事でいちばんつらかったのが、ニュージーランドの“検疫探知犬”見習いの子犬が射殺された事件だ。冒頭では生後十ヵ月の赤ちゃんがゴールデンレトリバーに噛み殺された事件を紹介したが、ニュージーランドでは、生後十ヵ月の子犬が空港滑走路に逃げ込んだというそれだけの理由で射殺されたのである。

 先月一七日、オークランド国際空港で、検疫探知犬になるために訓練を受けていた“グリズ”が、リーシュを離れて逃げ出した。時刻が午前四時半という早朝で、周囲もまだ暗かったため、担当官らはなかなかグリズを見つけることができなかったという。また、グリズが逃げ出した理由も不明だ。航空保安局のマイク・リチャーズ報道官は、グリズの気を引く何かがあったようだと記者団の質問に応えている。

 捜索を始めて二時間が経過したころ、グリズはゲートを抜け、駐機場へ入り込んでいたことがわかった。このため、離陸を予定していた十六便が遅延を余儀なくされた。リチャーズ報道官が言う。

 「グリズは誰も近づけようとしませんでした。我々は食べものやオモチャ、他の犬を使ったりとグリズの気を引くためにベストを尽くしましたが選択肢が尽きてしまった。最善を尽くしたが他に方法がなかった」(BBCニュースより)

 そして、生後十ヵ月の検疫犬見習いグリズは、警察官の手によって射殺された。

 現在、ニュージーランドでは警察にたいへんな批判が寄せられているという。批判の大半が、見習い犬を殺す必要があったのか、なぜ麻酔銃を使わなかったのか――、の二つに分けられるらしい。海外からも批判されているそうだ。

 「空港に麻酔銃は常備されてなく、また警察官も麻酔銃は所持していません。ですが今後、この件をきっかけに麻酔銃の利用を航空保安局も考慮するでしょう」(空港関係者のコメント・BBCニュースより)

 だが、麻酔銃の使用が必ずしも解決に結びつくとは限らない、とニュージーランド獣医協会のカラム・アーベイ獣医師は『ニュージーランド・ヘラルド』の取材に応えている。

 「警察機関が麻酔銃の許可を得ても、その使用法に関しては多くの注意点が必要になります。動物との距離や体重、年齢、どれほどのアドレナリンが動物の体内にあるかなど、ターゲットとする動物の詳細を十分把握しなければなりません。中途半端な麻酔は動物にとってストレスや恐怖となり、対応が非常に困難になるだけでなく危険性も出てくるのです」

 悩ましいところである。

 先月、日本では、映画化もされた元警察犬の“きな子”が十四歳で死んだ。六年連続で警察犬試験に落ち続けたドジぶりが人気だったが、警察犬になってからは二〇一〇年の競技大会でトップの成績を残すなど活躍もした。きな子には七回の受験機会が与えられたが、グリズは見習いのままで十ヵ月の短い生涯を閉じた。

 グリズの射殺は“選択肢が尽き、他に方法がなかった”からと航空保安局の報道官は言った。だが、旅客機の離陸予定をこれ以上遅らせてはならないとの理由から射殺以外の方法を見出せなかった航空保安局と警察に、私は深い悲しみを覚える。

 人間は、これまでさんざん自然を破壊しておきながら、生態系や人間の生活に影響を及ぼすという理由で、交雑種に生まれただけのニホンザルを殺処分してしまう。そして、生後十ヵ月の子犬も射殺してしまうのである。そんなとき、犬や猫や動物園の動物たちが、私たちにどれほどの喜びや癒しを与えてくれているかは置き去りにされるらしい。

 どうやら、人間というのは実に身勝手で、神さまよりも偉い存在のようだ。

 動物がらみで何か心が浮き立つような報道がなかったかと思って探してみたら、上野動物園のパンダ“リーリー”と“シンシン”に強い発情の兆候が見られ、四年ぶりの交尾に及んだ――、という記事があった。交尾行動は五十二秒だったそうだ。

 めでたいと言えばめでたいのだろうが、心はさほど晴れそうにない。何故だろう。春なのにね。

 参考記事:朝日新聞2月21日付、千葉日報オンライン2月21日付、産経新聞2月27日付、時事ドットコム2月27日付、AFP通信2016年10月29日付・3月2日・8日付、読売新聞3月12日付、日経新聞3月20日付、CNN.com3月18日付、BBC.co.UK3月21日、週刊新潮3月9日号・23日号、週刊文春3月23日号他

 (ノンフィクションライター 降旗 学)




posted by しっぽ@にゅうす at 06:53 | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月10日

家畜の「飼育環境」重視=欧米で関心、東京五輪の食材基準に

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家畜の快適な飼育環境に配慮する「アニマル・ウエルフェア(動物福祉)」の考え方が、欧米を中心に広がってきた。2020年の東京五輪・パラリンピックを開催する日本でも、会場などで提供する食材の調達基準に盛り込まれ、農林水産省は生産者への周知を強化する方針だ。

 欧州連合(EU)は肉や卵、乳製品の生産現場に対し、動物福祉の規制を年々強化している。12年には採卵用の鶏に関し、身動きが困難な狭い鶏舎の使用を禁止。豚や牛などにも飼育面積や環境の基準を定めた。

 オランダで養鶏などを営むベンコマチックグループは、鶏を自然に近い状態で放し飼いにし、温度や湿度などを効率的に管理する独自の設備を開発。ペーター・バンガリング代表は「鶏の性質を尊重した環境でストレスがかからない。病気になりづらく健康に育つ」と効果を強調する。消費者の意識の変化を背景に、付加価値が高い卵や鶏肉として販売できるという。

 米国でも、外食や小売り大手が販売戦略として動物福祉を重視し、この考えに基づく畜産物だけに調達を絞る動きが広がる。米マクドナルドは米国とカナダの全店で、狭い鶏舎で生産された鶏卵の使用を順次取りやめる方針だ。

 日本には、欧州のような厳しい規制はないが、東京五輪・パラリンピック会場などへの畜産物提供では、動物福祉への対応を含む生産管理の日本版認証「JGAP」などの取得が必要となった。生産者は自己点検ではなく、農水省が策定した「家畜飼養管理指針」を実践できているかどうか審査を受けなければならず、農水省も生産者への支援を急ぐ構えだ。

 日本での動物福祉の普及について、農林中金総合研究所の平沢明彦主席研究員は、設備投資のコストや動物の飼育環境に対する欧米との考え方の違いに留意すべきだと指摘。一方、欧米への輸出を目指す生産者に関しては、「今後は現地基準にある程度合わせることも必要になる」と話している。 


posted by しっぽ@にゅうす at 08:01 | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【シリーズ】改正!種の保存法(2)問い直される動物園・水族館をめぐる新制度

The Huffington Post Japan


日本に生息する、また日本がかかわっている希少な野生生物を守る法律「種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)」。2017年2月、環境省によるその法改正案が閣議決定されました。「種の保存法」はどう変わるのか。日本の自然保護の課題がどう改善され、また何が課題として残されているのかを検証するこのシリーズ。第2回目は、動物園や水族館の役割をめぐる新たな制度に注目します。

野生動物の飼育繁殖と再導入

今国会(第193回通常国会)の衆参両院で審議される、「種(しゅ)の保存法」の改正案。

日本に生息している希少な野生生物、また日本が消費などを通じてかかわっている海外の野生生物と生態系を保全することを目的とした同法の改善は、今もまだ多くの課題を抱えています。

2017年の法改正についてお伝えするこのシリーズでは、今回、改正のポイントの2つ目として、動物園や水族館の果たす役割と、そのあり方についての課題と改善について紹介します。

国内外を問わず、絶滅の恐れのある野生動物を保護する手段の一つに「再導入」という方法があります。

数が減少した野生動物の一部の個体を捕獲し、飼育下で繁殖させ、それを野生に返す、というもので、最もイメージしやすい保護活動といえるかもしれません。

しかし、これは決して簡単なことではありません。

人工的な飼育には、専門的な知見や十分な設備、そして最終的に野生に戻すまでの綿密な保護計画が必要とされ、それが伴わない場合は、飼育個体を死なせてしまう事態も生じます。

また、保護目的であっても捕獲を繰り返せば、野生の個体数を圧迫することになり、絶滅の危機に拍車をかけることにもなりかねませんし、もともと生息していなかった場所に放てば、遺伝的なかく乱も引き起こします。

特に調査や研究が不十分で、生態などがよく分かっていない野生動物の場合は、その危険性が高くなります。

動物園、水族館の社会的役割

こうした飼育繁殖の取り組みを行なう知見と設備を持つ場所の一つに、動物園や水族館があります。

動物園や水族館に求められる社会的な貢献としては、まず、生きものに対する関心や知識を育てる場としての役割が挙げられますが、時間をかけた観察が必要とされる、動物の繁殖行動や冬眠といったライフサイクルなどの研究においても、重要な役割が期待されています。

これらの施設での観察や研究により、知られていなかった動物の新しい生態が、明らかになることも少なくありません。

特に、自然の状態ではなかなか観察や調査が難しい、熱帯林などに生息する野生動物の場合は、このような飼育下で得られた知見が、保護活動の上でも拠り所となります。

実際、日本に限らず、世界には動植物の学術研究で名高い動物園や専門の施設がいくつもあり、野生動物の保護にも貢献している例があります。

しかし、現在の日本の動物園、水族館では、希少種の保護増殖が施設ごとで独自に計画され、実施されている例が多く、その水準も公的に定められたものがありません。

何より、こうした希少種の保護増殖施設は設立や運営についての明確な規定がなく、飼育施設として満たすべき要件なども、法的に定められていません。

つまり、飼育繁殖に関する研究計画を持ち、成果も出している施設と、不適切な飼育環境下で動物を単に見世物として扱っているだけの施設が、公的なルールの下で明確に区別されず、動物園・水族館という言葉でひとくくりにされているのです。

創設された「認定希少種保全動植物園等」制度

そうした中、今回の「種の保存法」の法改正では、「認定希少種保全動植物園等」に関する新制度を制定する案が提案されました。

これは、動物園、水族館や植物園に求められる、「生息域外保全」の促進を目的としたもので、特に環境省が定める基準を満たした動物園、水族館や植物園を認定する、というものです。

誤解の無いようにお伝えしておきますが、これは動物園や水族館の運営、新設そのものを許可、認可する制度ではなく、劣悪な飼育環境の施設を排除、禁止するためのものでもありません。

「種の保存法」は、飼育下にある動物の福祉を直接の目的とはしていないため、こうした措置にはまた別の法整備が必要となります。

したがって、今回の新制度はあくまで、一定水準以上の飼育繁殖プロジェクトを推進している施設を、数ある動物園・水族館の中から公的に認定し、相互の協力をよりやり易くするものです。

それでも、この制度で認定された施設は、公的にもその取り組みが認められたということになるため、他の施設との差や区別は現状よりも明確になることが期待されます。

認定のルールは法改正後、環境省が作成する見込みで、詳細については未定ですが、飼養・譲渡の目的・計画、施設や実施体制、展示の方針といった内容が組み込まれると考えられています。

また、今回の種の保存法の改正案第48条には、飼育している動物を動植物園間で譲渡をより円滑に行なうよう改善することも、新たに記載されました。

各施設単体ではない、こうしたネットワーク化された取り組みが広がること。それが、新制度設立の目的と意義です。

残された課題

しかし、この「認定希少種保全動植物園等」に関する制度についても、課題が無いわけではありません。

何より、認定のルールの詳細はまだ明確になっておらず、環境省が今後定めるところの内容が、具体性に欠けていたり、実効性の乏しい内容となれば、こうした取り組みも、期待される成果を生むことはないでしょう。

またこの改正では併せて、動物の飼育や譲渡などについて記録することも、義務付けられることになりましたが、何をどこまで記録するか、その内容についてもまだ明らかになっていません。

特に、動物園や水族館で飼育されている動植物は、その多くが日本に生息していない種です。

これらを海外から入手する場合は、その経路も明確にする必要があります。 万が一にも、違法に捕獲された動物などが紛れ込むようなことになれば、「生息域外保全」という試みが、逆に絶滅危機種をさらに追い込むおそれも出てきます。

改善の方針は示されたものの、実質的な効果については、いまだ不透明な2017年の「種の保存法改正」。

WWFとトラフィックでは、その詳細が確かな保全の効果につながるよう、これからも働き掛けを行なっていくとともに、飼育繁殖された個体が、いずれ戻されることになる海や森、そもそもの自然環境を、保全する取り組みを続けてゆきます。

*この「【シリーズ】改正!種の保存法」では、次回は3つ目の改正のポイントとして、象牙などを含む「国際希少野生動植物種の流通管理強化」をお伝えいたします。


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